タピ川

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タピ川(タプティ川)
スーラトを流れるタピ川。
水系 タピ川
延長 724 km
流域面積 62,225 km²
水源 マディヤ・プラデーシュ州ムルタイ英語版
河口・合流先 カンバート湾
流域 インドの旗 インドマディヤ・プラデーシュ州マハーラーシュトラ州グジャラート州
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タピ川(タピがわ、ヒンディー語: ताप्ती नदी英語: Tapi River)、もしくはターピ川は、インドの中部から西部を流れる河川。旧称はタプティ川(英語: Tapti River)あるいはタープティー川[1]

概要[編集]

水源地のムルタイ。

インド中西部にあるマディヤ・プラデーシュ州南部、サトプラ山脈の北部にあるベトゥール県英語版東部のムルタイ英語版を水源とし、山岳地帯を西へ流れる。ブルハーンプルで広い盆地になり、マハーラーシュトラ州に入るとプルナ川英語版と合流してブサワル英語版を通過し、ついでジルナ川英語版を合わせる。グジャラート州に入ると本流に建設されたウカイダム英語版・ウカイ水力発電所を抜け、下流の平野部にあるスーラトを経てカンバート湾に至る。全長は724km[1][2]

インド西海岸に注ぐ川の中で、ナルマダー川に次いで大規模な河川である。プルナ川との合流後はサトプラ山脈の南側を流れ、山脈の北側を流れるナルマダー川とともにインド半島の高原部(中央高地)とガンジス川インダス川により形成されたヒンドゥスターン平野を分ける重要な指標となっている[1][3]

流域の地理[編集]

上流から中流域は、年降水量が1,000mmから1,600mmに達する山地である。谷の斜面にはチークの森林が繁り、トラなど野生動物が豊富なことから、ヤウォール野生生物保護区英語版メルガット・トラ保護区英語版などに指定されている地区がある[1][2]

デカン高原溶岩台地を切り込んで流れ、流域には幅約30kmの浅い谷底平野が形成されている。肥沃なレグールが分布することから綿花栽培をはじめ農業が盛んである[1][2]

下流域では灌漑が行われる。河口に近いスーラトはムガル帝国時代には港湾都市として栄えたが、交易の拠点がムンバイに移って以降は物流産業が衰退し[4]、また土砂の堆積が多いことから水上交通はあまり発達していない[3][5]。スーラトが最盛期だった17世紀には、砂州が多く大型船の航行に不向きという地形上の弱点を補うべく、河口に近い場所に新たにスワーリー港が作られスーラトと一体的に運用された。しかしムンバイが交易の拠点として台頭しはじめるとスワーリー港は使用されなくなっていった[6]

名称の由来[編集]

旧河川名の由来は、インド神話における太陽神スーリヤと影の女神チャヤ英語版の娘、「タプティ」とされる[7]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 『世界地名大事典』(2017)。
  2. ^ a b c 『日本大百科全書』(1987)。
  3. ^ a b 『ブリタニカ』小項目4(1991)。
  4. ^ 「スラト」 - コトバンク(2020年11月3日閲覧)。
  5. ^ 『コンサイス 外国地名事典』(1998)。
  6. ^ 嘉藤慎作「17世紀における港市スーラトの形成 : ―スーラト市とスワーリー港―」『南アジア研究』第2017巻第29号、日本南アジア学会、2017年、33-60頁、doi:10.11384/jjasas.2017.33ISSN 0915-5643NAID 130007502484 
  7. ^ Mittal, J.P. (2006). History of ancient India : a new version. New Delhi: Atlantic. p. 412. ISBN 9788126906161. https://books.google.com/books?id=rrh4tY3v2A4C&pg=PA412 2020年11月3日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 『世界地名大事典 1 アジア・オセアニア・極1』 朝倉書店、2017年、961-962頁「ターピ川」項(成瀬敏郎著)。
  • 『日本大百科全書 14』 小学館、1987年、863頁「タプティ川」項(成瀬敏郎著)。
  • 『ブリタニカ国際大百科事典 4 小項目事典』 TBSブリタニカ、1974年初版/1991年第2版改訂、207頁「タプティ川」項。
  • 『コンサイス 外国地名事典 〈第3版〉』 三省堂、1998年、543頁「タプティ〈川〉」項。

関連項目[編集]