タイピング
タイピング(英語: Typing)は、タイプライター、コンピューター用キーボードといった入力装置を打ち、文字を入力すること、またはその技術である[1][2]。打鍵とも呼ばれる[3]。1860年代にタイプライターから始まったが、時の経過とともに様々な打鍵法が普及し[4]。一部は企業や学校によっても教材化された[5]。1920年代以降は本来の用途から派生し、競技も生まれた。
概説
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1929年のアメリカの職業案内書によると、次のような職業の人々が職業的にタイピングを行っていた[6]。
- タイピスト(Typist) - タイピストは、ほとんどあらゆる種類の事務所(office)で雇用される。清書(copyist)、ディクタフォンからの転記、謄写版用ステンシル作成、マルチグラフ操作などを担当する[6]
- 速記者 - 口述を速記で記録し、タイプライターで清書する[6]
- 私設秘書(Private Secretary) - 雇用主の機密事項を扱い判断力・裁量が求められる職業[6]
同資料には、1910~1920年の間に秘書・速記者の人数は約2倍に増加し、1920年には約61万5千人になり、そのうち約5万人が男性で残り約56万人が女性、と書かれていた[6]。
1923年にアルバート・タンゴラという男性が 147 ワード/分(WPM)という世界記録を樹立し、世界大会で7度優勝した。#速度記録
電信は最初独特の入力装置で行われていたが、1920年代〜30年代のTeletype Corporationの装置でQWERTY配列のフルキーボードを採用した機種が普及し、新聞社・鉄道・通信会社などで日常的にテレタイプのタイピングも行われるようになった。
コンピュータでは、1948年のBINACで電気機械式タイプライターのタイピングで文字入力を行い、1950年代後半〜1960年代にはコンピュータの端末のタイピングをして入力することが一般化し、以降、1965年に登場したミニコンピュータ、1970年代なかばに登場したマイクロコンピュータでもタイピング入力は一般的であり、現代のパソコンでは基本的にタイピングが行われている。
ワープロ専用機でも、パソコン上で動かすワープロソフトでもタイピングが行われる。
タイピング学校でも教科書でも初等・中等教育の学校でも、タッチタイピングが教えられる。眼で追わずにタイピングする方法であり、高速入力が可能で、疲れにくい。#タッチタイピング
タッチタイピングを習得すると、大人は仕事がはかどり、疲れにくくなる。生徒は学習内容に集中しやすくなり学業成績も向上しやすくなる。
打鍵法
[編集]タッチタイピング
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タイプライターの時代から現代にかけて、最も有名なものとして「タッチタイピング(Touch typing)」という打鍵法がある。これは、タッチメソッドやブラインドタッチとも呼ばれることがある。この方法には、キーボードのキーを目で追わず、マッスルメモリーと7から10本の指先の感覚でキーを打鍵するという特徴が含まれ、視覚打鍵よりも格段に早い打鍵入力が可能になる利点がある[7][8]。タッチタイピングには指の定位置も決められており、ホームポジションと呼ばれているが[9]、高速入力する打鍵者であっても一部のキーは指の担当が柔軟になっていることも多い。タッチタイピングを習得することの期待としては、タイプミスの減少、測定サイトでのスコアの上昇などがある[10]。
視覚打鍵(ハント・アンド・ペック)
[編集]視覚打鍵はハンド・アンド・ペック(Hunt And Peck)やサイトメソッドとも呼ばれる。タッチタイピングと異なり、視覚でキーを追い、文字を入力する。そのためホームポジションというものが存在しない。主にタイピングが初心者の間で無意識に行われることが多い。タイプライターの黎明期においては、タッチタイピングやホームポジションが普及するよりも先に一般化していた(これはタイピングそのものが新しいものであったためである)。しかし、1888年のタッチタイピングの登場によって非効率であることが露呈したため、それから現代に至るまでタッチタイピングが推奨されるようになった[11]。
- タッチタイピングの例
- ハントアンドペックとタッチタイピングのハイブリッドの例
競技タイピング
[編集]タイピングの速さと正確性を競って賞金獲得を目指すコンテストは世界にいくつか存在している。スピード・正確性を追求してタイピングを行う活動は英語圏ではスピードタイピングとも言われる。タイピングサイト以外に、本格的な大会として主催されたものとしては日本のREALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP(RTC)、アメリカのThe Ultimate Typing Championship(UTC)、インテルステノ(国際情報処理連盟)のオンラインタイピング大会などがある。これらの大会に出場したり、出場を目指す人はタイピストやタイパーと呼ばれることがある。このような高速タイピングでは、提示された文字列から筋肉記憶で機械的に高速出力し、そこから速度やスコアが算出されることが主となるという特徴があり、ゼロから文章を思考・構築する執筆作業とは大きく異なる内容となっている[12]。
効率化
[編集]競技、あるいは専ら高速タイピングを趣味として前述のベンチマークサイト・対戦サイトを頻繁に利用する人達は、タイピングの速度と正確性を高めるためにハードウェア・ソフトウェアを通して様々な効率化を行うことが多い。たとえば、リピート入力の間隔を設定可能な最小の値に設定することで修正速度と入力の反映速度を高めたり、メカニカルキーボードを内部にテープ・潤滑油を施すことでの打鍵音と入力体験を改善する、などがある。
他にも、キー配列として一般的に普及したQWERTY配列ではなくDvorak配列、Colemak配列、Workman配列のように打鍵がより効率的になるよう設計された論理配列を使うなど多岐にわたる[13]。
打ち方や上達方法についても、打つ単語が「Keyboard」という単語なら「Key」と「Board」の2つに分解し、単語を一文字ずつではなくピアノのコード(和音)のようにひと塊で認識したり、正確性を重視した後に速度を重視するようなシャトルラン方式の練習法、2−3単語先を見る先読みの技術、などもある。QWERTY配列であれば高頻度キーの位置の関係上ホームポジションから指が大幅に離れざるを得ないため、運指の最適化をする人もいる。
- 高速打鍵者に使われることがあるメカニカル式キーボード
- 高速打鍵に優れるとされるHHKBキーボード
健康問題
[編集]タイピングは頻繁に指を使用する行為であり、一般的なキーボードは微細に肩を内側に狭めるため、総じて手指・手首・肩・頸部への負担が問題となる場合がある。そのため、タイピングをする際には姿勢を正すなどの意識をするなどの対策をすることの重要性が指摘されている。
加えて、コンピューターであれば液晶画面のブルーライトを浴びながらの長時間の練習によって目の慢性的な疲労を引き起こし、最悪の場合には視力が低下するリスクも内在している。
教育との関係
[編集]タイピングは学校教育や職業教育における基礎的技能の一つとして扱われるようになった。
タイピング能力の高・低が学習効率に影響することもあるので、基礎的で、習得すべき技能だとされている。まずタイピング技能を向上させると、文章作成、調べ学習、プレゼンテーション資料の作成、プログラミング言語習得などにおいて、内容構成や思考に集中しやすくなり、成績が向上しやすくなる。
タイピング技能の習得には、専用ソフトウェアやゲーム形式教材・サイトが用いられる。
また、読み書きに対して先天的に困難を抱える学習障害・ディスクレシアを持つ生徒にとって、文字の綴りや思考の書き出しを助ける有効な手段でもある[14]。
一方で、手書きによる筆記技能や漢字学習の重要性も依然として指摘されており、教育現場では目的に応じてタイピングと手書きを併用する。
練習用のアプリケーションとタイピングサイト
[編集]タイピングを練習するためのアプリケーションソフトやウェブサイトがある。
1970年代なかばにマイクロコンピュータが開発され、1979年にはTRS-80用の教育ソフトのひとつとしてMicrosoft Typing Tutorがリリースされ、1980年にApple II版、1981年にIBM PC版がリリースされた。
その後、タイピング練習用アプリケーションソフトは増え続け、現在では無料でダウンロードできるソフトウェアが多数ある。
1995年ころからインターネットが普及すると、2000年ころにはTyping Tutor Onlineというタイピング練習用のウェブサイトが公開された。2008年にはTypeRacerという、ネット上でタイピングの速さを競う対戦型のサイトが公開となり、2010年にはTypingWebというサイトが公開され、これは教師による管理機能がついており各生徒のタイピング能力が把握できるものだった。
そういったサイトはタイピングサイト・タイピングゲームと言われている。
ベンチマーク用途のサイトも次第に発展した。日本ではYahoo!きっずの検索ランキングの上位を毎年タイピングサイトが独占しており、未だに高い需要で知られているが、日本で使われているタイピングサイトの多くが子供向けのカジュアルな作りとなっているため本格的なタイピングの用途としてはe-Typing、Weather Typing、後述の英語タイピングサイトが使われる。国際的に、特に英語圏や英語打鍵用途においてはMonkeytype、NitroType、TypeRacer、10FastFingersの4つが人気となっており、これらのゲームではランキングや詳細な速度指標などが備わっているため、Eスポーツとしての側面も確立されている。
一方で、韓国とロシアではキーボード配列が母国語入力に特化された2ボル式・ロシア語キー配列といったように独自の配列規格が普及しているため、他の国で一般的なQWERTY配列想定のタイピングサイトとは異なるサイトが作られている。
速度記録
[編集]機械式タイプライター
[編集]機械式タイプライター(manual typewriter)で、ミス1個につき10語減点方式するルールで、1923年10月22日にAlbert Tangoraという人が、1時間平均で、147 ワード/分(WPM) というギネスワールド記録を出していた[15]
Albert Tangoraはタイピングで7回世界チャンピオンになった。標準的なタイプライターを使用し、会話しながらタイプできたという[16]。
Albert Tangora の147 WPM は、競技会ルールでの速度で誤字減点ルールで採点したもので、彼の普段の実際の入力速度は 180 WPM 以上だったという[17]。
語源
[編集]「タイプライターの使用(による打鍵文字入力)」に由来する。タイプ(type)の語は活字や活版といった意味を含む[注釈 1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ↑ 尚、タイピングをするという動作を表す英語の動詞もタイプ(type)である。
出典
[編集]- ↑ “デジタル大辞泉 「タイピング」の意味・読み・例文・類語”. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ “タイピング【typing】”. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ 日本国語大辞典, デジタル大辞泉,精選版. “打鍵(ダケン)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ “Journey Through Typewriter Evolution: From Inception to Modern Designs” (英語). Typewriters.com, a division of Monroe Systems for Business. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ adminTypesy (2015年9月18日). “History of Fast Typing and Old-School Techniques (Guest Post) - Typesy” (英語). 2026年4月26日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “Vocations”. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ 株式会社インセプト. “タッチタイピング(ブラインドタッチ / タッチメソッド)とは - IT用語辞典 e-Words”. e-words.jp. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ 日本国語大辞典,IT用語がわかる辞典, デジタル大辞泉,精選版. “タッチタイピングとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ 日本国語大辞典,IT用語がわかる辞典, デジタル大辞泉,精選版. “ホームポジション(ホームポジション)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ Reilly, Adrienne (2025年10月29日). “Average WPM Typing Speed: What’s Considered Good and How to Get Faster” (英語). Predictive Success. 2026年4月26日閲覧。
- ↑ “The most asked questions about touch typing”. Kaz type. 2026年8月4日閲覧。
- ↑ “REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP”. 2026年8月4日閲覧。
- ↑ “Alternatives to QWERTY”. 2026年8月4日閲覧。
- ↑ Weigelt Marom, H.; Weintraub, N. (2015-12-01). “The effect of a touch-typing program on keyboarding skills of higher education students with and without learning disabilities”. Research in Developmental Disabilities 47: 208–217. doi:10.1016/j.ridd.2015.09.014. ISSN 0891-4222.
- ↑ “Fastest typist on a manual typewriter in an hour test”. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “Seven times the world's champion . typist is seen in action at the Business Show in New York. His name is Albert Tangora and he can write 140 words a minute while carying on a conversation. He uses a standard typewriter.”. 2026年7月28日閲覧。
- ↑ “Miss Speed = Underwood”. 2026年7月28日閲覧。