ソロヴィヨーフ PS-90

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イリューシン Il-96に搭載されたPS-90A

ソロヴィヨーフ PS-90(露:Соловьёв ПС-90)はロシアソロヴィヨーフ(現:アヴィアドヴィガーテリ)がロシア製新世代旅客機用に、高出力、低コスト、低騒音を主眼に置いて開発した航空機用高バイパス比ターボファンエンジンである。形式番号のPSPavel Aleksandrovich Soloviyov(Павел Александрович Соловьёв)から命名されている。1992年に耐空証明を得て運用を開始している。バイパス比4.4。

各形式[編集]

Il-76に装備されたPS-90A-76

基本型のPS-90Aから9種類の派生型が製作されている。

PS-90A[編集]

PS-90の基本型。Il-96Tu-204に搭載された。公称出力は16,000 kgf (157 kN, 35,300 lbf) 。ロールス・ロイス RB211-535シリーズよりも13.3%推力が小さいが、燃料消費は8.2%少ない(どちらもTu-204に搭載時)。本機によってロシア製航空機は初めて欧米並みの燃料消費量を実現した。開発は1979年に始まり、1992年に認証を取得した[1]

PS-90AE[編集]

バイパスダクト内に従来装備してきた温度検出器のTD-90の代わりにTD-90Mを装備して動作温度を30℃向上させたPS-90Aの改良型[2]

PS-90A-76[編集]

Il-76に搭載されていたソロヴィヨーフ D-30KPの換装用に開発され、Il-76MFやIl-76MD-90/90Aに搭載された。Il-76は優秀な輸送機であったが騒音の問題があり、本機への換装によって騒音低減、経済性の改善、航続距離の増加を目指した。公称出力16,000 kgf(157 kN, 35,300 lbf)[3]

PS-90AE-76[編集]

PS-90A-76にPS-90AEと同様の改良を施したもの[4]

PS-90A1[編集]

PS-90Aの出力向上形。公称出力は17,400 kgf (171 kN, 38,400 lbf)。Il-96-400Tに搭載[5]2008年1月に耐空証明完了。

PS-90AE1[編集]

PS-90A1にPS-90AEと同様の改良を施したもの[6]

PS-90A2[編集]

PS-90A2は、プラット・アンド・ホイットニーとの協力で開発されたPS-90Aの改良型[7]。フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカなどの西側諸国の部品を使用して大幅に改良を施した事によって大幅に性能が向上して、 燃費が西側諸国のエンジンに遜色ない物になっており、騒音レベルも最新の規制に適合している。オーバーホール間隔を低温部品で20,000サイクル、高温部品で10,000サイクルにとしたことで[8]、現在生産される機種と比較してPS-90A2のライフサイクル費用は35%削減され同時に信頼性は50から100%向上[9][10]、軽量化とFADECの使用によりPS-90Aより燃料消費量が改善し、整備費用の約40%低減に成功した。これにより、PS-90A2はPS-90Aの半分の労力で運行できる[10]。耐火性向上のため旧型の燃料システムは新型の空気で運用するシステムに更新した[9]。PS-90A2は騒音や排出ガスの環境面においてICAOや他の国際的な基準に適合する。また、PS-90A2はロシア製のエンジンで初めてETOPSの条件下で180分間の片肺飛行を可能にするETOPS-180の認定を受けており[10]、AP-33航空規格にもFARパート33とJAR33で適合する[8]。PS-90A2とPS-90Aは寸法は同じであるため互換性があり交換が容易である。そのため新造の航空機のみならず従来のPS-90A搭載機の換装も見込んでいる。しかし、アメリカの企業であるプラット・アンド・ホイットニーがエンジンの開発に携わっている事によりイランへの経済制裁の脅威にさらされたため、そのような航空機にはPS-90AかPS-90A2の外国由来の部品をロシア製のものとしたPS-90A3(後述)を代わりに搭載することが検討される[11]。推力はPS-90Aと同等の16,000 kgf(157 kN, 35,300 lbf)であるが、同様に17,962 kgf(176 kN, 39,600 lbf)とすることも可能である。

PS-90A-42[編集]

ベルエフ A-42のD-30TKPVの換装用。PS-90A2より開発。公称出力は14,500 kgf(142 kN, 32,000 lbf)[12]

PS-90A3[編集]

Tu-204SM向けに開発されたPS-90A2の派生型。2011年1月に耐空証明完了[13]。PS-90A2の西側諸国の部品をロシア製のものに置き換えて、PS-90A2に存在した輸出問題をクリアしたもの。性能はPS-90A2と同じである。

PS-12[編集]

PS-90Aの出力向上型。このエンジンは新世代のエンジンであるPD-14に発展した。

仕様[編集]

寸法[編集]

  • 種類: 高バイパス・ターボファン
  • 全長: 4.964m
  • 直径: 1.90m
  • 重量: 2950Kg

構成[編集]

  • 圧縮機: ファン、低圧2段、高圧13段
  • 燃焼器: 環状、12個の噴射機
  • タービン: 軸流式

機能[編集]

  • バイパス比: 4.7
  • 推力: 離陸時157KN
  • 圧縮比: 35.5
  • タービン入り口温度: 離陸時580℃
  • 燃料消費: 高度1000をマッハ0.8で飛行時 0.595Kg/Kgf/h
  • 空気流量: 504Kg /s

比較[編集]

エンジンの仕様 PS-90А PS-90А1 PS-90А-76 PS-90А2
離陸推力, kgf 16,000 17,400 14,500 16,000
高度=11km, マッハ=0,8で飛行時の推力 kgf
3,500
3,300 3,500
高度=11km, マッハ=0,8で飛行時の1時間あたりの単位推力毎の燃料消費, kg/kgf hour
0,595
圧縮比
38
バイパス比
4.5
最大空気流量kg/s
5,04
最大タービン入り口温度, K
1,640
全長, mm
4,964
ファンの直径, mm
1,900
乾燥重量,kg
2,950
2,950 4,160 3,000
総合重量,kg
4,160
4,250 4,160 4,230
飛行高度,m
13,100
飛行場の高度,m
3,500まで
始動時と滑走時の地面付近の温度,C
-47から+45

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]