ソフトウェア利用許諾契約

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ソフトウェア利用許諾契約またはソフトウェア使用許諾契約: software license agreement)はソフトウェアの生産者と購入者の間の契約である。そのソフトウェアのコピーの利用について定義し、消尽や使用・保管・再販・バックアップなどの購入者が自動的に有する権利を定義している。そのような契約を定めた文書を使用許諾契約書、英語では end-user license agreements (EULA) と呼ぶ。

契約書はデジタル形式のみの場合が多く、ユーザーがクリックすることで表示され、「同意する」を選ばないとそのソフトウェアは使えない。ユーザーはソフトウェアを購入してからでないと契約内容を確認できないため、このような契約を附従契約と呼ぶ。

ソフトウェア企業は大企業や政府機関などとは特別な契約を結ぶ。サポート契約を含む場合や特別な保証を含む場合がある。

使用許諾契約書 (EULA)[編集]

シュリンクラップ型ソフトウェアに付属するEULA形式の契約書は、紙の形で同梱されていることもあるが、多くの場合は電子的に格納されていて、インストール時に提示される。ユーザーはその契約に同意するか拒否するかを選択する権利があり、そのとき契約内容を読む必要はないことが多い。ソフトウェアのインストールは、ユーザーが「同意する」というボタンをクリックしたときだけ実施される。

EULAは責任を幅広く制限することを主張することが多い。典型的には、ソフトウェアライセンス提供者の免責条項として、そのソフトウェアによってユーザーのコンピュータやデータに損害が生じても補償しないことを明記している。ソフトウェアによっては、ソフトウェアの不適切な利用によって生じた損害についても免責条項を設けている(例えば、税務ソフトウェアを不適切に使って脱税したことで捕まったとしても、補償しない)。そのような間接的損害について争った裁判の例として M.A. Mortenson Co. v. Timberline Software Corp.[1] がある。海外にも販売されるソフトウェアでは、法的問題が生じたときに適用すべき法律についても制限を設ける場合がある。

EULAを使い、著作権法による著作権の制限(アメリカの著作権法の107条から122条など)を出し抜こうとしている場合や、法律によって禁じられている領域にまで著作権保護を適用して制御可能な範囲を広げようとしている場合がある。そのようなEULAは本質的に、著作権法が制御を妨げている問題について契約によって制御を得ようとする努力と見ることができる。

フリーソフトウェアライセンスとの比較[編集]

フリーソフトウェアライセンスは、ユーザーに対してソフトウェアの修正と再配布を行う権利を与えているが、そのどちらも著作権法では禁じられており、プロプライエタリ・ソフトウェアでは一般に認められていない。一般にこのようなライセンスでは何の保証も与えない。コピーレフトの場合はさらに、ソフトウェアを修正して再配布する場合にソースコードの開示を求め、また、再配布にあたって同じライセンスを適用することを求めている。

フリーソフトウェアライセンスの重要な特性として、それが契約ではないという点が挙げられる。ユーザーはそのソフトウェアを単に使う場合(コピーして修正する場合)、ライセンスに合意する必要はない[2][3]

シュリンクラップ契約とクリックラップ契約[編集]

シュリンクラップ契約という用語は、ソフトウェアパッケージ内にソフトウェア利用許諾契約書が同梱されていて、購入するまで顧客がその内容を確認できないもの全般を指す。契約書は箱の中に紙に印刷されて入っていることが多い。インストール時にも画面上に表示することがあり、そのような場合はクリックラップ契約とも呼ぶ。ソフトウェア購入前に契約書を精査できないことから、しばしば法的な衝突が生じている。

シュリンクラップ契約が法的拘束力を持つかどうかは裁判によって判断が異なるが、多くの場合は拘束力があるとしている。特に問題となるのは、Klocek v. GatewayBrower v. Gateway という裁判での判決の差異である。どちらもコンピュータシステムをオンラインで販売する企業のシュリンクラップ契約書が問題となっている。シュリンクラップ契約書の文面は購入時には提供されないが、出荷された製品に印刷文書として含まれている。そこには、契約内容に合意できない場合は規定の期間内に製品を送り返すよう書かれている。Brower の場合、契約書に書かれている30日以内の返品という条項を守ることが可能だったのに守れなかったのが明らかであるとした。Klocek の場合、売買契約は取引時に成立しており、その後に提示された契約条項は Brower の場合と同様だったが、売買が成立したときに顧客がそれに合意していないので、その契約書の内容は無効とされた。

さらに ProCD v. Zeidenberg の例では、ソフトウェアのインストール時に契約内容が表示され "I Agree" ボタンを押さないとインストールできないようになっていたため、その内容が有効と判断された。一方 Specht v. Netscape Communications Corp. の場合、ソフトウェアは契約内容を知らず合意もせずにダウンロードしインストールすることが可能だったため、その契約内容には強制力がないとされた。

クリックラップ契約は、ウェブサイトをベースとする契約の形式でもある。一般にウェブサイトの機能を利用するには、ポップアップ上の "yes" をクリックしないと契約が成立しない。シュリンクラップ契約では、ソフトウェアパッケージの包装を解いてソフトウェア自体を使うことで、購入者との契約が成立するとするのによく似ている。どちらも、エンドユーザーの行為が契約内容への合意を明示的に示すと考えられる。

製造物責任[編集]

小売ソフトウェアの契約の多くは(現地の法律が許す限り)、ソフトウェアの性能問題や損害を生じた際の補償を購入価格までとしている。そのような免責条項が問題となった裁判として Mortenson v. Timberline がよく知られている。

特許[編集]

ソフトウェア利用許諾契約は、そのソフトウェアが利用している特許の使用権を提供する場合もある。

リバースエンジニアリング[編集]

ソフトウェア利用許諾契約では、リバースエンジニアリングを禁じていることが多い。これにより、そのソフトウェアと連携するサードパーティ製ソフトウェアを開発することも困難になる。したがって顧客の選択肢を狭め、ベンダロックインの一助となる。

ユーザーがそのソフトウェアの性能データを公表することを禁じる契約も存在する[4]

関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ M.A. Mortenson Co. v. Timberline Software Corp., et al.
  2. ^ GNU General Public Licence, Version 2”. Free Software Foundation (1991年6月). 2009年11月21日閲覧。 第5項
  3. ^ Terry Hancock (2008年8月29日). “What if copyright didn't apply to binary executables?”. 2009年11月21日閲覧。, subtitle "The limits of copyleft"
  4. ^ 例えば、Microsoft .NET Framework redistributable EULA

外部リンク[編集]