センダスト
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センダスト(Sendust)は、鉄・ケイ素・アルミニウムからなる三元合金(Fe-Si-Al合金)である。基本組成は、Fe-10Si-5Al である。
概説
[編集]1932年に、東北大学金属材料研究所の増本量らが発明した[1][2]。合金の名称は仙台(Sendai)で発明されたこと、および圧粉磁心(Dust Core)用材料として用いられたことが由来である[2]。事業化するために、東北金属工業株式会社(現・トーキン)が設立されている。
飽和磁束密度・透磁率が高く、鉄損が小さく、耐摩耗性に優れている。音響・映像機器用の磁気ヘッドなどに用いられる[3]。
一般的な特性は、
- 透磁率 (μmax) 120,000、保磁力 (A/m) < 0.1、固有抵抗 (μΩ・cm)、飽和磁束密度 (T) 10[4]
特性
[編集]開発当初の組成は、Fe - 9.6%Si - 5.4%Al (wt%)である。この組成領域の近傍で、磁歪定数、磁気異方性定数がともにほぼ0となる。そのため、高い透磁率と低い保磁力が得られる。金属間化合物としての性格が強く(Fe3SiとFe3Alの混晶)、硬く脆いため加工は困難であるが、粉砕して粉末にすることは容易である。
磁気損失は常温以上で温度上昇と共に増加する性質があり、損失の温度特性を改善した組成開発されている[5]。
諸性能を改善するために多くの改良が行われ Si / Al 比を微調整した組成と[5][6]微量の添加物を加えた「スーパーセンダスト」[7]「スーパーセンダストII」[8]などがある。
- 組成例
- Fe - 10%Si - 5%Al
- Fe - 9.5%Si - 5.5%Al
- Fe - 6.0%Si - 4.0%Al - 3.2%Ni : スーパーセンダスト
- Fe - 6.2%Si - 5.4%Al - 1.0%Ni : スーパーセンダストII
脚注
[編集]- ^ 増本量, 山本達治、新合金「センダスト」及びFe-Si-Al系合金の磁氣的並に電氣的性質に就て 日本金屬學會誌 1937年 1巻 3号 p.127-135, doi:10.2320/jinstmet1937.1.3_127
- ^ a b 石本賢一、先達との出会い 金研物語(第二部) センダスト 東北大学 金属材料研究所
- ^ 奥村俊之, 石綿延行, 大坂明弘 ほか、高速高密度記録用積層コア型VTRヘッドの開発(ディジタルVTR特集) テレビジョン学会技術報告 1991年 15巻 57号 p.7-12, doi:10.11485/tvtr.15.57_7
- ^ {{{1}}} (PDF) 特殊鋼倶楽部
- ^ a b Fe-Si-Al系圧粉磁心の損失に及ぼす組成の影響 山陽特殊製鋼 (PDF)
- ^ 渡辺伝次郎、三俣千春、高橋研 ほか、ローレンツ電子顕微鏡法による軟磁性Fe-Si-Al単結晶の磁気的性質の評価 日本結晶学会誌 1989年 31巻 Supplement号 p.OB-5, doi:10.5940/jcrsj.31.Supplement_OB-5
- ^ 「スーパーセンダスト」系薄膜の軟磁気特性に及ぼす SiO2の添加効果 日本大学生産工学部
- ^ 移川欣男、Ni添加センダスト系高透磁率材料に関する研究 東北大学 博士学位論文 T2S59736, 2006年 736号, hdl:/10097/11685
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 山本達治、高透磁率合金センダストの発見とその歩み 日本応用磁気学会誌 1979年 3巻 3号 p.71-74, doi:10.3379/jmsjmag.3.71
- 高橋研、最近の鉄系薄膜磁気ヘッド材料-センダスト合金例として- 応用物理 1987年 56巻 10号 p.1289-1306, doi:10.11470/oubutsu1932.56.1289