セイヨウノコギリソウ

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セイヨウノコギリソウ
クロンキスト体系
Achillea millefolium cv1.jpg
セイヨウノコギリソウの園芸品種
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
: ノコギリソウ属 Achillea
: セイヨウノコギリソウ A. millefolium
学名
Achillea millefolium L. (1753)
和名
セイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)
英名
Yarrow

セイヨウノコギリソウ (Achillea millefolium) はヨーロッパ原産のキク科ノコギリソウ属の多年草の1種。英名はヤロウ (yarrow) [1]

特徴[編集]

ヨーロッパ原産。空地、道端、野原などに自生しているのが見かけられる[1]。花期は7-9月頃で、灰色がかった白色、または薄ピンクの小さな花が固まって咲く。草丈は20cmから70cm程度[1]。草は直立し木質のように硬い[1]は細かい羽状複葉で、ノコギリのように見える。そのためミルフォイル (millfoil)、サウザンド・ウィード(Thousand weed「たくさんのギザギザのある葉を持つ草」)の名前でも呼ばれることがある。株分けで容易に栽培でき、土質も選ばず根が広がるため、庭に生えると増えすぎて困るほどである[2]。ヤローという英名は、アングロ・サクソン名"gearwe"、オランダ語"yerw"の訛りである[2]アメリカニュージーランドオーストラリアに帰化している。繁殖力が強く、本州と北海道の一部で野生化している[3]。その生命力の強さは、堆肥用の生ゴミに一枚の葉を入れるだけで急速にゴミを分解していく[4]。また、根から出る分泌液は、そばに生えている植物の病気を治し害虫から守る力があり、コンパニオンプランツのひとつといわれている[5]。 紅色や深紅色の園芸品種があり、「アカバナセイヨウノコギリソウ」の名で流通している。また、同じ仲間で草丈1メートルに育ち、黄色の花をつけるイエローヤロウ(キバナノコギリソウ)、草丈20センチで黄色の花をつけるウーリーヤロウ(ヒメノコギリソウ)がある[6]

歴史[編集]

先史時代から薬草として知られていた[1]ネアンデルタール人の墓地のあるシャニダール洞窟からセイヨウノコギリソウの花粉が大量に発見されている[1]

「兵士の傷薬」という古い呼び名がある。属名であるアキレア(Achillea)は、古代ギリシャの英雄アキレスに由来し、アキレスがミュシア王テレフォスの傷を治すのに利用したという[1]

薬草学の父と呼ばれるペダニウス・ディオスコリデスも薬効を説いている[1]

イギリスではサクソン人が、5世紀頃から薬草として栽培していた。家で育てたものを乾燥させ、家族のために火傷や切り傷に効く軟膏を作っていた。古くはアイルランドドルイドが、この草の茎を使って天候を占っていた。また、中世では、悪魔を遠ざける強い魔力があると信じられ、結婚式の花束に盛り込まれた。イギリスでは恋占いにも使われ、アメリカに渡った開拓者たちもこれを栽培し、外傷薬として用いた[7]。19世紀には、乾燥させた葉をタバコの代用として用いていた[2][4]。日本には1887年(明治20年)に渡来した[7]

利用[編集]

薬効[編集]

内用にも外用にも使用される[1]

内用には茎の先端の花部を用いるのが一般的である[1]。花、葉は強壮効果、食欲増進、発汗、解熱作用があるとされハーブティーとして飲まれる。

外用には葉の汁を用いるほか、煎剤やワイン剤(ワインで煮出したもの)が用いられる[1]。冷やして傷口の消毒にも用いる。また、傷を治すハーブとして、葉をそのまま傷口にあてがったり、粉末にして軟膏にしたものを用いる。

そのほか生の葉を噛むと歯痛を鎮めるといわれている。リウマチの治療にも使われている[2]

料理[編集]

若葉は刻んでサラダの材料となる[1]イギリスでは湯がいてからバター炒めで食べられていた[1]スウェーデンでは、ビールの醸造にフィールド・ホップと呼ばれて用いられていた[2][6]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m ジェラール・デュブュイーニュ、フランソワ・クプラン『ラルース 美しいハーブの図鑑』ONDORI、2019年、7頁。
  2. ^ a b c d e 基本ハーブの事典 東京堂出版 北野佐久子 2005年P197-199
  3. ^ 暮らしのハーブ150 主婦の友社 2013年P120
  4. ^ a b ハーブ事典 ハーブを知りつくすAtoZ 文化出版局 レスリー・ブレムネス 1999年P14
  5. ^ ハーブティー大事典 ナツメ社 榊田千佳子 渡辺肇子 2011年P100
  6. ^ a b ハーブ図鑑200 主婦の友社 2009年P156
  7. ^ a b 永岡治 著『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』 PHP研究所 1988年 p201

関連項目[編集]