セイヨウトネリコ
セイヨウトネリコ | |||||||||||||||||||||||||||
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葉と未成熟の実
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Fraxinus excelsior L. | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
European ash common ash | |||||||||||||||||||||||||||
分布域
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セイヨウトネリコ(学名:Fraxinus excelsior L.)は、トネリコ属の被子植物の1種である。スカンジナビア半島の北部、イベリア半島の南部を除く、スペインからロシアにかけてのヨーロッパ全般に自生する。またトルコ北部からコーカサス地方あるいはアルボルズ山脈にかけての西アジア北部にも自生している。ノルウェイのトロンヘイム湾地域がこの種の最北の自生地である[1][2] 。本種は広範囲に栽培されており、ニュージーランドやアメリカおよびカナダの入植地(ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、ケベック州、マサチューセッツ州、コネチカット州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、メリーランド州、オンタリオ州、オハイオ州、ケンタッキー州、ブリティッシュコロンビア州)では帰化種となっている[3][4][5]。
形態
[編集]セイヨウトネリコは、落葉樹であり、ドーム状の樹冠を生成する。樹高20-35m、直径2mにも達する。樹皮は、若木のうちは滑らかで青灰色であるが、年を経るにつれて厚くなり、縦方向にひびが入る。新梢は丈夫であり、漆黒の緑色を伴った灰色である。葉は長さ20-35cmであり、羽状複葉である。小葉は、7-13葉、小葉は3-12cmである。幅長さ0.8-3cmである。
葉はしばしば春の終わりごろに展葉し、秋の初めごろに落葉する。紅葉はせず、暗い緑色で落葉する。花は展葉前に咲き、雌花は雄花より長く咲く。両花は、淡い紫色であり、花弁はなく、風媒花である。両花は、同じ樹に就くことがあるが、一般に雌雄異株と同じように雄花のみあるいは雌花のみ咲かせる樹木に分かれる。ある年、雄木だったものが、その翌年には雌木になる。果実は、翼がついた形状(翼果)であり、長さ2.5-4.5cm、幅5-8mmである。それは、冬の間枝にぶら下がっているが、その状態をash key(トネリコの鍵)と呼ばれている[1][6][7]。果実が未成熟でまだ緑色の残るうちに採取され種植えされたら、すぐに発芽するが、茶色に成熟してから種植えされたなら18か月は休眠状態で発芽しない[8]。
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雄花
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果実
生態
[編集]セイヨウトネリコは、幅広い土壌で生育するが、特に石灰質を含む土壌でよく見かける。イギリスでもっとも北に生えるセイヨウトネリコは、Wester RossのRassalの石灰岩(北緯57.4278度)に生えている。
多くのチョウの仲間はセイヨウトネリコを食料としている。イギリスではセイヨウトネリコを食料とする数多くの無脊椎動物が見られる[9]。
ゲノム
[編集]セイヨウトネリコのゲノムは、イギリスの二つの科学者集団によって読み取られた。Richard Bugge率いるクイーン・メアリーは、ウスターシャー州 (Worcestershire)にあるアーストラスト(Earth Trust)[10]が管理している樹木を自家受粉して得た標本からゲノム配列を解読した。Allan Downie率いるJohn Innes CentreとThe Gnome Analysis Centerは、デンマークにある「Tree35」から解読した。Tree35は、Erik kjaerにより発見され、トネリコの枯れ込み病のために8年間調査された [11]。
病気
[編集]ash dieback病(和名未定)は、ヨーロッパのトネリコ属樹木に大きな被害を与えている病気で2006年に報告された比較的新しい病気である。原因はHymenoscyphus pseudoalbidus(シノニム:Chalara fraxinea)という菌の感染によって引き起こされる。その病気に対するトネリコの抵抗性を調査したところ、ヨーロッパトネリコで抵抗性が見られた[12][13][14][15]。
本種の移入地であるアメリカではアジアから侵入したとみられるアオナガタマムシ(Agrilus planipennis)というタマムシの一種による本種を含む欧米産トネリコ類の枯死が問題になっている。
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枯れ上がった枝
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ash dieback病により枯死した若木
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タマムシにより枯死した個体。アメリカ。
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アオナガタマムシ(A. planipennis)
利用
[編集]セイヨウトネリコは回復力があり、成長が早いので、小規模な林業者にとって重要な資源である。田舎では用途の広い材木であり、多岐にわたって利用されてきた。第二次世界大戦まで、セイヨウトネリコは10年のサイクルで伐採され、燃料源、建物の柱、木工品として利用された[16]。材木の色はクリーム色のような白色からライトブラウンまであり、心材はオリーブのような暗茶色である。セイヨウトネリコの木材は固く丈夫であり、耐久力が大いにある。木目は粗く、密度は1立方メートルあたり710kgである[17]。しかし、オークより腐敗しやすいため、建物の土台に打つこむ杭としては安定性に欠ける。セイヨウトネリコの木材は曲げやすく、衝撃に強いため、弓、ハンマーの柄などの持ち手、テニスラケットに使われた。初期の飛行機のフレームにも使われた。
セイヨウトネリコは、生木でもよく燃えるので、薪として利用される[18]。また、生垣としても利用され、イギリスにある地方では頭の高さにまで切られた多数の枝をもつトネリコが見られる。ノーサンバーランドでは、セイヨウトネリコから作られたカニ、ロブスターの罠かご(creeever)が使われている。セイヨウトネリコは弾力性があるため杖として使われている。丸棒の端を蒸気で蒸して万力によって持ち手を形成する。明るい色のものはモダンな家具の材料として人気が有る。
神話
[編集]アイスランドのスノッリ・ストゥルルソンは、その著書「スノッリのエッダ」にて、北欧州神話に登場する世界の軸であり支柱である巨大なトネリコであるユッグドラシルについての有名な記述を残している[19]。
栽培品種
[編集]- Fraxinus excelsior 'Aurea'
- Fraxinus excelsior 'Aurea Pendula' (枝垂れる特徴がある)
- Fraxinus excelsior 'Autumn Blaze'
- Fraxinus excelsior 'Autumn Purple'
- Fraxinus excelsior 'Crispa'
- Fraxinus excelsior 'Diversifolia'
- Fraxinus excelsior 'Erosa'
- Fraxinus excelsior 'Jaspidea'
- Fraxinus excelsior 'Monophylla'
- Fraxinus excelsior 'Nana'
- Fraxinus excelsior 'Pendula' (枝垂れる特徴がある)
- Fraxinus excelsior 'Skyline'.
画像
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お互いに融合した2樹のセイヨウトネリコ
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ベルギーにある樹高46mのセイヨウトネリコ
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ベルギーのセイヨウトネリコ
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葉と新梢。黒色の芽が見られる
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芽
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樹皮
脚注
[編集]- ^ a b Rushforth, K. (1999). Trees of Britain and Europe. Collins ISBN 0-00-220013-9.
- ^ Den virtuella floran: Fraxinus excelsior distribution
- ^ Kew World Checklist of Selected Plant Families, Fraxinus excelsior
- ^ "Fraxinus excelsior". County-level distribution map from the North American Plant Atlas (NAPA). Biota of North America Program (BONAP). 2014. 2019年6月6日閲覧。
- ^ Altervista Flora of the United States and Canada, Fraxinus excelsior
- ^ Mitchell, A. F. (1974). A Field Guide to the Trees of Britain and Northern Europe. Collins ISBN 0-00-212035-6
- ^ Mitchell, A. F. (1982). The Trees of Britain and Northern Europe. Collins ISBN 0-00-219037-0
- ^ Forestry Commission/ Edlin, H. L. Broadleaves, HMSO, 1985, p36
- ^ “Invertebrates associated with Ash” (pdf). 2013年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月28日閲覧。
- ^ The British Ash Tree Genome Project - The School of Biological & Chemical Sciences
- ^ Ash genome reveals fungus resistance
- ^ L.G. Stener (2012年). “Clonal differences in susceptibility to the dieback of Fraxinus excelsior in southern Sweden”. Scandinavian Journal of Forest Research. 26 September 2012閲覧。
- ^ E.D. Kjær et al. (2012年). “Adaptive potential of ash (Fraxinus excelsior) populations against the novel emerging pathogen Hymenoscyphus pseudoalbidus”. Evolutionary Applications. 9 November 2012閲覧。
- ^ L.V. McKinney et al. (2011年). “Presence of natural genetic resistance in Fraxinus excelsior (Oleraceae) to Chalara fraxinea (Ascomycota): an emerging infectious disease”. Heredity. 9 November 2012閲覧。
- ^ Pliūra, A.; Lygis, V.; Suchockas, V.; Bartkevičius, E. (2011). “Performance of twenty four European Fraxinus excelsior populations in three Lithuanian progeny trials with a special emphasis on resistance to Chlara fraxinea”. Baltic Forestry 17 (1): 17–34 .
- ^ Mabey, R. (1996). Flora Britannica. Sinclair-Stevenson Ltd ISBN 1-85619-377-2.
- ^ Ash. Niche Timbers. Accessed 19-08-2009.
- ^ “The burning properties of wood” (pdf). scout. 2015年2月28日閲覧。
- ^ Jacques Brosse 著、藤井史郎 訳「第1章 地球の中心に」『世界樹木神話』藤田尊潮、八坂書房、2008年10月、16頁。ISBN 978-4896949193。