スーパーリアリズム

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John Baeder画「John's Diner with John's Chevelle」 2007年、キャンバスに油彩、30×48インチ

スーパーリアリズムSuper-Realism)は、写真を用いて対象を克明に描写する美術の潮流である。ハイパーリアリズムフォトリアリズムニューリアリズムシャープ・フォーカスなどともいう[1]。1960年代後半から70年代はじめにかけて主としてアメリカ合衆国で起こった。主要な作家にロバート・ベクトル英語版チャック・クロース英語版リチャード・エステス英語版マルコム・モーリー英語版などがいる[2]。彼らは互いに独立して制作をはじめ、画家としての出発点もそれぞれ異なるが、市民生活や都会風景、一般人の肖像画など、ごくありきたりな主題を写真を用いた画一的な方法(多くは写真をプロジェクターでキャンバスに投射し、エアブラシなどを用いながら転写する手法が用いられる[3])で克明に写し取ることが共通している。この手法の結果として、彼らの絵画は写真の平面性を再現し、感情を廃したものとなる[2][3]。他方で、描画の身体動作や体温のような感覚が殆ど均等に残存する。

彼らが表現するのは、写真というメディアがイメージとして作り出した新しい現実の様相であり[4]、あるいは写真が持つ独特の効果そのものである[2]。1970年代から80年代にかけて多くの批評家から誤解を受けたが、鑑賞者に錯視を起させることを主眼とするいわゆるトリックアートの作品と関連付けるのは誤りである[5][6]。スーパーリアリズムはポップ・アートの流れを汲み、また抽象絵画に対する批判として生まれたが[5]、没個性的な表現を追及するという点では前者だけでなく後者とも共通している[3]。またいくつかの点で共通点があるとはいえ、彼らはエドワード・ホッパーなど、アメリカの伝統的な写実主義者とも距離を置こうとした[7]。しかしこの作風が知られるようになった当時は写真の使用などに対して評論家らから強い批判を受け[8]1972年ドクメンタ5に多くのスーパーリアリズムの作品が出品された際には逆行的な作風として嘲笑の的ともなった[2]

絵画のほか、人体を型取りしてポリビニールで彫刻を作るドゥエイ・ハンソン英語版ジョン・デ・アンドレア英語版らの作品もスーパーリアリズムの範疇に入る[2][4]。日本ではガラスや生卵といった事物を克明に描写する上田薫などが知られている[3]

出典[編集]

  1. ^ Meisel, Louis K. Photorealism. Harry N. Abrams, Inc., Publishers, New York. 1980. p. 12.
  2. ^ a b c d e ロバート・アトキンス 「フォト・リアリズム」 『現代美術のキーワード』 杉山悦子ほか訳、美術出版社、1993年、118-119頁
  3. ^ a b c d 成相肇. “スーパーリアリズム”. アートワード 現代美術用語辞典ver2.0. 大日本印刷株式会社. 2013年6月4日閲覧。
  4. ^ a b 高見堅志郎 「スーパーリアリズム」 Yahoo! 百科事典(『日本大百科全書』) 2013年6月4日閲覧。
  5. ^ a b Lindey, Christine Superrealist Painting and Sculpture, William Morrow and Company, New York, 1980, p. 23.
  6. ^ Fleming, John and Honour, Hugh The Visual Arts: A History, 3rd ed. Harry N. Abrams, 1991 p. 709.
  7. ^ Lindey, Christine Superrealist Painting and Sculpture, William Morrow and Company, New York, 1980, p. 12.
  8. ^ Chase, Linda. Photorealism at the Millennium: The Not-So-Innocent Eye: Photorealism in Context Harry N. Abrams, New York, 2002, pp 11-12.