スーパーフリー事件
スーパーフリー事件(スーパーフリーじけん)は、2003年5月18日に発覚した組織的な輪姦事件。
早稲田大学の元公認のサークル「スーパーフリー」のメンバーである大学生らは「ギャルは撃つための公共物だぜ」[1][出典無効]を合言葉に1999年秋から常習的に女子大生への輪姦を行っていたが、そのうちの3件が起訴され、早稲田大学の他にも東京大学、慶應義塾大学、明治大学、法政大学、学習院大学、日本大学といった首都圏の大学の学生ら合わせて14人が準強姦罪で実刑判決を受けたこともあり、社会的に大きな影響を与えた。
この事件は重大な社会的波紋を呼び、2004年の集団強姦罪・集団強姦致死傷罪の創設につながった。
事件の概要
スーパーフリーの代表(当時28歳)はディスコや音楽業界にコネがあり[2][3]、六本木のディスコでイベントを開いていた。代表とメンバーらは、そのようなイベントの二次会で女性を酒に酔わせ、女性を輪姦する犯行を繰り返していた。取調べにより多数の事件が判明したが、起訴されたのは以下の3つの事件であった。
- 2001年12月19日、東京都豊島区高田のスーパーフリー代表者の自宅兼事務所における鍋パーティで当時19歳の女性を泥酔させ3人で輪姦した事件
- 2003年4月27日、東京都港区六本木の居酒屋における二次会で当時18歳の女性を泥酔させ、人通りのない場所の玄関マットに寝かせ、1時間半にわたり13人で輪姦した事件
- 2003年5月18日、東京都港区六本木の居酒屋における二次会で当時20歳の女子大生を泥酔させ、人通りのないエレベータフロアに連れ出し、5人で強姦した事件
同年の5月18日、被害者が警視庁麻布警察署に被害届を提出し、事件捜査のきっかけになった。6月19日、麻布署はスーパーフリーの代表者及び男子大学生メンバー4人を強姦容疑で逮捕。当初、容疑者らは「合意の上」と容疑を否認したが、6月22日にはスーパーフリーが解散し、6月30日東京地検は容疑者2名を強姦容疑で起訴。7月4日には東京地検はさらに2名の容疑者を準強姦罪で起訴する。7月9日には東京地検はさらに1名の容疑者を準強姦罪で起訴。8月21日には東京地検はスーパーフリーの代表者を含む3名の容疑者を準強姦罪で起訴した。
2004年11月2日、代表に対し懲役14年の実刑判決が下る。被告人側は判決を不服として同年11月17日に控訴。2005年6月16日には最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)に上告したが2005年11月1日付で棄却され、主犯を懲役14年の実刑とした1、2審判決が確定する。主犯を除く13人には懲役10年〜2年4ヶ月の実刑判決が確定した。
多数の未逮捕者
スーパーフリーが強姦を始めたのは、少なくとも1999年秋にまでさかのぼることが東京地裁で認定されている[4]。
輪姦を活発に始めるきっかけとなったのは、第56回公判における主犯の証言によると、もともと明治大学のイベントサークルで輪姦が活発に行われていたところ、このサークルとスーパーフリーを掛け持ちしているスタッフ(未逮捕者)から「スーフリでもマワしをやりましょうよ」と提案されたことであったという[5][出典無効]。スーパーフリーのメンバーは10人弱の「鬼畜班」と約40人の「和み班」に分かれ[6]、前者は強姦の実行を担当し、後者は被害者の酔い潰しやブロッキングといった強姦の幇助と被害者の丸め込みを担当していた[7]。中には「鬼畜班」と「和み班」を兼ねているメンバーもいた[8]。被害者を丸め込むにあたり、輪姦終了後に缶コーヒーをおごる、ファミリーレストランに連れて行く、無理やり笑顔を作らせて写真を撮る、などの事後処理行為がおこなわれていた[9]。後で問題になったとき、和姦を主張するためである[9]。
女性を酔い潰すに際しては「スペシャルサワー(スーパーフリー内の隠語では「スーパーヤリヤリサワー」)[10]」と称する高アルコール飲料(アルコール度数96のスピリタスを各種サワーに混ぜたもの)が常用され、スーパーフリー内部ではこの酒が「ノーベル賞ものの発明」と称えられていた[11]。
これを飲んで泥酔した被害者が昏睡状態に陥り、吐瀉物にまみれ、気絶して全く反応しなくなっても輪姦は続行された[12]。スーパーフリーのメンバーたちは、女性を強姦した後「俺たちにはヤクザがついている」と被害者を脅して口封じしていたが、事実、暴力団幹部の息子と繋がりのあるハコ屋(クラブでのイベントの予約利権を握るイベントサークルOB集団)がスーパーフリーのバックにいたことを小野登志郎が確認している[13]。
スーパーフリー主催によるほぼ全てのイベントで、強姦が行われていたと、第17回公判で被告人の一人が証言しており[8][出典無効]、強姦の被害者の総数は400名以上にのぼると報じられた[14]。2002年からは大阪・名古屋・札幌・福岡に支部を設立して全国制覇を狙い、これらの支部のスタッフを交えて輪姦をおこなうこともあった。主犯が逮捕された後に他の被害者たちが名乗り出て約30件の被害届を提出したが[15]、起訴された事件はそのうち3件に過ぎなかった。公判では、輪姦に参加した事実を検察に把握されつつも逮捕起訴を免れ、その代わりに検察側証人として法廷に立ったメンバーも存在した[16][出典無効](司法取引)。
スーパーフリーのスタッフは、サークル代表の主犯と、サークルOBの会社役員(逮捕者)[17][出典無効][18]を頂点に、輪姦への貢献度やチケットの販売枚数に応じて「1軍」「2軍」「3軍(ボーイズ)」の3つの階級に分かれており[19]、階級が高いメンバーはスーパーフリーの公式ウェブサイトに顔写真入りのプロフィールを掲載できた[20]。1軍の支部長クラスには、チケットの売上だけで月70万円を優に超える稼ぎがあった[21]。主犯は1000万円以上の年収があったともいわれる反面、月額30万円以上の債務をも抱えていた[21]。
東京スタッフの1軍と2軍(事件発覚の段階では合計17人[15])は全員が直接・間接に輪姦に加わっていたが[8]、被害者の中には泣き寝入りした者や自殺した者もいたため、17人の全てが逮捕起訴されたわけではなかった。犯行に加わった者の一部しか逮捕されなかったことについて、小野登志郎は「誰が見ても、不条理感が残るだろう」[22]と批判している。
スーパーフリーは男性だけの組織ではなく、「ギャルズ」と呼ばれる合計50~60人程度の女性スタッフにも支えられていた。彼女らは男性スタッフがチケットを売りさばくのを助けると共に、自らの知人女性をイベントに連れてきて男性スタッフに「献上」し、輪姦のブロッキングを幇助し、被害者の宥め役を担当していた[23]。それらの貢献への見返りとして、「ギャルズ」は芸能プロや女性誌への紹介、金銭的報酬といった恩恵を受けていたといわれる[24]。この「ギャルズ」もまた逮捕を免れた。
逮捕者を出した各学部の対応
早稲田大学文学部教授会は、代表者であった当時28歳の学生を7月1日付けで退学処分にしたことを発表した。同様に在学者から逮捕者を出した、早稲田大学の政治経済学部、教育学部の両学部もこれに続き、両教授会は7月8日付けで、在籍する学生の退学処分を発表した。
早稲田大学の学生不祥事調査対策委員会は、2003年7月31日付で合計約1000ページに及ぶ教職員向けの「第一次報告書」を作成している[25]。
事件の余波
この事件を契機に、強姦罪内に集団強姦などの条項が新設された。
2003年には自由民主党衆議院議員の太田誠一が本事件について「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。まだ正常に近いんじゃないか」と発言したことが問題となり、日本国内のみならずBBCやCBSなどにも報道される国際的なスキャンダルとなった。この直後、太田は第43回衆議院議員総選挙で落選している。
さらに、早稲田大学OBでもある自由民主党衆議院議員の福田康夫が首相官邸内における番記者たちとの懇談の席上、太田発言について「太田さんは謝っちゃったんだね……。(略)だけど、女性にもいかにも「してくれ」っていうの、いるじゃない。そこらへん歩けば、挑発的な格好してるのがいっぱいいるでしょ」「ボクだって誘惑されちゃうよ」「そういう格好しているほうが悪いんだ」「男は黒豹なんだから」などと発言してレイプを擁護したと報じられ[26]、物議を醸した。
2012年に、東京都内在住の元スーパーフリー男性スタッフが、グーグルの検索結果でスーパーフリー事件に関連するサジェストワード(予測検索語)を表示され、名誉を傷付けられて就職が困難になったと申し立て、グーグルのアメリカ法人を相手取り、検索結果の削除並びに損害賠償約1300万円を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしていたことが明らかとなる[27]。2013年4月15日、東京地裁で小林久起裁判長は原告の主張を一部認め、表示差し止めと30万円の賠償を命じたが、就職が困難になったとの申し立てについては退けた[28]。この判決に対し米グーグル本社は控訴した[29]。
同様の裁判で、2013年5月30日に東京地裁の本多知成裁判長が、また2013年10月30日に東京高裁の井上繁規裁判長が、それぞれ原告の請求を退けており、司法判断が分かれた[30][31]。
主犯のその後
東京拘置所に収監された主犯は暇を持て余して別の被収監者と文通しており、その文面の一部が週刊誌に報道された[32]。
それによると、主犯は
彼女はいません。欲しいと思ったこともありませんね。私はセックスは好きですが女は嫌いなんです。
などと語っていたという[32]。
脚注
- ^ “早大SuperFree強姦事件のまとめ 裁判の情報7”. 2014年1月3日閲覧。
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.53
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.50
- ^ 東京地裁における主犯への判決文
- ^ “早大SuperFree強姦事件のまとめ 裁判の情報10”. 2014年1月3日閲覧。
- ^ 『週刊文春』2003年9月25日号。
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.82
- ^ a b c “早大SuperFree強姦事件のまとめ 裁判の情報4”. 2014年1月3日閲覧。
- ^ a b 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.84
- ^ 解禁!暴露ナイト2013年6月13日放送分。テレビ東京番組サイトのアーカイブ
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.73
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.95
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.54-57
- ^ 「週刊文春」2003年9月25日号。
- ^ a b 「週刊文春」2003年8月14日・21日号。
- ^ “早大SuperFree強姦事件のまとめ 裁判の情報6”. 2014年1月3日閲覧。
- ^ “早大SuperFree強姦事件のまとめ 裁判の情報1”. 2017年5月17日閲覧。
- ^ この二人は前述の強姦事件の現場となった自宅兼事務所で共同生活をしていた。
- ^ 2003年6月29日放映の日本テレビ系『真相報道 バンキシャ!』によると、3軍(ボーイズ)から2軍への昇格には50枚の、2軍から1軍への昇格には100枚のチケット販売実績が求められたという。[信頼性要検証]
- ^ 『サンデー毎日』2003年7月13日号。
- ^ a b 『週刊ポスト』2003年7月11日号。
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.138
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.155-158
- ^ 小野登志郎『ドリーム・キャンパス―スーパーフリーの「帝国」』p.158
- ^ 早稲田大学新聞「早大当局が教職員向けに「スーフリ」総括書を制作「伝統と名声が著しく傷つけられた」被害者への謝罪の言葉は一切無し」
- ^ 『週刊文春』2007年9月27日号。
- ^ “グーグル:事件と無関係…検索結果の削除求め男性が提訴”. 毎日jp (毎日新聞社). (2012年9月20日). オリジナルの2012年9月22日時点によるアーカイブ。
- ^ “グーグルに表示差し止め命令 個人名の検索予測巡り 東京地裁、損害賠償も命じる”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2013年4月15日)
- ^ “名前検索の名誉毀損訴訟、米グーグル本社が控訴”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2013年6月14日). オリジナルの2013年6月25日時点によるアーカイブ。
- ^ “「検索」単語の予測表示、名誉毀損認めず 東京地裁”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2013年5月30日). オリジナルの2013年5月31日時点によるアーカイブ。
- ^ “グーグルに氏名入力で犯罪連想、名誉毀損でない”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2013年10月31日). オリジナルの2013年10月31日時点によるアーカイブ。
- ^ a b 『週刊アサヒ芸能』2013年8月8日号「短期集中連載(下)早稲田大「輪姦サークル」 「スーパーフリー事件」10年目の真実」
関連項目
- 門上千恵子 - 主犯の弁護人をつとめた。
- 関東連合 - 久田将義によれば、“後ろ盾”として関与していた[1]。
- 京都大学アメフト部レイプ事件 - 2005年に発生した、本事件を契機に新設された集団準強姦罪が初めて適用された事件。こちらも犯人全員が大学を放学処分となった。
- 帝京大学ラグビー部集団レイプ事件 - 1997年に発生した事件で、これをもとに小説『さよなら渓谷』が書かれ、映画化もされた[2]。
外部リンク
- 東京地裁における主犯への判決文
- 早大生レイプ事件を追う!
- 早稲田リンクス>Super Free調査報道(アーカイブ)
- スーパーフリー公式サイト(アーカイブ)
- スーパーフリー公式サイト(アーカイブ)
- 早稲田インデックス(アーカイブ)
- SPIKE 早大スーフリ「レイプ」事件 裁判傍聴記 2003/12/03
- SPIKE 早大スーフリ「レイプ」事件 裁判傍聴記(2) 2003/12/25
- SPIKE 早大ス−パーフリー「レイプ」事件 裁判傍聴記(3) 2004/1/21
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
- ^ 『第13回 関東連合はなぜ巨大化していったのか?』 2013年3月8日 久田将義 MSNドニッチ!
- ^ 映画「さよなら渓谷」で描かれた集団レイプ事件の被害女性は、今どうしているのか 月刊『創』、2013年6月10日