スナネコ

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スナネコ
スナネコ
スナネコ Felis margarita
保全状況評価[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: ネコ科 Felidae
: ネコ属 Felis
: スナネコ F. margarita
学名
Felis margarita Loche, 1858[4][5][6][7]
シノニム

Eremaelurus thinobius Ognev, 1927

和名
スナネコ[5]
英名
Sand cat[4][5][6][7]

分布域

スナネコFelis margarita)は、食肉目ネコ科ネコ属に分類される食肉類。

分布[編集]

アラブ首長国連邦アルジェリアエジプトナイル川以東)、オマーンカザフスタンカタールクゥエートサウジアラビアトルクメニスタン[3]モロッコ[6]。モーリタニアにも分布すると考えられているが、標本の採集例や撮影された記録はない[3]イエメンイスラエルパキスタンでは絶滅したと考えられている[3]

分布の空白地帯もあるが、単に記録がないだけなのか実際に分布していないのかは不明[3]。例としてエジプトのナイル川以西・リビア・チュニジアにかけての地域では報告例がない[3]

形態[編集]

体長45 - 57センチメートル[5]。体長50cm。尾長28 - 35センチメートル[5]。尾長20cm。体重1.5 - 3.4キログラム[5]。体重1.8-3.6kg。西から東にいくにつれ大型になる[4][6]。背面は明灰黄色や灰色で、8 - 9本の不明瞭な横縞が入る[5]。毛色は黄色で青白い線が走っているが、この線がほとんど見えない個体もいる。尾の先端は黒く[5]、先端寄り3分の1には黒い輪状斑が入る[4]。尻尾の先は黒っぽい。

頭部は幅広い[4][6][5]。耳介は大きく幅広い三角形で、頭部の両脇に低く離れて位置する[4][6][5]。耳介の内側は長い体毛で被われ[5]、耳孔に砂が侵入するのを防いでいる[4]。耳は大きく尖っている。足裏は長い体毛で被われ、暑い砂漠での活動に適応している[4][5]。染色体数は2n=38[4][6]

幼獣は斑紋が明瞭だが、成長に伴い不明瞭になる[5]

分類[編集]

種小名はJean Auguste Margueritteへの献名[4]

4亜種に分ける説もある。以下の分類・分布・形態はCole & Wilson(2013)に従う[4]

Felis margarita margarita Loche, 1858
アルジェリア、エジプト(ナイル川以東)、ニジェール、マリ共和国北部、モロッコ、西サハラ
尾の輪状斑が2 - 6本。
F. m. airensisF. m. meinertzhageniはシノニムとされる。
Felis margarita harrisoni Hemmer, Grubb and Groves, 1976
イスラエル、イラク、シリア、ヨルダン、アラビア半島
尾の輪状斑が5 - 7本。
Felis margarita scheffeli Hemmer, 1974
パキスタン
Felis margarita thinobia (Ognev, 1927)
イラン北部、ウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタンのカラクム砂漠キジルクム砂漠

2亜種に分ける説もある。以下の分類・分布・形態はIUCN SSC Cat Specialist Group(2017)に従う[7]

Felis margarita margarita Loche, 1858
アフリカ大陸北部
小型亜種。毛色は黄色みを帯び、多くの個体で斑点や縞模様が入る。
Felis margarita thinobia (Ognev, 1927)
アラビア半島、西アジア
大型亜種。毛色は灰色みを帯び、斑紋は少ない。

生態[編集]

岩砂漠や礫砂漠・砂砂漠・砂丘などに生息するが、基底が砂よりも目の細かい粘土質からなる砂漠を好む[4]。主に夜行性で、昼間は穴に隠れる[5]。キジクルム砂漠では昼行性で、暑い時期のみ夜行性になる[4]。日中は岩陰に潜み、夜になると活動を開始する。自分で巣穴を掘ったり、キツネ類やヤマアラシ類などの古巣を利用する[4]。カラクム砂漠では入り口が1つで、長さ3メートルに達する巣穴の報告例がある[4]

主にトゲマウス属アレチネズミ属Gerbillusミユビトビネズミ属Jaculusなどの齧歯類を食べるが、ケープノウサギの幼獣も食べる[4][6]スナヒバリAmmomanes desertiハシナガヒバリAlaemon alaudipesなどの鳥類、サバクオオトカゲVaranus griseusヘリユビカナヘビ属Acanthodactylusスナトカゲ属ScincusStenodactylus属(ヤモリ科)・スナクサリヘビ属Cerastesなどの爬虫類、昆虫なども食べる[6]。胃の内容物調査ではカクラム砂漠では約65 %をオオスナネズミ(33.5 %)を含む齧歯類が、キジルクム砂漠では約88 %をオオスナネズミが占めていたという報告例がある[4]。水分は主に食物から摂取するが、水が飲める環境であれば飲水も行う[4]。 捕食者はカラカルキンイロジャッカルタイリクオオカミなどの大型の食肉類、イヌワシなどの大型の鳥類、ヘビなどが挙げられる[4]。幼獣はアカギツネワシミミズクに襲われる可能性もある[4][6]

繁殖様式は胎生。主に3 - 4月に繁殖するが[5]、地域変異もありサハラ地区では1 - 4月に繁殖する[4]。年に2回繁殖している可能性もある[4]。1回に2 - 8頭(主に3頭)の幼獣を産む[6]。飼育下での734頭の出生記録では約30 %が生後30日、約13 %が1年以内に死亡し、以後は生後10年を過ぎるまで死亡率は10 %以下まで減少している[4]。生後9 - 14か月で性成熟する[4][6]。飼育下での寿命は14年以上に達することもある[4][6]

人間との関係[編集]

放牧などによる生息地の破壊および獲物の減少、内戦、人為的に移入されたイヌ・ネコによる捕食や感染症の伝搬、キツネ類やキンイロジャッカル用の罠による混獲などによる影響が懸念されている[3][4]。イエメンでは1952年以降は記録がなく絶滅したと考えられ、イスラエルでも2000年に行われた調査で生息が確認されなかったため絶滅したと考えられている[3]。トルクメニスタンのカラクム砂漠では約25年にわたり報告例がない[3]。パキスタンでは1990年代後半に行われた地下核実験により、生息地が大きな影響を受けたと考えられている[3]。1977年にネコ科単位でワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]

1986年における飼育数は6施設で44匹と報告されている[5]。2013年における飼育数は44施設で174匹と報告されている[4]

出典[編集]

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  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng>(Accessed 4/10/2017)
  2. ^ a b UNEP (2017). Felis margarita. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 4/10/2017)
  3. ^ a b c d e f g h i j Sliwa, A., Ghadirian, T., Appel, A., Banfield, L., Sher Shah, M. & Wacher, T. 2016. Felis margarita. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T8541A50651884. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T8541A50651884.en. Downloaded on 04 October 2017.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa F. Russell Cole & Don E. Wilson, "Felis margarita (Carnivora: Felidae)," Mammalian Species, No. 924, American Society of Mammalogists, 2014, Pages 63-77.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 成島悦雄 「スナネコ」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、162頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m Alexander Sliwa, "Felis margarita," The Mammals of Africa, Volume V: Carnivores, Pangolins, Equids and Rhinoceroses, J. Kingdon and M. Hoffmann (eds), Bloomsbury Publishing, London, 2013, Pages 199-202.
  7. ^ a b c IUCN SSC Cat Specialist Group, "Felis margarita," Cat News, Spacial Issue 11, 2017, Pages 14-15.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]