ステロイド外用薬

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ステロイド外用薬(ステロイドがいようやく、topical steroid)は、ステロイド系抗炎症薬皮膚外用剤であり、皮膚外用治療で最も一般的に使われる医薬品である。薬効成分として糖質コルチコイドあるいはその誘導体が使用されている。

ステロイド外用剤の薬効[編集]

白血球の遊走を阻止したり、ヒスタミン・キニンなどの炎症性ペプチド抑制や線維芽細胞増殖抑制など、数多くの作用によって皮膚の炎症を抑える効果がある。

ステロイド外用剤の種類[編集]

ランク[編集]

ステロイド外用薬の一例
Strongestに属するジフラール

外用剤にはランクがあり、「Strongest(最も強い)」「Very Strong(かなり強い)」「Strong(やや強い)」「Medium(普通)」「Weak(弱い)」の5群に分けられ、症状の度合い・炎症の発生部位によって使い分けられる。米国のガイドラインでは強い順にⅠ群からⅦ群に分けているなど、海外の臨床データを参考にする場合には、日本とはランクの分類が違うので注意が必要となる。

以下はアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版 (PDF)日本皮膚科学会)ランク表で、( )内は商品名。最新の資料で確認する必要がある。

ストロンゲスト[編集]

ベリーストロング[編集]

ストロング[編集]

  • 0.3% デプロドンプロピオン酸エステル(エクラー)
  • 0.1% プロピオン酸デキサメタゾン(メサデルム)
  • 0.12% 吉草酸デキサメタゾン(ボアラ、ザルックス)
  • 0.1% ハルシノニド(アドコルチン)
  • 0.12% ベタメタゾン吉草酸エステル(ベトネベート、ベトネベートN、リンデロンV、リンデロンVG)
  • 0.025% フルオシノロンアセトニド(フルコート)

ミディアム[編集]

  • 0.3% 吉草酸酢酸プレドニゾロン(リドメックス、スピラゾン)
  • 0.1% トリアムシノロンアセトニド(レダコート)
  • 0.1% アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ)
  • 0.05% クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート)
  • 0.1% ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド)
  • 0.1% デキサメタゾン(グリメサゾン、オイラゾン)

ウィーク[編集]

種類[編集]

軟膏、クリーム、ローション、テープ、ゾルなどの剤型があり、アトピーなどの乾燥性疾患では基本的に軟膏を選択する。

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finger tip unit(第2指の先端から第1関節部まで、口径5 mmのチューブから押し出された量で、約 0.5 g)が、成人の手のひら2枚分、対表面積の2%に相当することから、日本でもこれを指標に用いる。5 gチューブ1本で手のサイズ20枚分となる[1]

回数[編集]

急性期には1日2回(朝、夕)、軽快したら1日1回(入浴後)

ステロイド外用剤の副作用[編集]

ステロイド外用剤適応疾患[編集]

  1. 湿疹皮膚炎
  2. 痒疹虫刺され
  3. 紅斑症
  4. 薬疹中毒疹
    • 固定薬疹・湿疹型薬疹・苔癬型薬疹などの軽症例に使用されるが、大抵はステロイド剤の内服が行われる。治療の第一は原因薬剤の同定と中止である
    • 粘膜を侵す症例では口腔用軟膏の使用も行われる。
  5. 紅皮症
  6. 炎症性角化症
    • マイルドクラス以上で適応となる疾患群である。
    • 乾癬扁平苔癬(扁平紅色苔癬)、光沢苔癬毛孔性紅色粃糠疹ジベル薔薇色粃糠疹が対象であり、保険適応外ではあるが類乾癬・線状苔癬も適応疾患である。
    • 乾癬についてはかつて密封法 (ODT) が行われていたが、現在ではより強いクラスのステロイド外用剤を単純塗擦する方法が行われる。ただし長期連用によって膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症といった重症型乾癬を誘発するという報告があるため、注意が必要である。ただし膿疱性乾癬の外用療法の一つとしてステロイド外用が行われるケースもある。
    • 類乾癬については局面状類乾癬や苔癬状類乾癬、異型類乾癬が悪性リンパ腫(皮膚T細胞リンパ腫)の一つである菌状息肉症の前駆段階であることから、外用を行いつつ皮膚科専門医による厳重な観察が必要となる。
    • 毛孔性紅色粃糠疹(特に成人型)、ジベル薔薇色粃糠疹については自然治癒傾向が強いため、あまり積極的には使われない。したがって、積極的に使用されるのは扁平苔癬が主となる。
  7. 膠原病とその類症
  8. 水疱症膿疱
    • ストロングクラス以上で適応となる疾患群であるが、膿疱症のうち掌蹠膿疱症については全てのクラスで適応となる。
    • 対象となる疾患は天疱瘡類天疱瘡ジューリング疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病)であり、適応外ではあるが妊娠性疱疹稽留性肢端皮膚炎、好酸球性膿疱性毛嚢炎疱疹状膿痂疹にも使用される。
    • 天疱瘡群(尋常性天疱瘡・増殖性天疱瘡・落葉状天疱瘡・紅斑性天疱瘡)は重症の自己免疫疾患であるため治療の主体はステロイド内服であり、軽症例にはミノサイクリンニコチン酸アミドの併用療法が行われる。類天疱瘡においても同様であり、ステロイド外用が行われるのは軽症の紅斑性天疱瘡や妊娠性疱疹などに限定される。
    • ジューリング疱疹状皮膚炎ではDDS(ジアフェニルスルホン)の内服が著効を示すため、現在ではステロイド外用剤の出番は少ない。
    • 疱疹状膿痂疹では重症例で死亡する危険性もあるため、主体はステロイド内服となる。
  9. 紫斑病白斑症
    • ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患群である。
    • 通常紫斑病は全身管理が必要なことが多く、ステロイド外用の適応になることはないが、例外として特発性色素性紫斑が適応となる。
    • 原因不明であるが出血性素因がなく慢性出血性炎症を伴う特発性色素性紫斑(慢性色素性紫斑)にはマヨッキー血管拡張性環状紫斑シャンバーグ病紫斑性色素性苔癬状皮膚炎、黄色苔癬および掻痒性紫斑があるが、保険適用となるのは前三疾患である。ただし全ての疾患に有効性がある。
    • 色素異常症のうち尋常性白斑については汎発型が自己免疫疾患であり、免疫抑制を目的にステロイド外用を行う。類症である炎症性辺縁隆起性白斑やサットン遠心性後天性白斑にも適応外ではあるが有効性がある。
  10. 腫瘍性疾患
    • ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患である。
    • 対象となる疾患は悪性リンパ腫の一つ皮膚T細胞リンパ腫である菌状息肉症セザリー症候群である。
    • 菌状息肉症については初期段階である紅斑期や次段階の扁平浸潤期が適応となる。また前駆症状である類乾癬やムチン沈着性脱毛症にも使用されるが、一時的に進行を遅らせる程度であり、腫瘍期や内臓浸潤期への進行をストップさせる訳ではない。
    • 吉草酸ベタメタゾンローションには適応として進行性壊疽性鼻炎があるが、これは現在ではNK細胞性リンパ腫に分類されており当初から強力な多剤併用化学療法を行うため、ステロイド外用剤の適応にはならない。
  11. 肉芽腫症代謝異常
    • ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患群である。
    • 対象となる疾患は皮膚サルコイドーシス皮膚アミロイドーシス環状肉芽腫である。
    • 皮膚サルコイドーシスについてはあらゆる病変について適応となる。またサルコイドーシスに伴う結節性紅斑にも適応である。
    • 皮膚アミロイドーシスについては掻痒の強いアミロイド苔癬斑状アミロイドーシスが適応となる。ベリーストロング以上の単純塗擦や密封法 (ODT) が特に有効といわれている。
    • 環状肉芽腫にも有効性が高いが、生検を実施しただけで治癒したり無治療でも自然消退するケースも多いことから経過観察のみ行われるケースもある。
  12. 円形脱毛症
    • ストロングクラス以上で適応となる疾患である。
    • 通常型では塩化カルプロニウム液が使用されることが多いが、いわゆる悪性型と呼ばれる汎発型や全頭型ではローションタイプが主に使用される。難治性円形脱毛症になるとステロイド剤の局所注射PUVA療法、局所免疫療法、抗うつ薬が併用される。

出典[編集]

  1. ^ 吉村増隆ステロイド外用薬の使い方:コツと落とし穴 アレルギー Vol.58 (2009) No.5 491-497, doi:10.15036/arerugi.58.491