スクランブル

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スクランブル英語: Scramble)とは、軍用機の緊急発進を意味する軍事用語である。スクランブルに備えた待機任務をアラート任務と称する。主に国際法上の不法行為とされる領空侵犯に対して行われる戦闘機の緊急発進がよく知られているが、偵察機哨戒機救難機等の軍用機も緊急発進を実施する。

航空自衛隊のスクランブル[編集]

航空自衛隊では日本国の防空識別圏レーダーサイト早期警戒機空中警戒管制機により24時間体制で監視している。国籍不明機が領空侵犯する恐れがあれば戦闘機F-15F-2F-4EJ改が、緊急発進して自衛隊法84条に基づき対領空侵犯措置を実施する。日本国周辺では、ロシア軍示威飛行が年間を通じて実施されており、近年は中国人民解放軍電子偵察機等の行動も活発化している。

航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進する基地は、北海道千歳基地、青森県三沢基地、茨城県百里基地、石川県小松基地、福岡県築城基地、宮崎県新田原基地、沖縄県那覇基地の7基地である。

航空自衛隊では、戦闘機の緊急発進と同時にパトリオットミサイル(射程70km)を発射準備し、基地防空用の11式短距離地対空誘導弾(射程15km)、81式短距離地対空誘導弾(射程10km)と91式携帯地対空誘導弾(射程5km)、基地防空用20mmバルカン砲(射程1.5km)で、多重構造の防空網を構築している。

以下、近年の航空自衛隊によるスクランブルの件数と対象国を表す。

年度 緊急発進
件数総計
国別内訳
ロシア 中国 北朝鮮 台湾 その他
平成27年度 873回 288回 571回 0回 2回 12回
平成26年度 943回 473回 464回 0回 1回 5回
平成25年度 810回 359回 415回 9回 1回 26回
平成24年度 567回 248回 306回 0回 1回 12回
平成23年度 425回 247回 156回 0回 5回 17回
平成22年度 386回 264回 96回 0回 7回 19回
平成21年度 299回 197回 38回 8回 25回 31回
平成20年度 237回 193回 31回 0回 7回 6回

対象航空機の接近が事前に察知できるならば、スクランブル用の戦闘機を事前に上空待機させる場合がある。これをCAP(キャップ):COMBAT AIR PATROL 戦闘空中哨戒という。

スクランブル機の武装とは主に短射程空対空ミサイル(射程35km)とバルカン砲(射程1km)である。情勢により中射程空対空ミサイル(射程100km)を追加装備する場合もある。現在までに1件、対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件で威嚇射撃を実施した。国籍不明機は仮想敵国の航空機とは限らず、飛行計画が未提出の民間機や、アメリカ軍機、気球などの浮遊物、ラジコン機、ドローンの場合もある。

民間航空機が緊急事態に陥った場合や、大規模災害発生時も戦闘機が緊急発進して情報収集を行なう。日本航空123便墜落事故では、2機のF-4EJ戦闘機が遭難機の捜索を実施し、中国民航機ハイジャック事件では、F-1支援戦闘機ハイジャック機を福岡空港までエスコートした。

UH-60J救難ヘリコプターU-125A捜索機は、24時間体制で救難待機をしている。また、偵察航空隊は、大規模災害発生時に緊急発進をして、被災地の情報収集を実施する。

また、後方支援の輸送機部隊であっても、緊急輸送待機が24時間体制で維持されている。

海上自衛隊のスクランブル[編集]

海上自衛隊護衛艦では艦載哨戒ヘリが、航空基地では哨戒機が24時間体制でアラート任務に就いている。

海上自衛隊では、哨戒機護衛艦潜水艦音響測定艦電子戦機を駆使して、日本周辺海域の哨戒(パトロール)を実施している。哨戒任務での対象目標は、潜水艦艦艇不審船弾道ミサイル等である。日本国周辺海域で不審な目標を探知したならば、各種捜索機器及び目視により識別し、撮影画像を上級司令部に伝送する。また、増援の哨戒機を緊急発進させ、艦艇も緊急出港して継続的な監視体制に移行する。哨戒任務で収集した情報は統合幕僚監部のホームページで公表される。哨戒任務では通常、武装をしていないが、状況に応じて対艦ミサイル対潜爆弾機関銃ミサイル防御装置等を搭載する。現在までに1件、能登半島沖不審船事件で威嚇射撃を実施した。潜水艦の探知情報を公表した例は、漢級原子力潜水艦領海侵犯事件がある。海上自衛隊の護衛艦の基地は、青森県大湊基地、神奈川県横須賀基地、京都府舞鶴基地、広島県呉基地、長崎県佐世保基地の5基地であり、哨戒機の基地は青森県八戸基地、神奈川県厚木基地、山口県岩国基地、鹿児島県鹿屋基地、沖縄県那覇基地の5基地である。

日本周辺海域で近隣諸国が軍事演習を実施する場合は、日本国政府から海上自衛隊に監視任務が命令される。この場合、航空会社に対しては国土交通省からNOTAMが、船舶に対しては海上保安庁から航行警報が発出される。

また海上保安庁の要請により、遭難船舶や不審船の捜索も行う。不審船の対処は、海上保安庁の管轄であるが、対処不能な場合には、海上自衛隊が海上警備行動を実施する。

災害派遣の要請を受けた場合は、救難飛行艇US-1US-2、救難ヘリUH-60J等の救難飛行隊が緊急発進して、主に洋上と離島地域の救助に発進する。

外国潜水艦の探知情報公表事例[編集]

2016年2月15日対馬海峡接続水域にて潜航中の潜水艦を哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)と護衛艦あさぎりが追尾。相手の国籍は公表せず。

2014年12月27日北海道宗谷海峡にて、浮上中のロシア海軍オスカーII級原子力潜水艦を哨戒機P-3C(八戸航空基地所属)が視認。

2013年5月19日沖縄県南大東島の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)が探知。

2013年5月12日沖縄県久米島近海の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)が探知。

2013年5月2日鹿児島県奄美大島近海の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)が探知。

2010年4月13日沖縄県沖縄本島と宮古島の中間付近を浮上航行中の中国潜水艦キロ級2隻を、哨戒機P-3C那覇航空基地所属)が視認。

2004年11月10日沖縄県宮古島石垣島の中間付近にて漢級原子力潜水艦領海侵犯事件が発生。哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)と護衛艦くらまゆうだちが追尾。

2003年11月12日鹿児島県大隅海峡を浮上航行中の中国潜水艦明級を、哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)が視認。

関連項目[編集]