スギナ

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スギナ Equisetum arvense
スギナ.JPG
スギナ(神奈川県川崎市、2006年4月撮影)
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
上界 : バイコンタ Bikonta
: アーケプラスチダ Archaeplastida
= 植物界Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: トクサ綱 Equisetopsida
: トクサ目 Equisetales
: トクサ科 Equisetaceae
: トクサ属 Equisetum
: スギナ E. arvense
学名
Equisetum arvense L.[1]
シノニム

Equisetum arvense L. f. campestre (Schultz) Klinge[1]

和名
スギナ、ミモチスギナ[1]
英名
Field Horsetail, Common Horsetail
品種

オクエゾスギナ Equisetum arvense L. f. boreale (Bong.) Milde[1]

スギナ(杉菜、学名Equisetum arvense)は、シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物の1種。日本に生育するトクサ類では最も小柄である。春先に出る胞子茎をツクシ(土筆)とよぶ。

名称[編集]

和名スギナの由来は、地上部がスギ(杉)を連想させ、春のツクシが食用されることから、「杉の菜」の意から名づけられたものである[2]

ツクシは、スギナにくっついて出てくることから「付く子」、袴の部分で継いでいるように見えることから「継く子」となった説が有力である。「つくしんぼ、つくしんぼう」(土筆ん坊)、地域によっては「ほうしこ」(伊予弁等)とも呼ばれる。 土筆は、土から出てきた胞子茎が伸びきる前は先端まで「袴」に覆われており、その形状が「筆」に似ていることから、「土筆」という字が当てられたと考えられている[2]

学名Equisetumは、属の学名 Equisetumequusは「馬」、setaは動植物の「剛毛」の意味である。

特徴[編集]

日本では全国の北海道本州四国九州に分布する[3]。市街地周辺から農耕地帯に広く分布し[3]山地原野野原荒れ地土手道ばたなど日当たりの良い酸性のやせた土地を好み、大小の集団をつくって群生する[3]

多年生草本[4]。浅い地下に地下茎を長く伸ばして、節から地下茎を出してよく繁茂する[4]。生育には湿気の多い土壌が適しているが、畑地にも生え、難防除雑草である[5]。地下茎から地上へ出る胞子茎と栄養茎に分かれ、栄養茎をスギナ(3 - 4月)に出現する胞子茎をツクシ(土筆)と呼び、ツクシの方は食用もされる[4]。ツクシは淡褐色の円柱形で中空、ハカマといわれる葉の変形物がつき、てっぺんに胞子穂がついている[4]。ツクシが胞子を放出したあとは、胞子茎は枯れてしまう[4]。栄養茎は緑色で、節に鞘状の変形葉がつき、枝が輪生する[4]

地下茎は地中で長く伸び、畑を耕して切断されても再生することができるので、人間の手による除去は困難である[4]。春、根が深いことから、「地獄草」の別名を持つ[6]

ツクシ[編集]

春に地下茎からツクシという胞子茎(または胞子穂、胞子体)を出し、胞子を放出する。薄茶色の円柱形で中空、「袴(はかま/ハカマ)」と呼ばれる茶色で輪状のの変形物が鞘状になって、茎を取り巻いている[4]。頂には六角形の胞子が密生する[4]茎の部分を覆っている皮のことで、ツクシの場合は土中から生えるときに穂先などを保護する役割を持っており、成長後も残っている[7]。ツクシの丈は10 - 15センチメートル (cm) 程度である。

ツクシの成長後に、それとは全く外見の異なる栄養茎を伸ばす。栄養茎はと葉からなり、光合成を行う。鮮やかな緑色で丈は10 - 40 cm程度。主軸の節ごとに関節のある緑色の棒状の葉を輪生させる。上の節ほどその葉が短いのが、全体を見るとスギ(杉)の樹形に似て見える。

ツクシの穂は、やがて緑色を帯びたほこりの様な胞子を排出すると枯れてしまう[4]顕微鏡下で見ると、胞子は形で、2本の紐(4本に見えるが実際は2本)が1カ所から四方に伸びている。これを弾糸という。この弾糸は湿ると胞子に巻き付き、乾燥すると伸びる。この動きによって胞子の散布に預かる。顕微鏡下で観察しながら、そっと息を吹きかけると、瞬時にその形が変化するのをみることが出来る。

また、「ツクシ」は日本の俳句において春の季語である。

日本における利用[編集]

童謡『つくし』で歌われるように地域に親しまれ[2]、ツクシの姿のかわいらしさが愛でられることが多い。春の風物詩として春の野を描く際には必ずと言って良いほど描かれる。また子供は喜んでツクシを摘む。他に、ツクシやスギナの関節から茎を引っこ抜き、改めてそれを挿しておいて「どこで接ーいだ?」といって切れたところを当てさせる遊びがある。

実用的には、ツクシ(胞子茎)と若いスギナ(栄養茎)は食用にでき、また栄養茎は生薬にもなる[4]。スギナの地上部には、アルカロイドエキセチンニコチンサポニンの1種であるエキセトニンフラボノイドイソクエルシトリングルテオリンエキセトロンのほか、脂肪フィトステリンビタミンC珪酸などを含んでいる[2]。サポニンには去痰作用と鎮咳作用が知られている[2]。またフラボノイドには、利尿作用があると考えられている[2]

食材[編集]

ツクシ(土筆)は春の山菜として親しまれ、胞子を出す前の若い10 cm程度のものが採取される[3]。胞子穂(頭)と袴(鞘状の葉)を取り除いて、茎だけを茹でて水にさらして灰汁を抜き、汁の実、酢の物お浸し煮物などにして調理される[3]。味は、一般においしいと表現されるが、苦味がある[3]。スギナは葉のような枝が伸びる前の若いものを土から掘り出して、一度茹でてから細かく切り、佃煮に調理される[3]

しかし、チアミナーゼ[8]アルカロイド、無機ケイ素などを含むため、多量の摂取は推奨されない。また、心臓腎臓の疾病を有する人、ニコチンに対する過敏症を有する人の摂取は禁忌とされる[8]。さらに、チアミナーゼによるビタミンB1欠乏症を起こす恐れがある[8]とされている。

飲用[編集]

若い栄養茎を乾燥・焙煎したものをとして用いる[9]茶外茶の一つ)。

生薬[編集]

5月から8月ころに、地上の栄養茎(スギナ)の全草を刈り取り、水洗いをして天日乾燥させたものは生薬になり、問荊(もんけい)と称されている[4][2]。薬効は利尿作用、去痰作用があり、肝炎膀胱炎浮腫、膝かぶれによいと言われている[4]。民間療法では、痰が絡んだり、膀胱炎で尿の出が悪くむくみが出る時などに、問荊1日量10 - 15グラムを水400 - 600 ccでとろ火にて半量になるまで煎じ、食間3回に分けて服用する用法が知られている[4][2]。この煎じ汁をうがい薬代わりに使っても、去痰鎮咳の働きがあるといわれる[2]あせもや膝かぶれには、濃縮した煎じ汁か、生葉をすりつぶしたものを冷湿布するとよいとされ、収斂作用が役立つと考えられている[4][2]。若葉やツクシを食用した場合でも、去痰の効果があると言われている[4]

ヨーロッパでは、民間療法で湿疹などで活用されている[2]

生薬としてのスギナの効用は古くから伝承されていたが、近年、花粉症対策としての効能があるとの発表があり、注目が集まっている[10][11]。ただし、この効能は公的に認められているわけではなく、ヒトでの信頼の置ける有効性および安全性を示すデータはない[8]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList、2013年3月23日)
  2. ^ a b c d e f g h i j k 田中孝治 1995, p. 90.
  3. ^ a b c d e f g 高橋秀男監修 2003, p. 20.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 馬場篤 1996, p. 68.
  5. ^ 「新潟県における非選択性茎葉処理除草剤の利用と畑の問題雑草」『雑草研究』Vol.44 (1999) No.1 P84-87 JOI:JST.Journalarchive/weed1962/44.84
  6. ^ 原爆投下後の広島で最初に緑を取り戻した「スギナ」稲垣栄洋、幻冬舎ブラス、2015.04.18
  7. ^ 今井国勝、今井万岐子『よくわかる山菜大図鑑』永岡書店、2007年、7頁。
  8. ^ a b c d スギナ(ツクシ/モンケイ) - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  9. ^ 「雑草スギナ 漢方茶で収益/津市の福祉施設 川原田さん考案」日本農業新聞』2019年11月20日(11面)2019年11月21日閲覧
  10. ^ 2006年2月6日の『朝日新聞』記事内
  11. ^ 土筆のエキスを用いた飴「つくし飴」開発時に「日本大学産官学連携知財センター」が行ったモニター調査

参考文献[編集]

  • 岩槻邦男編『日本の野生植物 シダ』平凡社 、1992年。
  • 光田重幸『しだの図鑑』保育社、1986年。
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、20頁。ISBN 4-05-401881-5
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、90頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、68頁。ISBN 4-416-49618-4

外部リンク[編集]