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スカンジナビア航空

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スカンジナビア航空
Scandinavian Airlines System
IATA
SK
ICAO
SAS
コールサイン
SCANDINAVIAN
設立 1946年
1918年に設立され、後に SAS と合併した Det Danske Luftfartselskab A/S
ハブ空港 コペンハーゲン国際空港
ストックホルム・アーランダ空港
焦点空港 オスロ空港
マイレージサービス EuroBonus
会員ラウンジ Scandinavian Lounge
航空連合 スカイチーム(2024年9月1日〜)[1]
親会社 SAS AB
保有機材数 133機
就航地 112都市
本拠地 スウェーデン王国ストックホルム (SAS グループ & スカンジナビア航空 Sverige)
ノルウェー王国オスロ (SAS Braathens)
デンマーク王国コペンハーゲン (スカンジナビア航空デンマーク & 国際)
代表者 Jørgen Lindegaard (SAS グループ CEO), Gunilla Berg (SAS グループ CFO)
外部リンク https://www.flysas.com/jp-ja/
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スカンジナビア航空(スカンジナビアこうくう、Scandinavian Airlines System, SAS)は、デンマークスウェーデンノルウェースカンディナヴィア3カ国が共同で運航する航空会社で、本社はスウェーデンの首都ストックホルム。航空連合は2024年9月1日からスカイチーム

概要

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出資比率はスウェーデン4、デンマークとノルウェーがそれぞれ3の割合となっている。各国政府が自国出資比率の50%の株を保有し、事実上、三国共同のナショナル・フラッグキャリアとなっている。スウェーデンの首都・ストックホルムのアーランダ国際空港がアメリカに対する拠点、デンマークの首都・コペンハーゲンコペンハーゲン国際空港がアジアに対する拠点となっている。また、ノルウェーを含むスカンジナビア半島は勿論、フィンランドアイスランドなどのその他北欧諸国・バルト三国ヨーロッパアフリカ中東アジア、北アメリカに幅広い旅客・貨物のネットワーク[要曖昧さ回避]を築いている。

近年は北欧バルト三国航空会社を次々傘下に入れ、SAS運航路線からの移管とコードシェア化が進む。2024年9月1日に航空連合「スカイチーム」に正式加盟し、今後は資本提携したエールフランス - KLMとの関係強化が進むと見られる。

航空券の座席予約システム(CRS)は、アマデウスITグループが運営するアマデウスを利用している。 [2] [3]

歴史

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スカンジナビア航空の本部
  • 1918年2月設立 DNL(Det Norske Luftfarsrederi)、ノルウェー
  • 1918年10月設立 DDL(Det Danske Luftfarselskab)、デンマーク
  • 1924年設立 ABA(AB Aerotransport)、スウェーデン

1940年6月に上記3社による合意がされるも、第二次世界大戦の勃発とその後のドイツ軍のノルウェーへの侵攻のために白紙となる。第二次世界大戦が終結した1945年に、スウェーデンでSILA(Svensk Interkontinental Lufttrafik AB)が設立されたこともあり、1946年7月31日の設立[4]時にはスウェーデン政府が7分の3とノルウェー政府7分の2、デンマーク政府7分の2よりも多くなる。その後もスウェーデン政府が主導権を握り、デンマーク政府とノルウェー政府がそれに抵抗するという構図が続いており「スウェーデンのためにデンマークとノルウェーが飛ばす」などと揶揄されることもある。

1952年には、受領したばかりのダグラスDC-6Bの初号機でロサンゼルスからコペンハーゲンまで旅客機としては初めて北極圏を飛行し、1954年には世界初のポーラールートを飛ぶ定期便として同路線の運航を始めた。

1959年に、タイ政府とSASの合弁事業としてタイ国際航空を設立し、運航やサービスの基盤作りに協力するとともに機材の提供も行った。その後も両社の深い関係は、両社がスターアライアンスの設立メンバー(他にはユナイテッド航空ルフトハンザ航空エアカナダヴァリグブラジル航空)となり、コードシェア運航を行うことで現在も続いている。

1980年代のスカンジナビア航空のロゴ

1980年代にはヨーロッパアメリカの航空規制緩和の影響を受けて経営状況が悪化するものの、政府からの様々な支援を受けて復活した。1996年に組織変更を行い、SASグループ傘下となったABAとSILAが合併し、SASスウェーデンになる。さらに、DDLはSASデンマーク、DNLはSASノルウェーとなる。

2019年4月26日から大規模なストライキが発生しており、およそ7割の便が欠航となった。このストライキで約28万人の乗客が影響を受けている[5]

2022年7月5日、パイロット組合との労使交渉決裂により連邦倒産法第11章の適用を申請し、再建を目指し運航継続するが、組合ストによる運航に影響が出る可能性があるとしている[6][7]。破綻による事業再編で長距離機材を数機リース返却したことで運航機材A350はアジア、ニューアーク線限定運用となりニューアーク線以外の北米線はA330運用一部A320シリーズで運航している。

2023年10月、経営再建中のSASは再建スポンサーにエールフランス - KLM、デンマーク政府など4団体によるコンソーシアムを選定。コンソーシアムは11億7,500万ドルを投資、またエールフランス - KLMはSASの株式19.9%を買収する予定である。 これにより今まで加盟していたスターアライアンスを2024年8月31日をもって脱退、9月1日より新たにスカイチームに移籍する[1]。SASはスターアライアンスの創立メンバーであり、同アライアンスの創立メンバーが脱退することは今回が初[8][注 1]

運航機材

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保有機材

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スカンジナビア航空 保有機材(2024年12月現在)[9][10][11]
機材 保有数 発注数 座席数 備考
C PY Y
エアバスA319-100 4 - - - 150 150
エアバスA320-200 8 - - - 168 168
エアバスA320neo 43 12[12] - - 180 180 2026年までに納入予定[12]
30 SASコネクトによる運用
エアバスA321LR 3 - 22 12 123 157
エアバスA330-300 8 - 32 56 174 262
178 266
エアバスA350-900 4 2[12] 40 32 228 300
ボーイング737-700 1 - MEDEVAC 旅客運用からは退役[13]
ロシアのウクライナ侵攻により
2022年からMEDEVAC専用機として運用[14]
ボンバルディア CRJ-900LR 13 1 - - 88 88 シティジェットによる運航
90 90
エンブラエル E195 10 - - - 122 122 SASリンクによる運用
124 15

なお、同社が発注したボーイング製旅客機のカスタマーコード(顧客番号)は83で、航空機の形式名は767-383ER、737-883などとなる。

2023年11月19日をもって、同社のボーイング737-700が退役されることが発表[15]。737-700の最終便はストックホルム発オスロ行きであり、特別に"737便"として運航される。使用するのはLN-RRB (Dag Viking)が使われる。

退役機材

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2007年10月28日、スカンジナビア航空は「機体の品質に度重なる問題があり、使用を継続するとSASのブランドを傷つける可能性がある」として、同型機全27機の運航終了(退役)を発表。
詳しくは、スカンジナビア航空1209便胴体着陸事故スカンジナビア航空2748便胴体着陸事故を参照。

ギャラリー

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就航都市

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スカンジナビア航空 就航都市 2021年9月時点
就航都市
 スウェーデン イェーデポリヘルシンボリカルマルキルナルレオマルメエルンシェルツビクエステルスンドロネビーシェレフテオストックホルムサンズヴァルウメオベクショー
 デンマーク オールボーオーフスコペンハーゲン
 ノルウェー オーレスンアルタバルドーフォスベルゲンボードーハルスターハウゲスンヒルケネスクリスチャンサンクリスチャンスンラクセルブモルデオスロスタヴァンゲルトロムソトロンハイムロングイェールビーン
 オーストリア ウィーン
ベルギーの旗 ベルギー ブリュッセル
クロアチアの旗 クロアチア スプリト
 チェコ プラハ
 エストニア タリン
 フィンランド ヘルシンキタンペレトゥルク
フランスの旗 フランス リヨンニースパリ
ドイツの旗 ドイツ ベルリンデュッセルドルフフランクフルトハンブルクハノーファーミュンヘンニュルンベルクシュトゥットガルト
ギリシャの旗 ギリシャ アテネ
 ハンガリー ブダペスト
アイルランドの旗 アイルランド ダブリン
アイスランドの旗 アイスランド レイキャビク
イタリアの旗 イタリア ボローニャミラノリナーテマルペンサ)、ナポリローマヴェネツィア
 ラトビア リガ
 リトアニア パランガ
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク ルクセンブルク
オランダの旗 オランダ アムステルダム
ポーランドの旗 ポーランド グダニスクポズナンワルシャワ
スペインの旗 スペイン マドリードバルセロナ
ポルトガルの旗 ポルトガル リスボン
スイスの旗 スイス ジュネーヴチューリッヒ
イギリスの旗 イギリス アバディーン バーミンガム ロンドンシティ空港ガトウィック空港ヒースロー空港マンチェスター
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 シカゴニューアークワシントンD.C.ロサンゼルスサンフランシスコマイアミ[16]ボストン[17]シアトル
日本の旗 日本 東京/羽田
中華人民共和国の旗 中国 北京/首都上海/浦東
香港の旗 香港 香港[18]

日本との関係

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運航便

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機材などは変更となる場合があるので、公式サイトを参照。

スカンジナビア航空 日本への運航便(2025年3月現在)
便名 路線 機材
SK983/984 東京/羽田 コペンハーゲン エアバスA350-900

歴史

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  • 第二次世界大戦後まもない時期に日本への乗り入れを開始した航空会社の一つで、1951年4月に南回りのバンコク線を延長する形で羽田空港に就航した。
  • 1957年に、他の航空会社に先駆けてダグラスDC-7Cで北極ルートの北回りヨーロッパ線を開設した。
  • 1978年に、羽田空港発着だったコペンハーゲン線を成田発着に移管した。
  • 1996年からはボーイング 747Fをリースして関西国際空港からヨーテボリへの貨物路線の運航も開始した。
  • 2021年7月、成田発着のコペンハーゲン線を羽田空港発着に再び移管し、43年ぶりに羽田-コペンハーゲン線に再就航した[19]。羽田空港再就航は当初、2020年夏ダイヤの予定だったが、コロナウイルスによるパンデミックで就航が遅れた。

その他

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TBS系にて1990年まで放映されていた「兼高かおる世界の旅」の番組後期の協賛スポンサーであったことも知られている(初期はパンアメリカン航空が協賛していた。)。なおヴァイキングの本場、北欧にふさわしく全機に「○○ Viking」と伝統的にバイキングの英雄の名を愛称として名づけている。

サービス

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長距離路線ではビジネスクラス『SAS Business』、プレミアムエコノミークラス『SAS Plus』、エコノミークラス『SAS Go』の3クラス制。ヨーロッパ域内とスカンジナビア国内線では、全席エコノミークラスで運航される。長距離路線には、最新の機内エンターテイメントシステムを搭載している。2015年より順次、長距離路線のビジネスクラスをフルフラットシートに更新するなど、全クラスで大規模なリニューアルを行なう[20]

また、B737-800で運航されている路線には機内インターネット接続サービス「Wi-Fi」が搭載されており、プレミアムエコノミークラス利用者とマイレージサービス「ユーロボーナス」会員は無料で利用できる。

機内食は、国内線・国際線問わず提供され、国内線の一部はコーヒーと紅茶が無料で提供されるほか、機内販売を利用してスナック類などの購入が可能である。

ユーロボーナス

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ユーロボーナス(EuroBonus)とはスカンジナビア航空のマイレージサービスである。 2024年8月31日までは全日本空輸ルフトハンザドイツ航空ユナイテッド航空などのスターアライアンス加盟各社、同年9月1日以降はデルタ航空エールフランス‐KLM大韓航空などのスカイチーム加盟各社及びスカンジナビア航空グループ各社に加え、カンタス航空エア・ワンなどの提携航空会社の搭乗でマイルを取得出来る。 また、提携ホテルクレジットカードの利用でもマイルを取得する事が出来る。

かつては、ノルウェー政府およびスウェーデン政府の命令により、「ノルウェー国内線全線」及び「スウェーデン国内線で他社と競合になっている路線」でマイルの付与を禁じられていたが、スウェーデンは2009年2月1日[1]、ノルウェーも2013年5月21日[2]に命令を撤回したため、今日ではSASが運航する全線でマイル取得が可能となっている。

なお、両国当局はスカンジナビア航空と提携しているマイレージサービスを運営している他航空会社にも同様の要請をしていたため、従って規制対象となる路線については提携他社のマイレージサービスでもマイルの取得が出来ない事となっていた[3]

事故

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スカンジナビア航空では、以下の通りに事故がたびたび発生している。

1948年7月4日、ロンドンのノースウッド上空でRAFノーソルト基地へ向かっていたスカンジナビア航空のDC-6イギリス空軍アブロ ヨーク C.1空中衝突し両機とも墜落、スカンジナビア航空の乗員乗客32人とイギリス空軍の乗員乗客7人の計39人全員が死亡した。スカンジナビア航空にとって創業以来初の重大事故である。

1960年1月19日、エセンボーア国際空港へ向かっていたスカンジナビア航空871便(シュド・カラベル)が空港へのアプローチ中に墜落し、乗員乗客42人全員が死亡した。

1991年12月27日、ストックホルム・アーランダ空港から離陸直後のスカンジナビア航空751便(マクドネル・ダグラス MD-81)が翼に付着していた氷を両エンジンが吸い込み、ゴットゥローラの平原に不時着。乗員乗客123人のうち100人が負傷したが、幸い死者は出なかった。

2001年10月8日、ミラノリナーテ空港を離陸滑走中のスカンジナビア航空686便(マクドネル・ダグラス MD-87)が濃霧のため滑走路に誤進入したAir Evexのセスナ機(セスナ サイテーション CJ2)と衝突した。セスナ機は大破し、686便は滑走路脇のハンガーに激突。2機の乗員乗客全員とハンガーにいた4人を含む118人が死亡した。

2007年9月9日に1209便が、三日後の9月12日に2748便が着陸ギアの問題で胴体着陸を起こした。どちらの事故もボンバルディア社製デ・ハビランド・カナダ DHC-8-Q400であった。事故後スカンジナビア航空は同型機の運航を全面的に取り止めた。

2013年5月2日、ニューアーク・リバティー国際空港にて、離陸準備をしていたスカンジナビア航空908便(エアバスA330型機)とユナイテッド・エクスプレス航空4226便(エンブラエル145型機)が誘導路で衝突、両機は大きな損傷を負った。

系列航空会社、子会社

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完全子会社は以下の2社。

資本関係のある系列会社は以下のとおり。

脚注

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  1. ^ a b SAS 9月からスカイチームへ、スターアライアンス発足メンバーの離脱は初”. Flyteam. 2024年4月9日閲覧。
  2. ^ 日本発着路線をもつアルテア利用航空会社 (2015年6月現在)”. アマデウス・ジャパン. 2015年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月26日閲覧。
  3. ^ Airlines using Amadeus” (英語). アマデウスITグループ. 2015年9月27日閲覧。
  4. ^ 岩波書店編集部 編『近代日本総合年表 第四版』岩波書店、2001年11月26日、357頁。ISBN 4-00-022512-X 
  5. ^ https://www.cnn.co.jp/business/35136466.html
  6. ^ スカンジナビア航空が破産法申請 ストでリストラ困難に
  7. ^ “SAS søker konkursbeskyttelse i USA” (ノルウェー語 (ブークモール)). NRK. (2022年7月5日). https://www.nrk.no/nyheter/sas-soker-konkursbeskyttelse-i-usa-1.16027540 2022年7月5日閲覧。 
  8. ^ スカンジナビア航空、再建スポンサーにエールフランスKLMら選定 スターアライアンス脱退
  9. ^ SAS Scandinavian Airlines Fleet Details”. Planespotters.net. 2024年10月20日閲覧。
  10. ^ SAS Group Fleet Details”. Planespotters.net. 2024年10月20日閲覧。
  11. ^ Fleet”. SAS. 2024年10月20日閲覧。
  12. ^ a b c Aircraft on order”. SAS. 2024年10月20日閲覧。
  13. ^ スカンジナビア航空、737完全退役でエアバス機に統一へ”. Flyteam. 2024年10月20日閲覧。
  14. ^ SAS MEDEVAC - Boeing 737- 700”. SAS. 2024年10月20日閲覧。
  15. ^ スカンジナビア航空、737完全退役でエアバス機に統一へ
  16. ^ スカンジナビア航空、2016年9月からマイアミ発着2路線に就航
  17. ^ スカンジナビア航空、コペンハーゲン/ボストン線に就航 1日1便
  18. ^ スカンジナビア航空、ストックホルム/香港線に就航 週5便
  19. ^ 正晃(編集部), 佐藤 (2021年7月10日). “スカンジナビア航空、43年ぶり羽田乗り入れ 成田からコペンハーゲン線移管”. TRAICY(トライシー). 2025年3月15日閲覧。
  20. ^ 長距離路線のキャビンがリニューアル - さらに快適な空の旅を!

注釈

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  1. ^ 2001年にワンワールド創立メンバーであるカナディアン航空が脱退しているが、これはスターアライアンス所属のエア・カナダとの合併に伴うものであり、会社存続事例では今回が初である。

参考文献

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「航空情報 2011-4月号と5月号」酣燈社 "スカンジナビア航空物語"

関連項目

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外部リンク

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