スウィフト・017.n

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スウィフト・017.n
(FN09、SF13)
カテゴリー フォーミュラ・ニッポン/スーパーフォーミュラ
コンストラクター スウィフト
デザイナー スウィフト・エンジニアリング
先代 ローラ・B06/51 (FN06)
後継 ダラーラ・SF14
主要諸元
シャシー C-FRPモノコック
サスペンション(前) プッシュロッド ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後) プッシュロッド ダブルウィッシュボーン
全長 4,775mm
全幅 2,000mm
ホイールベース 3,000mm
エンジン ホンダ・HR09E/HR10E又はトヨタ・RV8K 3,400cc V8 DOHC NA MR
トランスミッション リカルド 6速 パドルシフト (EGS)
重量 712kg(ドライバー込み)
燃料 市販無鉛ハイオクガソリン
タイヤ ブリヂストン
主要成績
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スウィフト・017.n (Swift 017.n) は、スウィフト・エンジニアリングが開発したフォーミュラカーフォーミュラ・ニッポンおよびスーパーフォーミュラ2009年から2013年まで使用された。

なお、スーパーフォーミュラの主催者である日本レースプロモーション(JRP)における呼称は「FN09」(2009年 - 2012年)及び「SF13」(2013年)である。

概要[編集]

2006年から使用されてきたローラ・B06/51(FN06)の更新年にあたる2009年に投入されたマシンである。それまでのフォーミュラ・ニッポンやほかのカテゴリーでは見られない、スピーディでロー・ワイドなデザインが特徴(かつてCARTにシャシーを供給していたこともあり、チャンプカーの流れを汲んだ外観となっている)であり、フロントウイングは2段式で、2008年までのF1で流行ったアッパーノーズウイングを発展させたような形状をしている。ロールフープ(ロールバー)にはインダクションポッドは内蔵されておらず、オーバーテイクボタンの使用状況がわかるランプが装着されており、エンジンへの空気導入は、ロールフープ後ろのルーバーから行なわれる。なお、元々はインディカー・シリーズのために設計されたマシンであるため、第3世代型(2011年まで)のインディカーに非常に近い構造になっている。

搭載されるエンジンは、2008年までと変わらないV型8気筒だが、排気量を3,000ccから3,400ccに拡大するなど、基本仕様を2009年以降のSUPER GT・GT500クラスとの共通化を図った。共通化によるコスト削減などから新たなエンジンサプライヤー参入を期待したが、2006年からエンジン供給を行っているホンダトヨタの2社のみのままである[1]

トランスミッションは、リカルド製6速シーケンシャルギアボックスで、2008年から使用されているザイテック製のセミオートマチックギアシフトシステム(EGS:Electrically-assisted Gearshift System)が装着されている。

また、従来フォーミュラ・ニッポンではパワーステアリングの使用が禁止されてきたが、2010年より使用が解禁され、第5戦(スポーツランドSUGO)よりKYB製電動パワーステアリングが装着される。これは増大したダウンフォースによってハンドルが異常とも言える重さになってしまい、ドライバーから「腕勝負というか腕力勝負。ハンドルを切れなくなったら負け」とコメントが出るほどになっており、これを是正するための処置でもある[2]

ドライバーからの評価は決して高いとは言えず、後年レース関係者からは「あまり積極的に乗りたいと思わない」「ドライバーがレースでバトルができない、乗っていて楽しいかと聞くと『そういう感じがしない』」などという感想が聞かれた[3]。開発に関わったエンジニアからも「重量が重くなってしまって、重量コントロールができなかったし、ダウンフォースの出方が唐突」「ダウンフォースの絶対量にこだわったことで、速いけれども、ドライバーにとって決して乗っていて楽しいクルマではなかった」という反省の弁がある[4]

本来であれば2011年シーズンを最後にお役御免となるはずであったが、リーマン・ショック以降の世界的な景気低迷の影響によりフォーミュラ・ニッポンに参戦するチーム(エントラント)の多くが経営的に苦しい状況となっていることを受け、主催者であるJRPでは2013年まで本マシンを継続使用することになった[5]。そして、最終年となる2013年はシリーズ名称が「スーパーフォーミュラ」に変更されるため、同年に限り車両の呼称も「SF13」に変更され、このシーズンをもって御役御免となった。

スペック[編集]

シャーシ[編集]

エンジン[編集]

  • 供給メーカー:ホンダ(HR09E/HR10E)、トヨタ(RV8K)
  • 気筒数・角度:V型8気筒・90°
  • 排気量:3,400cc
  • 弁機構:DOHC ギア駆動 吸気2 排気2
  • 最高回転数:通常 10,300rpm、オーバーテイクボタン 10,700rpm(レギュレーションによる。ECUによる制限)
  • 最大馬力:600馬力以上
  • 重量:120kg
  • スパークプラグ:チームで異なる
  • 燃料:無鉛ハイオクガソリン(サーキットで異なる)
  • 潤滑油:チームで異なる

各サーキットでのベストラップ[編集]

サーキット ラップタイム(ドライバー)
ホンダエンジン トヨタエンジン
鈴鹿サーキット 1'37.774
山本尚貴/2013年第7戦)
1'38.067
J.P・デ・オリベイラ/2013年第7戦)
ツインリンクもてぎ 1'33.239
塚越広大/2011年第7戦)
1'32.700
ロイック・デュバル/2013年第4戦)
富士スピードウェイ 1'23.035
小暮卓史/2013年FSC)
1'22.718
国本雄資/2013年FSC)
スポーツランドSUGO 1'05.843
(ロイック・デュバル/2010年第5戦)
1'05.889
(ロイック・デュバル/2013年第6戦)
オートポリス 1'28.523
(塚越広大/2012年第3戦)
1'29.017
松田次生/2012年第3戦)

脚注[編集]

  1. ^ SUPER GT・GT500クラスに参戦中の日産NISMO)も、2010年よりV8 3,400ccの「VRH34A」を使用するが、市販車用エンジンをベースとしているなどレギュレーションに合致していないため、フォーミュラ・ニッポンへのエンジン供給はできない。日産 モータースポーツ 2010…SUPER GTは3台、FIA GT1世界選手権は4台のGT-R - Response・2010年2月11日
  2. ^ パワステ導入後初走行 Fニッポンドライバーの印象は? - AUTOSPORTS web - 2010年9月24日
  3. ^ 15年間SFを支えたTRD永井氏が勇退会見「日本のモータースポーツは今こそ正面から立ち向かう時」最後にサプライズも - オートスポーツ・2021年6月20日
  4. ^ SF次世代車両開発への道程。衝撃だった若手ドライバーの「乗りたくない」発言【永井洋治アドバイザーに聞く】 - オートスポーツ・2022年11月8日
  5. ^ フォーミュラ・ニッポン、2012年シーズンの開催概要を発表、2013年から新名称へ - CAR Watch・2012年3月26日

外部リンク[編集]