ジョン・イヴリン・ソーンダイク

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ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士(Dr. John Evelyn Thorndyke)は、オースティン・フリーマン推理小説に登場する法医学者であり、名探偵

シャーロック・ホームズによって成功した『ストランド・マガジン』誌に対抗したライバル誌『ピアスンズ・マガジン(Pearson's Magazine)』誌に連載されたもので、当時ホームズと人気を二分していた。

聖マーガレット病院で医学を学んだ後、法廷弁護士の資格を得た。ロンドンのキングス・ベンチ・ウォーク5Aに住居兼法医学研究所を設けて法医学病理学の研究にいそしみ、また聖マーガレット博物館の管理も行っている。友人のジャーヴィス医師(Christopher Jervis)や、研究所員で時計師のナサニエル・ポルトン(Nathaniel Polton)の協力を得て事件の捜査を行う。

ジャック・フットレルの「思考機械」ことヴァン・ドゥーゼン教授と並ぶ科学者探偵で、指紋血液など科学的手がかりを詳細に分析して推理を行う場合が多い。その上では警察の科学捜査の先駆けともいえる。どこでも科学的な調査が行えるようにと、顕微鏡やピンセットなどが入った緑色の小箱「携帯実験室」を常時携行している。また暗号解読も得意である。高身長にして強靱で、名探偵としては珍しくこれといった奇癖がない。

語り手は三人称、ジャーヴィス医師の場合、隣人の弁護士アンスティの場合、その他の四通りある。

登場作品[編集]

長編[編集]

  • 赤い拇指紋The Red Thumb Mark (1907) - ソーンダイク博士の登場する最初の長編。
    • 『赤い拇指紋』吉野美恵子訳(「創元推理文庫」.1982年)
    • 『赤い拇指紋』水野泰舜訳(改造社『世界大衆文学全集 第60巻 ソーンダイク博士』.1930年.版元解散、省略がある)
  • 「オシリスの眼」 The Eye of Osiris (1911)
    • 『オシリスの眼』二宮佳景訳(早川書房。1951年・絶版/別冊「宝石」109号.宝石社.1961年.版元解散、省略がある)
    • 『オシリスの眼』渕上痩平訳(「ROM叢書」.品切)*この叢書は主に「ROM」の同人向けのものである。
    • 『オシリスの眼』渕上痩平訳(筑摩書房『ちくま文庫』.2016年.上記「ROM叢書」版の訳をイギリス版初版によって改訳したもの)
  • 「三十一号新館事件」 The Mystery of 31, New Inn (1912)
    • 戦後早々に木々高太郎訳で『新三十一号館』として雄鶏社より刊行予定だったが、GHQの翻訳出版の許可がおりず刊行できず。
    • 『オリエンタリストの遺言書』斉藤志州訳(キンドル版)
  • 「もの言えぬ証人」 A Silent Witness (1914)
  • 「ヘレン・ヴァードンの告白」 Helen Vardon's Confession (1922)
  • 「猫目石」 The Cat's Eye (1923)
    • 『猫目石』近藤経一訳(平凡社「世界探偵小説全集」第17巻。1929年.絶版、極端な抄訳)
    • 『キャッツ・アイ』渕上痩平訳(「ROM叢書」.品切)*この叢書は主に「ROM」の同人向けのものである。
  • 「アンジェリーナ・フルードの謎」 The Mystery of Angelina Frood (1924)
    • 『男装女装』邦枝完二訳(平凡社「世界探偵小説全集」第16巻。1929年.絶版、極端な抄訳)
    • 『アンジェリーナ・フルードの謎』西川直子訳(論創社『論創海外ミステリ』.2016年)
  • 「狼の影」 The Shadow of the Wolf (1925) - 倒叙
  • 「ダーブレイの秘密」 The D'Arblay Mystery (1926)
    • 『ダーブレイの秘密』中桐雅夫訳(早川書房「早川ポケット・ブックス」。1957年、「ハヤカワ・ミステリ」1997年、同一叢書の叢書名改題)
  • 「ソーンダイク博士の流儀」 A Certain Dr Thorndyke (1927)
  • 「証拠は眠る」 As a Thief in the Night (1928)
    • 『証拠は眠る』武藤崇恵訳(原書房。2006年)
  • 「ポッターマック氏の失策」 Mr Pottermack's Oversight (1930) - 倒叙
    • 『ポッターマック氏の失策』鬼頭令子訳(論創社「論創海外ミステリ」.2008年)
  • 「大司祭の息子」 Pontifex, Son and Thorndyke (1931)
  • 「内輪もめ」 When Rogues Fall Out (1932),米版題はDr. Thorndyke's Discovery
    • 『内輪もめ』斉藤志州訳(キンドル版)
  • 「プラチナ物語」 Dr Thorndyke Intervenes (1933)
    • 『プラチナ物語』斉藤志州訳(キンドル版)
  • 「被告側の証人」 For the Defence: Dr Thorndyke (1934)
  • 「ペンローズ失踪事件」 The Penrose Mystery (1936)
    • 『ペンローズ失踪事件』美藤健哉訳(長崎出版「海外ミステリGem Collection」.2007年.版元倒産)
  • 「冷たい死」 Felo de se? (1937),米版題 Death at the Inn
    • 『冷たい死』斉藤志州訳(キンドル版)
  • 「猿の肖像」 The Stoneware Monkey (1938)
    • 『猿の肖像』青山万里子訳(長崎出版「海外ミステリGem Collection」.2008年.版元倒産)
  • 「ポルトン氏の説明」 Mr Polton Explains (1940)
  • 「ジェイコブ街の謎」 The Jaciob Street Mystery (1942) - 最後のソーンダイク博士譚

合本[編集]

  • Dr. Thorndyke's Crime File (1941) - omnibus(“The Eye of Osiris“,“The Mystery of Angelina Frood”,“Mr Pottermack's Oversight”の三作を収めたもの)
    • 『オシリスの眼』渕上痩平訳(筑摩書房『ちくま文庫』。2016年.『オシリスの眼』二宮佳景訳(早川書房。1951年・絶版/別冊「宝石」109号.宝石社.1961年.版元解散、省略がある)
    • 『アンジェリーナ・フルードの謎』西川直子訳(論創社『論創海外ミステリ』.2016年)。『男装女装』邦枝完二訳、(平凡社「世界探偵小説全集」第16巻。1929年.絶版、極端な抄訳)
    • 『ポッターマック氏の失策』鬼頭令子訳(論創社「論創海外ミステリ」.2008年)。

短編[編集]

訳書[編集]

短編は、大正時代・昭和戦前から色々の雑誌や全集本などに多数訳出されている。

戦前の探偵雑誌や探偵小説本などの訳は今日の訳と訳の姿勢が異なり省略や書き入れ等が普通であるので利用上の注意が必要である。近年雑誌「新青年」の覆刻が刊行され公共図書館の一部の蔵書にあるようであるので、戦後の訳がないものについてのみ記載した。

比較的近年に刊行又は再版された短編集は収録本を明記した。雑誌やアンソロジー掲載の訳は、以下に略号を付した4書に収録されているものは省略した。なお、東京創元社、東都書房、講談社から刊行された短編集は特定の短編集の訳ではなく日本で独自に編纂された短編集である。最後の括弧は下に掲げる個々の短編の収録を示す際の略号である。

  • 『ソーンダイク博士』妹尾アキ夫訳(東京創元社「世界推理小説全集」第29巻.1957年。絶版)(妹尾)
  • 『歌う白骨』大久保康男訳(中央公論社「世界推理名作全集」.1961年.所収。絶版)これは短編集『歌う白骨』のはじめの3篇の訳である。
  • 『歌う白骨』大久保康男訳(中央公論社「世界推理文学名作選」.1963年.所収。絶版)これは短編集『歌う白骨』の全訳である。
  • 『ソーンダイク博士集』佐藤祥三訳(東都書房「世界推理小説大系」第14巻。1963年所収/講談社「世界推理小説大系」第4巻。1972年所収、ソーンダイク博士の訳は両者とも同じである。ともに絶版)(佐藤)
  • 『ソーンダイク博士の事件簿』大久保康男訳(東京創元社「創元推理文庫」.1977年。初版は「I」の文字が入っていないが、後の増刷から「I」の文字が追加された)(I)
  • 『ソーンダイク博士の事件簿II」大久保康男訳(東京創元社「創元推理文庫」.1980年。)(II)
  • 『歌う白骨』大久保康男訳(嶋中書店「嶋中文庫」.2004年。版元倒産により絶版)上記中央公論社版の文庫化。
作品[編集]
  • 「ソーンダイク博士の事件簿」 John Thorndyke's Cases , 1909.(米版:Dr. Thorndyke's Cases, 1931)
  1. The Man with the Nailed Shoes「海浜の足跡」(妹尾韶夫訳-『青色ダイヤ』博文館.1923年所収、『青い甲虫』博文館文庫.1939年所収、ともに絶版)/「謎の靴跡」(水野泰舜訳-『世界大衆文学全集』第60巻.改造社.1930年所収.絶版)
  2. The Stranger's Latchkey「忘れられた鍵」(宮沢洋司訳)[1]
  3. The Anthropologist at Large「人類学講座」(藤沢透訳-井伊順彦編『自分の同類を愛した男--20世紀英国モダニズム小説集成』風濤社.2014年所収)
  4. The Blue Sequin「青いスパンコール」(I)
  5. The Moabite Cipher「モラブ語の暗号」(I)
  6. The Mandarin's Pearl「中国貴族の真珠」(宮沢洋司訳-『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』2014年9月号.早川書房.所収)
  7. The Aluminium Dagger「アルミニウムの短剣」(I)
  8. A Message from the Deep Sea「深海からのメッセージ」(熊井ひろ美訳.『ハヤカワ・ミステリ。マガジン』2000年6月号.早川書房.所収)
  • 歌う白骨 The Singing Bone , 1912.- 倒叙(短編「前科者(老いたる前科者)」は例外)
    • 『歌う白骨』(大久保康雄訳(中央公論社、1963年/嶋中文庫、2004年)
  1. The Case of Oscar Brodski「オスカー・ブロンスキー事件」(妹尾)(井上勇訳-江戸川乱歩編『世界短編傑作選2』創元推理文庫.1961年所収)(大久保康男訳-『歌う白骨』所収)/「ブロドスキー殺害事件」(佐藤)
  2. A Case of Premeditation「予謀殺人」(妹尾)/「計画殺人事件」(I)/「計画された事件」(大久保康男訳-『歌う白骨』所収)
  3. The Echo of a Mutiny「歌う白骨」(妹尾)(I)/「反抗のこだま」(大久保康男訳-『歌う白骨』所収)[2]
  4. A Wastrel's Roamnce「おちぶれた紳士のロマンス」(I)/「落魄紳士のロマンス」(大久保康男訳-『歌う白骨』所収)
  5. The Old Lag「前科者」(妹尾)/「老いたる前科者」(I)(大久保康男訳-『歌う白骨』所収)
  • The Great Portrait Mystery, 1918.
  1. The Missing Mortgage「消えた金融業者」(II)
  2. Percival Bland's Proxy「パーシヴァル・ブランドの替玉」(II)
    • (他はソーンダイク博士の登場しない作品)
  • Dr. Thorndyke's Casebook, 1923.(米題:The Blue Scarab, 1924)
  1. The Case of the White Footprints 「白い足跡の謎」(大久保康男訳、G.K.チェスタトン序『探偵小説の世紀(下)』創元推理文庫.1985年.所収)
  2. The Blue Scarab「青い甲虫」(II)(佐藤)/「青色の甲虫」(水野泰舜訳-『世界大衆文学全集』第60巻.改造社.1930年所収.絶版)
  3. The New Jersey Sphinx「ニュージャージー・スフインクス」(II)
  4. The Touchstone「試金石」(宮沢洋司訳)[1] /「遺言状の行方」(妹尾韶夫訳-「新青年」.1922年10月号.博文館.所収)
  5. A Fisher of Men「人間を釣る」(佐藤)
  6. The Stolen Ingots「盗まれた金塊」(宮沢洋司訳)[1](水野泰舜訳-『世界大衆文学全集』第60巻.改造社.1930年所収.絶版)
  7. The Funeral Pyre「焼死体の謎」(II)
  • The Puzzle Lock, 1925.
  1. The Puzzle Lock「暗号錠」(妹尾)/「文字合わせ錠」(大久保康男訳-レイモンド・ポンド編『暗号ミステリ傑作選』創元推理文庫.所収)
  2. The Green Check Jacket「緑色の背広服」(妹尾韶夫訳-「新青年」1926年3月号.博文館.所収)
  3. The Seal of Nebuchadnezzar「稀代の印鑑」(妹尾韶夫訳-「新青年」1934年春増刊号.博文館.所収)
  4. Phyllis Annesley's Peril「アズネリーの受難」(妹尾)/「アズネリー嬢の危難」(佐藤)/「フィリス・アネズリーの受難」(II)
  5. A Sower of Pestilence「悪疫の伝播者」(佐藤)
  6. Rex v. Burnaby「バーナビイ事件」(厚木淳訳.レイモンド・ポンド編『毒薬ミステリ傑作選』創元推理文庫.所収)
  7. A Mystery of the Sand-hills「砂丘の秘密」(I)
  8. The Apparition of Burling Court「バーリング・コートの亡霊」(大村美根子訳.中島河太郎・押川曠編『名探偵読本5.シャーロック・ホームズのライヴァルたち』パシフィカ.1979年.所収)/「バーリング・コートの幽霊」(水野泰舜訳-『世界大衆文学全集』第60巻.改造社.1930年所収.絶版)
  9. The Mysterious Visitor「謎の訪問者」(井伊順彦訳-井伊順彦編『自分の同類を愛した男--20世紀英国モダニズム小説集成』風濤社.2014年所収)
  • The Magic Casket, 1927.
  1. The Magic Casket「不思議な宝石箱」(西川直子訳-井伊順彦編『世を騒がす嘘つき男--英国モダニズム短篇集2』風濤者.2014年所収
  2. The Contents of a Mare's Nest「空騒ぎ」(妹尾)
  3. The Stalking Horse「社会改造の敵」(大島白濤訳-「新趣味」1922年12月号.博文館.所収)
  4. The Naturalist at Law「疑問の溺死」(水野泰舜訳-『世界大衆文学全集』第60巻.改造社.1930年所収.絶版)
  5. Mr. Ponting's Alibi「ポンティング氏のアリバイ」(妹尾)(II)
  6. Pandora's Box「パンドーラの箱」(妹尾)(佐藤)/「パンドラの箱」(II)
  7. The Trail of Behemoth(未訳)
  8. The Pathologist to the Rescue(未訳)
  9. Gleanings from the Wreckage「バラバラ死体は語る」(II)

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c ウェブ「翻訳道楽」にて販売http://homepage3.nifty.com/yonemaru/Douraku/Douraku.html
  2. ^ 短編の原題は「反抗のこだま」であり、第2章(解決編)の「歌う白骨」が、全体の短編集タイトルにもなっている。