ジョニー・ウォーカー

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ジョニーウォーカー・黒ラベル

ジョニー・ウォーカーJohnnie Walker)は、世界的に有名なスコッチ・ウイスキーブランドである。1820年にスコットランド南部のキルマーノックKilmarnock)の町において当初は食料雑貨店として創業され、1830年頃からウイスキー製造を開始し、1909年から創業者ジョンの愛称に因んだジョニー・ウォーカーのブランド名で販売されるようになった。

世界で最も普及しているスコッチ・ウイスキーの銘柄として知られ、世界中のあらゆる国々で流通し、年間2億本以上のボトルが出荷されている。現在のジョニー・ウォーカーは世界最大手のイギリス酒造企業・ディアジオ社が抱えるブランドの一つとなっている。

歴史[編集]

食料雑貨店開業(1820~1857)[編集]

創業者ジョン・ウォーカー

創業者ジョン・ウォーカーJohn Walker)は、1805年にスコットランドキルマーノックの町で生まれた。1819年に農場経営者である父親を亡くし、運営が困難となった農場を売却したウォーカー家は、その資金で翌1820年に食料雑貨店をキルマーノックの大通りに開いた。これがウォーカー社の創業とされ、当時若干15歳のジョンは家族の大黒柱として店を切り盛りした。1823年に酒税引き下げの機会を得たジョンは様々なアルコール飲料を販売して利益を上げた。1825年以降になるとウイスキー販売を事業の中心にするようになり、また蒸留所を開設してジョン自身もスコッチ・ウイスキーを製造するようになった。これはウォーカーズ・キルマーノックWalker's Kilmarnock Whisky)と名付けられて一定の知名度を獲得した。なお、ジョンの製法はヴァッテッドモルトだったので、ブレンデッドである後のジョニーウォーカーの原型とはならなかった。ジョンは1857年に死去し、息子のアレクサンダーが事業を引き継いだ。

「ジョン・ウォーカーはウイスキー製造の礎を築いたが、それを世界的なブランドにまで高めたのは息子のアレクサンダーと孫のアレクサンダー2世の功績である。ジョンはウイスキー製造と並行して様々な酒類をも取り扱っていた。アレクサンダーは小売販売をやめて自家製造と卸売業に専念すべきだと父親を説得した。ジョン時代のウイスキー製造事業は会社利益の8%を占めるに過ぎなかったが、アレクサンダー時代には会社が急成長する中で利益の90%以上を稼ぎ出す様になった。」(引用:Giles MacDonogh

酒造事業の拡大(1858~1908)[編集]

二代目アレクサンダー・ウォーカー

二代目アレクサンダー・ウォーカーAlexander Walker)は、キルマーノックの町に鉄道が開通した機会を掴み、ウォーカーズ・キルマーノック・ウイスキーの販売網を拡大して大きな利益を上げた。今日の象徴的な四角いボトルはこの1860年頃に発案されており、荷箱に隙間無く詰め込めるようにして大量輸送を助ける為だった。また振動によるボトル同士の接触を防いで破損率も減らした。ボトル幅の狭さに合わせてラベルを斜めに貼るようになった。ウイスキーの開発にも取り組んでいたアレクサンダーは、1865年にモルト・ウイスキーグレーン・ウイスキーのブレンデッドであるオールドハイランド(Walker’s Old Highland)を製造し、これが現在に通じるジョニーウォーカーの原型となった。ウイスキー製造事業の基盤を拡大したアレクサンダーは1889年に没し、その息子であるジョージとアレクサンダー2世が後を継いだ。

ブランドの発足(1909~1924)[編集]

ジョニーウォーカー社

三代目アレクサンダー・ウォーカーII世Alexander Walker II)は、1909年にオールドハイランドを改称し、ジョニーウォーカーJohnnie Walker)のブランドを立ち上げた。これは創業者である祖父ジョンの愛称に因んだものであり、ブランドロゴに描かれているシルクハットを被り赤いテイルコートを着てステッキを片手に大股で歩く男性は、洒落者として知られていた在りし日のジョンの姿であった。白ラベル(6年物)、赤ラベル(10年物)、黒ラベル(12年物)の三色が世に送り出され、ジョニーウォーカーはイギリス国内のみならず海外にも広まった。事業の急成長とウイスキーの生産拡大に伴い、アレクサンダー2世はスコットランド各地の蒸留所を次々と買収した。1920年にアレクサンダー2世はウイスキー分野での功労を認められて英国王室からナイトに叙任された。

運営会社の変遷(1925~現在)[編集]

第一次世界大戦の混乱を経た後の1925年にジョニーウォーカーブランドは、当時の酒造最大手であったディスティラーズ社(Distillers Company)の傘下に入った。1934年にジョニーウォーカーは英国王室御用達royal warrant)を拝命した。それから半世紀後の1986年にディスティラーズ社はギネス社Guinness)に買収された。その時期に青ラベル(最古年物)と黄金ラベル(18年物)が販売された。1997年にギネス社はグランドメトロポリタン社(Grand Metropolitan)と合併して世界最大手の酒造企業となるディアジオ社Diageo)が誕生した。その発足に合わせて緑ラベル(15年物)が発売された。現在のジョニーウォーカーのブランドオーナーはこのディアジオ社である。

日本国内[編集]

日本では「ジョニ黒」「ジョニ赤」の愛称で親しまれており、昭和期の日本では庶民の憧れとして大衆文化にもしばしば登場した。1957年においてのジョニ黒の実売価格は1万円であり、これは当時の大卒初任給二ヶ月分に相当した。1985年頃になると海外旅行者の増加に伴う免税品の利用から入手し易くなった。1989年に消費税が導入されると物品税とウイスキーの等級制度がそれぞれ廃止された事で更に購入し易くなった。2017年の現在においては2,500円前後で購入出来る。2009年10月、日本国内の輸入販売元がディアジオ・ジャパンからキリンビール[1]に移行した[2]

2018年3月には、アメリカ合衆国限定商品として女性版とも言える「ジェーン・ウォーカー」が発売された[3]

ブレンド一覧[編集]

Age 1865 - 1905 1906 - 1908 1909 - 1911 1912 - 1931 1932 - 1991 1992 - 1996 1997 - 2012 2012 - 2016 2016 - 現在
6年
(blended)
オールド・ハイランド 白ラベル
10年/不詳
(blended)
スペシャル・
オールド・ハイランド
赤ラベル
12年
(blended)
オールド・ハイランド エキストラ・スペシャル・
O・H
黒ラベル
不詳
(blended)
ダブル黒ラベル
不詳
(blended)
スイング(黄ラベル)
15年
(vatted)
緑ラベル 緑ラベル
15年
(blended)
黄金ラベル補欠版
18年
(blended)
黄金ラベル 白金ラベル
最古年
(blended)
青ラベル
ホワイト・ラベル
1909年に6年物として登場した。第一次世界大戦中に販売終了した。
レッド・ラベル
グレーンウイスキーとモルトウイスキーのブレンデッドであり、1909年の販売当初は10年物とされたが、後に不詳となった。1945年以降の世界で最も売れているウイスキーと言われている。メーカー側の定義では、専らウイスキーカクテルのベース品として位置付けられている。
ブラック・ラベル
数多くの原酒を配合した贅沢なブレンデッドであり、そのどれもが12年以上熟成している。1909年に12年物として発売されて以来、世界で最も売れているプレミアム・スコッチウイスキーである。
ダブルブラック・ラベル
元は旅行客向け小売品(免税店用)だったが、好評を博した事で2011年からブラックラベルの試作版スタイルで販売されるようになった。内側を焦がしたオーク樽で熟成されており、スモーキーフレーバーの豊かさが特徴とされる。
スイング
他のラベル品と異なる特徴的な壷状のボトルからこの名前がついた。ボトル底面の厚みで揺すられても簡単には倒れない。豪華客船の中で考案されたと言われる。創業三代目アレクサンダー2世がこだわりを持って最後に製造したブレンデッドであり、スペイサイドモルトspeyside single malt)をベースにしている。1932年から販売された。スイングは”揺れ動く”と共に”洗練された”という意味も持つ。
グリーン・ラベル
親会社となるディアジオ社の発足に合わせて、1997年にピュアモルト15年物Pure Malt 15 Year Old)の銘柄で発売され、2004年にグリーンラベルとなった。ジョニーウォーカーラベルの中で唯一のヴァッテッドモルト・ウイスキーであり、約15種類のモルト原酒が配合されている。代表的なものはタリスカー、クラガンモア、リンクウッド、カリラなどであり、いずれも15年以上の熟成品である。創業者ジョン・ウォーカーの製造スタイルを復古したものとも言える。2013年春に一時販売中止されたが、2016年8月に復帰した。
ゴールド・ラベル
18年以上熟成の貴重な原酒を配合した最高級のブレンデッド。クライヌリッシュモルト(clynelish malt)をベースにして、選び抜かれた15種類以上の原酒が加えられている。創業三代目アレクサンダー2世が遺していた配合ノートから誕生した。彼は1905年の創業者ジョン・ウォーカー生誕100周年を記念するウイスキーの開発を志していたが、大戦勃発などの様々な事情で結局その目的は果たせなかった。必要な熟成モルトがようやく確保されて、この特別なブレンデッドが日の目を迎える事になったのは親会社がギネス社となった後の1990年代に入ってからであり、ゴールドラベルと銘打たれた。
ゴールド・ラベル・リザーブ
製造に必要な熟成モルトがなくなった事で生産中止を余儀なくされたゴールドラベルの代理品として、2013年から販売されるようになった。熟成年数を下げた事で補欠を意味するリザーブの接尾辞が付いた。価格も下がり、同じ15年物であるグリーンラベルと同程度となった。
プラチナ・ラベル
厳選された18年以上熟成のシングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドしたプレミアム品である。2012年からゴールドラベルの後継として販売開始され、同等の品質に位置付けられている。2017年から18年物Aged 18 Years)と改称された。味わい的には甘さとエレガントさとスモーキーさが絶妙なバランスを保ち、深く、リッチでありながらスムースである。
ブルー・ラベル
ジョニーウォーカー究極のブレンデッドである。全てのボトルに製造番号が刻印され、シルクを裏地にした贈答箱に収められている。製造証明書も同梱されている。熟成年数は明記されてないが、ジョニーウォーカー秘蔵の貯蔵樽の中から取り出された数々の貴重な精選原酒が使われており、それらは15年から60年の熟成物と言われる。創業二代目アレクサンダー・ウォーカーが製造していた19世紀当時の至高の風味の再現を目指して開発された。親会社がギネス社となった直後の1980年代後半に最古年物John Walker's Oldest)の銘柄で発売され、1992年頃にブルーラベルとなった。ブルーラベルは創業二代目の遺産であり、ゴールドラベルは創業三代目の遺産とも言える。
ブルーラベルは元々、ジョニーウォーカーが英国王室御用達となった1934年に製造された国王ジョージ5世記念版John Walker & Sons King George V Scotch Whisky)に用いられた名誉ある色であり、その栄光を復古したものとも言える。2005年に数量限定販売されたジョン・ウォーカー生誕200周年記念版Johnnie Walker Blue Label 200th Anniversary)にもブルーラベルが使われた。これは水晶製デカンタ(酒瓶の一種)に封入され豪華な贈答箱に収められて4000ドル前後の値段が付けられた。


以下は限定版(limited edition)である。

ジョニーウォーカー・エクスプロラーズクラブ・コレクション(Explorer's Club Collection
スパイス・ロード
2012年11月に発売に発売されたエクスプロラーズクラブ・コレクションの第1弾。トレードルート・シリーズ三品の最初のブレンドであり、偉大な交易路で発見された豊かさから着想された。ジョニーウォーカーのエージェントがアジアのにぎやかな市場で見つけたであろう活気、アロマ、スパイスなどを呼び起こさせるものになっている。このウイスキーは古いオーク樽の中で熟成させ、スパイス市場を思い起こさせる強い仕上がりの素晴らしい口当たりの良さと豊かな香りを持っているが、依然としてジョニーウォーカー伝統に則っている。ボトルの口は白酒にように細くなっており、一度に大量に出ないようになっている。免税店限定販売品である。なお、このコレクションは全て免税店販売限定商品となる予定である。
ゴールド・ルート
2013年3月7日に発売されたエクスプロラーズクラブ・コレクションの第2弾。ウォーカー家やエージェントたちが新しいビジネスや豊かな冒険を求め、中央アメリカから太平洋沿岸を南下して、インカ帝国のピラミッド遺跡を望見したり、アンデス山脈の山々を旅したりしながら目にした雄大な眺望、多様な文化の旅に着想を得た。最高級の熟成したウイスキーを精選してブレンドし、豊かな滑らかさ、さわやかな香りを創り出し、口に含むとこの地方独特の果物の香り、美しく、豊かな金色のイメージが広がる。免税店限定販売品である。
ロイヤル・ルート
2013年後半に販売されたエクスプロラーズクラブ・コレクションの第3弾。こちらも免税店限定商品であり、スパイス・ロードから始まったコレクションの最終作でもある。ロイヤル・ルートは極東から地中海を結ぶシルクロードをイメージして作られた。マスターブレンダーはこの異国情緒に刺激を受け、深く印象的な味わい、そして非常に調和の取れたバランスに作り上げ、ザーブセラーからの最高級のオーク樽で熟成した。フルーツ、トフィ、ウッディといったフレーバーがバランスよく調和し、わずかにアロマティックなスモークも感じられる。


ジョニーウォーカー・ブレンダーズバッチ(Blenders' Batch
レッドライ・フィニッシュ
ブレンダーズバッチの第1弾。
トリプルグレイン・アメリカンオーク
ブレンダーズバッチの第2弾。
ワインカスク・ブレンド
ブレンダーズバッチの第3弾。

大衆文化との関連[編集]

村上春樹の世界のジョニーウォーカー
F1マクラーレン記念版黒ラベル

その他逸話[編集]

2006年、ジョニー・ウォーカーはレバノンベイルートのビルにかけた巨大な広告でニュースになった。広告は、国が被害を受け困難を余儀なくされている人々に同情し励ましているが、窮状の原因が何であるかは示していない。これを紛争の片側に味方していると見る人もいる。同じ広告は北イスラエルにかかっていないからである[5]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

参照[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 当初は赤ラベルと黒ラベル12年のみ移行したが、後にダブルブラックと緑ラベル15年、金ラベル、プラチナラベルも順次移行した。
  2. ^ Hughes, John (2005). Still Going Strong: A History of Scotch Whisky Advertising, Tempus Publishing Ltd., ISBN 0-7524-3174-9
  3. ^ 「ジョニ黒」の女性版、米で3月に限定発売『読売新聞』朝刊2018年3月1日(国際面)
  4. ^ 朝日新聞be編集グループ編『サザエさんをさがして』(朝日新聞出版、2005年)、pp.130-133
  5. ^ ベイルートの広告の写真あり