ジャマイカ連立

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャマイカ国旗

ジャマイカ連立 (: Jamaika-Koalition、Schwampelと呼ばれることもある) とは、ドイツ政治におけるドイツキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟 (CDU/CSU) や自由民主党 (FDP)、緑の党連立政権を意味する用語である。

ジャマイカ連立という言葉の由来は、連立を組む政党のシンボルカラーである保守系(CDU/CSU)の黒色、自由民主党 (FDP)の黄色、そして緑の党の緑色がジャマイカの国旗の配色と一致するという事実から来ている。

なお、これと比して、ドイツキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟 (CDU/CSU) やドイツ社会民主党 (SPD)、自由民主党 (FDP)の組み合わせによる連立政権は、それぞれの政党のシンボルカラーがドイツの国旗で用いられている3色と同じことからドイツ連立: Deutschland-Koalition)と呼称される(または黒・赤・黄連立ドイツ語版ともいう。)。

歴史[編集]

2005年のドイツ連邦議会選挙の後、ジャマイカ連立は数の上で可能になり、初めて議論された。自由民主党 (FDP) はドイツ社会民主党 (SPD) と連立をしないと決定しており、ジャマイカ連立は数少ない選択肢の一つとして残されていたが、連立の提案を緑の党に拒否された[1]

ザールラント州緑の党の議員たちはCDU/CSUの連立を支持することを2009年の10月に発表し、州政府レベルではドイツ初のジャマイカ連立を形成した。左翼党の支援に依存しているザールランド州のSPDの少数派政権を防ぐ事が望まれており、それがこの動きを部分的に促した。2012年の1月にザールラント州での連立政権は失敗に終わった[2]

近年、ジャマイカ連立はシュレスヴィヒホルシュタイン州政権を握っている。2017年のシュレスヴィヒホルシュタイン州議会選挙の後、ヴォルフガング・クビッキ率いるFDPとモニカ・ヘイノールド率いる緑の党の連立の形成によって、CDU党首であるダニエル・ギュンターが連立政権大臣主席に就任した[3]

2017年のドイツ連邦議会選挙の後、国政レベルにおけるジャマイカ連立の交渉は失敗している[4]。初めに、SPDが野党復帰を発表した後、ドイツのための選択肢をかかわらせない唯一の実現可能な方法となった[5]移民問題エネルギー政策において妥協点を見つけることが困難なことを引き合いに出し、FDPが議論から退いてしまったため連立交渉は失敗に終わった[6]。結局この時はCDU/CSUとSPDの大連立政権が成立している。

ブラック・トラフィック・ライト[編集]

ブラック・トラフィック・ライト: Schwarze Ampel もしくは、かばん語Schwampel)は、ジャマイカ連立の別名である。この用語は、従来からSPD(赤)、FDP(黄)、緑の党による連立の呼び名としてある信号連立: Ampelkoalition[注釈 1] から派生した表現である。ブラック・トラフィック・ライトでは、SPDのシンボルカラーである赤色はCDUの黒色に置き換わっている。従来の信号連立はブランデンブルク州ブレーメン州ラインラント=プファルツ州で政権を握っていたことがある。略語であるシュワンペル (Schwampel) の確認されている最初の登場は、ドイツの日刊紙の1991年10月4日『ディー・ターゲスツァイトゥング』(ブレーメン州版)である[7]

ベルギーでの用法[編集]

ベルギーではジャマイカ連立は、民主派(キリスト教民主フラームス民主人道主義中道派キリスト教社会党)、リベラルフラームス自由民主改革運動自由と進歩のための党)、緑の党フルンエコロ)の連立を指す[8][9]。ベルギー各党のシンボルカラー(オレンジや青色、緑など)はジャマイカ国旗とは一致しないものもあるが、この用語はドイツの政治学から取り込まれた。 このような連立は連邦、地域及び言語共同体、州レベルでは実現していないが、2018年のホルスベークのような様々な自治体などでは形成されている[10]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 3党のシンボルカラーの組み合わせが一般的なドイツの信号機の配色と同じことに由来する。

出典[編集]

  1. ^ Harding, Luke (2005年9月20日). “New election looms as Greens reject Merkel”. The Guardian (London). https://www.theguardian.com/germany/article/0,2763,1573905,00.html 2010年5月5日閲覧。 
  2. ^ Zuvela, Matt (2012年1月6日). “One-of-a-kind coalition falls apart in German state”. Deutsche Welle. http://www.dw.de/dw/article/0,,15650980,00.html 2012年3月15日閲覧。 
  3. ^ Herrmann, Gunnar (2017年5月8日). “All signs point to Jamaica coalition” (ドイツ語). Süddeutsche Zeitung. http://www.sueddeutsche.de/politik/landtagswahl-alle-zeichen-deuten-auf-jamaika-koalition-1.3495357 2017年9月9日閲覧。 
  4. ^ C, J (2017年9月24日). “Germany's exit polls point to big losses for the two main parties”. The Economist (Berlin). https://www.economist.com/blogs/kaffeeklatsch/2017/09/first-results 2017年9月24日閲覧。 
  5. ^ Shalal, Andrea (2017年9月24日). “German Social Democrats vow to rebuild in opposition after election drubbing”. Reuters (Berlin). https://www.reuters.com/article/us-germany-election-spd/german-social-democrats-vow-to-rebuild-in-opposition-after-election-drubbing-idUSKCN1BZ0YQ 2017年9月24日閲覧。 
  6. ^ Oltermann, Philip (2017年11月20日). “German coalition talks collapse after deadlock on migration and energy”. The Guardian. https://www.theguardian.com/world/2017/nov/19/german-coalition-talks-close-to-collapse-angela-merkel 2017年11月20日閲覧。 
  7. ^ ASE (1991年10月4日). “FDP will mitregieren” (ドイツ語). taz. https://taz.de/!1700172/ 2021年10月11日閲覧。 
  8. ^ “Wat na 7 juni” (オランダ語). De Standaard. (2009年5月26日). http://www.standaard.be/Artikel/Detail.aspx?artikelId=7U2ALF96 2019年12月15日閲覧。 
  9. ^ Van de Velden, Wim (2019年4月4日). “De groene droom van een jamaicacoalitie” (オランダ語). De Tijd. https://www.tijd.be/dossiers/verkiezingen-2019/de-groene-droom-van-een-jamaicacoalitie/10114314.html 2019年12月15日閲覧。 
  10. ^ Bosmans, Kirsten (2018年). “Holsbeek krijgt coalitie met CD&V, Groen en Open Vld” (オランダ語). 2019年12月16日閲覧。

関連項目[編集]