ジブカイン

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ジブカインとは、アミド型局所麻酔薬の1つである。ただし、国際一般名を始めとして、イギリスなどでは、シンコカインINNBAN:cinchocaine)と呼ばれる。ジブカイン(USANJAN:dibucaine)の名称を一般名として用いているのは、アメリカ合衆国日本などである。なお、局所麻酔薬の毒性の基準として、ジブカインナンバー英語版を用いる場合が有る。本稿では、これ以降、名称をジブカインに統一する。

麻酔薬[編集]

ジブカインは構造中にアミド結合を有した、アミド型局所麻酔薬の1つである [1] 。 ただし、他のアミド型局所麻酔薬、例えば、リドカイン [注釈 1]ブピバカインメピバカインなどが、全て「芳香環-NH-CO-R」のアミド結合をしているのに対して、ジブカインは「芳香環-CO-NH-R」と順番が異なっている [2] 。 一般にアミド型局所麻酔薬の方がヒトでの分解が遅いため、エステル型局所麻酔薬よりもアミド型局所麻酔薬の方が作用時間が長く、ジブカインを0.5パーセントの濃度で用いた場合の平均作用時間は、3時間から4時間程度である [3] 。 ジブカインのヒトでの主な用途は脊髄くも膜下麻酔であり、その最高投与可能量は、体重1 kg当たり0.7 mgである [4] 。 ただし、局所麻酔に用いる場合も有る [5] [6]

なお、局所麻酔薬はヒトに対して毒性を持っており [7] 、もちろんジブカインも例外ではない [注釈 2]

製剤学[編集]

ジブカインは、その分子構造から明らかなように、塩基性の条件下では水溶性を失う。したがって、ジブカインは例えば塩酸とのの形、すなわち、ジブカイン塩酸塩(dibucaine hydrochloride)の形にして、注射薬などとして製剤化する。

配合薬[編集]

ジブカインは、ヒトのの治療に使用する場合の有るプロクトセディル英語版のような、薬剤に有効成分の1つとして配合されている事例が見られる。参考までに、プロクトセディルに配合されているジブカインも、塩酸塩の形で配合してある。

安楽死[編集]

ジブカインは獣医学分野でも用いる場合の有る薬の1つである。ジブカインは高い毒性を持った薬の1つとして知られ [5] 、その毒性を利用して、ウマやウシを安楽死させるために用いる場合が有る。

構造と生理活性に関して、関連する化合物[編集]

プロカインアミドもジブカインと同様に「芳香環-NH-CO-R」を有するだけでなく、このアミド結合がエステル結合であるプロカインは、エステル型の局所麻酔薬の1つとして知られる。しかしながら、プロカインアミドは心筋に発現している電位依存性ナトリウムチャネルに対する作用を利用して、抗不整脈薬として利用される [2] 。 なお、プロカインアミドは心筋で活動電位持続時間不応期の時間を延長させる作用を示す [8]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 参考までに、救命措置において、心臓の除細動が難しい場合に、心筋への作用を利用して、リドカインを静脈注射して抗不整脈薬として用いる場合も有る。
  2. ^ ジブカインの毒性に関して、詳しくはジブカインナンバー英語版などの記事を参照の事。

出典[編集]

  1. ^ Anthony P Adams・Penelope B Hewitt・Christopher M Grande(編)丸川 征四郎(監訳)『緊急患者の麻酔 基礎と実際』 p.319 秀潤社 2004年5月31日発行 ISBN 4-87962-275-3
  2. ^ a b 柴崎 正勝・赤池 昭紀・橋田 充(監修)『化学構造と薬理作用 - 医薬品を化学的に読む(第2版)』 p.103 廣川書店 2010年10月20日発行 ISBN 978-4-567-46240-2
  3. ^ Anthony P Adams・Penelope B Hewitt・Christopher M Grande(編)丸川 征四郎(監訳)『緊急患者の麻酔 基礎と実際』 p.319、p.320 秀潤社 2004年5月31日発行 ISBN 4-87962-275-3
  4. ^ Anthony P Adams・Penelope B Hewitt・Christopher M Grande(編)丸川 征四郎(監訳)『緊急患者の麻酔 基礎と実際』 p.320 秀潤社 2004年5月31日発行 ISBN 4-87962-275-3
  5. ^ a b Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 30th ed, p.1006
  6. ^ Dibucaine
  7. ^ Anthony P Adams・Penelope B Hewitt・Christopher M Grande(編)丸川 征四郎(監訳)『緊急患者の麻酔 基礎と実際』 p.318 秀潤社 2004年5月31日発行 ISBN 4-87962-275-3
  8. ^ 柴崎 正勝・赤池 昭紀・橋田 充(監修)『化学構造と薬理作用 - 医薬品を化学的に読む(第2版)』 p.219 廣川書店 2010年10月20日発行 ISBN 978-4-567-46240-2

参考文献[編集]

  • “Cinchocaine hydrochloride determination by atomic absorption spectrometry and spectrophotometry.”. Farmaco 60 (5): 419–24. (2005). doi:10.1016/j.farmac.2005.03.001. PMID 15910814. 
  • “Effects of dibucaine on the endocytic/exocytic pathways in Trypanosoma cruzi.”. Parasitol Res 99 (4): 317–20. (2006). doi:10.1007/s00436-006-0192-1. PMID 16612626. 
  • “Effect of various formulation variables on the encapsulation and stability of dibucaine base in multilamellar vesicles.”. Acta Pol Pharm 62 (5): 369–79. (2005). PMID 16459486. 
  • Aroti, A.; Leontidis, E. (2001). “Simultaneous Determination of the Ionization Constant and the Solubility of Sparingly Soluble Drug Substances. A Physical Chemistry Experiment .”. Journal of Chemical Education 78 (6): 786–788. doi:10.1021/ed078p786.