ジフェニルホスフィン

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ジフェニルホスフィン
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識別情報
CAS登録番号 829-85-6
PubChem 70017
ChemSpider 63209
特性
化学式 C12H11P
モル質量 186.19 g mol−1
外観 無色液体
密度 1.07 g/cm3
沸点

280°C

への溶解度 不溶
危険性
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H250, H315, H319, H335
Pフレーズ P210, P222, P261, P264, P271, P280, P302+334, P302+352, P304+340, P305+351+338, P312, P321, P332+313, P337+313
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ジフェニルホスフィン (Diphenylphosphine) は、化学式 (C6H5)2PH で表される有機リン化合物である。悪臭のある無色の液体で、空気中で容易に酸化される。触媒として使用するための有機リン配位子の前駆体である。

合成[編集]

ジフェニルホスフィンは、トリフェニルホスフィンからリチウム ジフェニルホスフィドに還元し、プロトン化して得ることができる[1]

PPh3 + 2 Li → LiPPh2 + LiPh
LiPPh2 + H2O → Ph2PH + LiOH

応用と反応[編集]

実験室では、ジフェニルホスフィンは一般的な中間体である。脱プロトン化してジフェニルホスフィド誘導体を得ることができる[2]

Ph2PH + nBuLi → Ph2PLi + nBuH

ホスフィン配位子ウィッティヒ・ホルナー試薬、およびホスホニウム塩の調製は、通常、ジフェニルホスフィンをアルキル化することによって行われる。リンに結合した水素原子は、活性化されたアルケンにマイケル付加のように付加され、1,2-ビス (ジフェニルホスフィノ) エタン (Ph2PC2 H4PPh2) のようなホスフィン配位子を生成する。 ジフェニルホスフィンと、特にジフェニルホスフィド誘導体は求核試薬であるため、炭素-ヘテロ原子二重結合に付加する[2]。たとえば、100°Cの濃塩酸の存在下では、ジフェニルホスフィンがベンズアルデヒドの炭素原子に付加して (フェニル (フェニルメチル) ホスホリル)ベンゼンを生成する。

Ph2PH + PhCHO → Ph2P(O)CH2Ph

第三級ホスフィンと比較すると、ジフェニルホスフィンは弱塩基性である。プロトン化された誘導体のpKaは0.03である[3]

Ph2PH2+ is in equilibrium with Ph2PH + H+

ハンドリング[編集]

ジフェニルホスフィンはすみやかに酸化される[4]

Ph2PH + O2 → Ph2P(O)OH

この酸化の中間体はジフェニルホスフィンオキシドである。ジフェニルホスフィン-ボラン錯体Ph2PH•BH3を使用すると、ホスフィンを酸化から保護することでホスフィン酸化の問題を回避でき、業者から入手できる[2]

脚注[編集]

  1. ^ V. D. Bianco; S. Doronzo (1976). “Diphenylphosphine”. Inorganic Syntheses 16: 161–188. doi:10.1002/9780470132470.ch43. 
  2. ^ a b c Piotrowski, D. W. (2001). "Diphenylphosphine". Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. New York: John Wiley & Sons. doi:10.1002/047084289X.rd427
  3. ^ C. A. Streuli, "Determination of Basicity of Substituted Phosphines by Nonaqueous Titrimetry", Analytical Chemistry 1960, volume 32, pages 985-987.doi:10.1021/ac60164a027
  4. ^ Svara, J.; Weferling, N.; Hofmann, T. (2005), "Phosphorus Compounds, Organic", Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, doi:10.1002/14356007.a19_545.pub2