シーラカンス
シーラカンス目 | ||||||||||||||||||||||||
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![]() Latimeria chalumnae
ウィーン自然史博物館に収蔵されている保存標本 | ||||||||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||||||||
古生代デボン紀 - 新生代第四紀完新世(現世) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Coelacanthiformes Berg, 1937 | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Coelacanth | ||||||||||||||||||||||||
科 | ||||||||||||||||||||||||
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シーラカンス(学名:Coelacanthiformes)は、シーラカンス目(Coelacanthiformes)に属する魚類。化石種も現生種も含めた総称である。管椎目(かんついもく)とも呼ばれる。
歴史[編集]
シーラカンス目は多くの化石種によって存在が知られており、古生代デボン紀[注釈 1]に出現して広く世界の水域に栄えたが、約6500万年前(中生代白亜紀末)の大量絶滅(K-Pg境界)を境にほとんど全ての種が絶滅した。
長らくシーラカンス目は全て絶滅したものと考えられていたが、南アフリカの北東海岸のチャルムナ川沖にて1938年、現生種の存在が確認され、学会および世界を騒然とさせた。この現生種はシーラカンスの代名詞的存在となっているが、生物学上の名称は ラティメリア・カルムナエ (Latimeria chalumnae) である。
その後、1952年にはインド洋コモロ諸島で同じくカルムナエ種が、1997年にはインドネシアのスラウェシ島近海で別種のラティメリア・メナドエンシス (Latimeria menadoensis) の現生が確認されている。後者は日本語では生息地域の名を採って「インドネシア・シーラカンス」とも呼ばれるようになる。
シーラカンス目は、白亜紀を最後に化石が途絶え、1938年に至るまで現生種が確認されなかったこと、化石種と現生種の間で形態的な差異がほとんど見られないことなどから、これら2種は「生きている化石」との評価を受けた。
形態・生態[編集]
古生代と中生代のシーラカンス目は、かつては世界中の淡水域や浅い海に広く分布していたと考えられる。体形・体長もさまざまなものが知られ、現生のラティメリア属に近い体形のものから、タイのように体高が高く扁平な体型をした種やアンコウのような丸い形のもいた。また、復元された全長が3mに達する巨大な種も知られている。現生のシーラカンス2種はいずれも深海に生息し、魚やイカを捕食していると考えられている。
シーラカンスは8つのひれを持ち、第2背びれ、胸びれ、腹びれ、しりびれには鱗でおおわれた筋肉質の基部がある。骨格は脊柱をふくめほとんど軟骨でできており、肋骨がない。浮き袋には空気ではなく脂肪が満たされている。鱗は硬鱗であり、コズミン層の退化したコズミン鱗であると考えられている。
シーラカンス目は卵胎生であると化石から推測されていたが、現生種の解剖でそれが証明された。雄の外性器は未だに見つかっておらず、交尾については謎である。
2013年4月17日、ネイチャーに発表された研究結果によると、シーラカンスの遺伝子の変化は他種に比べて遅いことが分かった。研究に携わったブロード研究所のカースティン・リンドブラッドトーは、「地球上には生物が変化する必要がない場所が少ないながらもあり、シーラカンスはそういった環境で生存してきた」と指摘している[1]。
呼称[編集]
シーラカンス目の中で最初に発見・分類された化石種は、属名として Coelacanthus の名を与えられた。 これは 古代ギリシア語: κοῖλος (koilos) 「からっぽの」 + ἄκανθα (akantha) 「(植物の)棘、魚の骨」 に由来する合成語で、尾びれの鰭条が中空の構造をもつことによる命名であったという[2]。 また、国際動物命名規約によりここから科名 Coelacanthidae が作られ、さらに目名 Coelacanthiformes が命名された。
通称名としては、同目に属するさまざまな魚を指して英語で coelacanth (シーラカンス[3]) と呼び、日本語でもこれに倣っている。 なかでも、後に発見され一躍有名になったラティメリア属(Latimeria)の現生種は、「シーラカンス」の名を担う看板的な存在となっている。
日本語の分類名としては Coelacanthiformes をシーラカンス目、Coelacanthidae をシーラカンス科と呼ぶのに対し、属名 Coelacanthus はいわゆるラテン語風にコエラカントゥス(属)と呼ぶことが多い。
日本での通称はかつては「シーラカンサス」とも呼ばれていた[注釈 2]。
科と属[編集]
- シーラカンス目 Coelacanthiformes
- †シーラカンス科 Coelacanthidae
- †アクセリア Axelia
- †ティキネポミス Ticinepomis
- †コエラカントゥス Coelacanthus
- †ウィマニア Wimania
- †ディプロケルキデス科 Diplocercidae
- †ハドロネクトル科 Hadronectoridae
- †マウソニア科 Mawsoniidae
- †アルコヴェリア Alcoveria
- †アクセルロディクティス Axelrodichthys
- †キンレア Chinlea
- †ディプルルス Diplurus
- †マウソニア Mawsonia
- †ミグアサイア科 Miguashaiidae
- ラティメリア科 Latimeriidae (現生)
- †ホロファグス Holophagus
- †リビス Libys
- †マクロポマ Macropoma
- †マクロポモイデス Macropomoides
- †メガコエラカントゥス Megacoelacanthus
- ラティメリア Latimeria (現生)
- †ウンディナ Undina
- †ラウギア科 Laugiidae
- †ラブドデルマ科 Rhabdodermatidae
- †ウィテイア科 Whiteiidae
- †シーラカンス科 Coelacanthidae
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 当時の淡水域ではクリマティウスなどの棘魚類が、海域ではダンクルオステウスなどの板皮類が栄えていた。
- ^ 1972年刊「学研の図鑑 大むかしの動物」では「シーラカンサス」の名で記載され、「シーラカンス」の別称も持つと紹介されている。
出典[編集]
- ^ Chris T. Amemiya, et. al. The African coelacanth genome provides insights into tetrapod evolution. Nature, 2013; 496 (7445): 311 DOI: 10.1038/nature12027
- ^ Online Etymology Dictionary
- ^ Coelacanth - howjsay.com 音声