シマウマ
シマウマ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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種 | |||||||||||||||||||||
シマウマ(縞馬)は哺乳綱ウマ目ウマ科ウマ属 (Equus) のうち、白黒の縞模様を持つ系統である。
数種(現代的な分類では3種)からなり、それらは単系統をなす。和名はシマ「ウマ」だが、ウマよりロバの系統と近縁である[1]。
特徴[編集]
形態[編集]
シマウマは概して草を食す植物食である。シマウマの外見的特徴は、毛の黒地に白の縞模様に加え、大きな耳、先端がふさ状になった尾など、その姿は野生のロバとよく似ており、鳴き声もロバに近い。ゆえに「縞模様のロバ」と呼ぶ言語もある。
シマウマの縞模様の効果は、捕食者が狩りの獲物とする個体を識別しにくくすることといわれてきた。これは、霊長類以外の哺乳類は色の識別能力が低いことと関連している。つまり、シマウマの白黒の模様は、霊長類以外の哺乳類が遠くから見た場合には草原の模様に埋もれ判別しにくいとされる。また、縞模様は身体の部位ごとに向きが異なり、群れをなすと各個体の縞模様が混ざって視覚的に同化してしまう。しかしMelinらの研究により、天敵の大型肉食獣は人間ほど縞の認識ができておらず、このため同じところに暮らす他種の植物食動物の単一の色の被毛に対して、縞模様が特に天敵を混乱させることに優位ではないということが判明した[2]。他にも説があり、日よけや草食動物のため群れている方が被害が少なく、仲間同士で群れを見つけるのに役立っているとも言われている[3]。
シマウマなど縞模様を持つ生物は、体表面で温度差を形成して微細な空気の流れを生じさせ体温調節に役立てているとする研究[4]がある。 しかしNHKのダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜の2017年(平成29年)10月1日放送で、独自にこの説の真偽を実際の生息環境で検証したところ、黒縞の部分は温度が大きく上がり、白縞の部分も黒縞よりは低いが温度が上昇し、低下を見せたのは温度差が生む風でなく自然の風が吹いたときだけということが判明した[5]。
2014年には、カリフォルニア大学デービス校のティム・カロ(Tim Caro)博士らの研究チームが、シマウマの縞模様は、吸血性のハエの仲間が媒介する伝染病から身を守るためである可能性が高いとの研究成果を発表した[6]。 カロらの研究チームは、ウマ科の動物から吸血し、その際に睡眠病を媒介するツェツェバエなどの吸血性ハエの仲間とシマウマの生息域は地理的に重複し、またシマウマの体毛は極端に短く吸血が容易であるにもかかわらず、ツェツェバエの体内からシマウマの血液がほとんど検出されないこと、ツェツェバエは色彩が均一な面を好んで着地しシマウマのような模様のある面は避ける傾向にあることが実験により確認されたこと等により、吸血性ハエの被害からの防御と縞模様との関係は「きわめて高い」と結論づけた。
生態[編集]
ヌー、トムソンガゼル、トピなどのレイヨウ類、キリン、ダチョウなどと混群をなすことがある。
シマウマは加齢に伴い気性が荒くなる。また人間になつくことはほとんど無く、騎乗や運搬用に馴致することが困難である。アフリカでは輸入した馬に病気が多発するため、19世紀からヨーロッパ人による現地のシマウマの家畜化がたびたび試みられたが、成功した例は少ない。
分類と系統[編集]
系統[編集]
シマウマ3種の系統は以下のようになる[1]。
ウマ属 |
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ウマ属の亜属分類では、グレビーシマウマを Dolichohippus 亜属、他の2種を Hippotigris 亜属に分類するが、実際はグレビーシマウマとサバンナシマウマが近縁であり、亜属分類は系統的ではない。
亜種[編集]
サバンナシマウマとヤマシマウマは、さらに、次のような亜種に分かれる。
- グレビーシマウマ Equus grevyi
- サバンナシマウマ Equus quagga
- †クアッガ Equus quagga quagga
- バーチェルサバンナシマウマ Equus quagga burchellii
- グラントシマウマ Equus quagga boehmi
- セルーシマウマ Equus quagga borensis
- チャップマンシマウマ Equus quagga chapmani
- クロウシェイズシマウマ Equus quagga crawshayi
- ヤマシマウマ Equus zebra
- ケープヤマシマウマ Equus zebra zebra
- ハートマンヤマシマウマ Equus zebra hartmannae
かつてはクアッガは他のサバンナシマウマと別種とされており、サバンナシマウマの種名は Equus burchelli だった。
2004年、ケープヤマシマウマとハートマンヤマシマウマを別種とする説がグローヴズとベルにより提唱された[7]が、分子系統では否定された[8]。
- グレビーシマウマ
- 最大のシマウマ。ケニア北部からエチオピア、ソマリアにかけて生息している。他のシマウマに比べ、細かい縞がたくさんある。
- クアッガ
- 近代の絶滅種。頭部、首および肩だけに縞のあるシマウマだったが、乱獲により1880年ごろ野生では絶滅した。アムステルダム動物園で飼育されていた最後の一頭も1883年に死亡し、剥製でしかその姿を見ることはできない。
- バーチェルサバンナシマウマ
- 1918年に絶滅したと考えられていたが、2004年に再発見された。
- ケープヤマシマウマ
- シマウマの中では最も小型の亜種。南アフリカの山地に生息している。腰から尾にかけてハシゴ状の縞模様がある。
シマウマの文化[編集]
ゼブラゾーン[編集]
横断歩道や導流帯を、その縞模様から「ゼブラゾーン」と呼ぶことがある。ボールペンなどを製造するゼブラでは、コマーシャルで「ゼブラゾーンを渡りましょう」という台詞を流していたことがある。
シマウマをテーマとした作品[編集]
- NHK教育『おかあさんといっしょ』では、シマウマを題材とした『しまうまグルグル』(作詞:遠藤幸三 作曲:乾裕樹)という童謡が放送された。この曲を録音した歌手:林アキラ、森みゆき、坂田おさむほか
- 牧場で拾われたシマウマが、競走馬として走ることを夢見るアニメーション映画『レーシング・ストライプス』(2005年、日本での配給:松竹・ギャガ・ヒューマックス)がある。
ギャラリー[編集]
出典[編集]
- ^ a b Steiner, C. C.; Mitelberg, A.; Tursi; Ryder, O. A. (2012), “Molecular phylogeny of extant equids and effects of ancestral polymorphism in resolving species-level phylogenies.”, Mol Phylogenet Evol. 65 (2), doi:10.1016/j.ympev.2012.07.010.
- ^ Zebra Stripes through the Eyes of Their Predators, Zebras, and Humans (Amanda D. Melin, Donald W.Kline, Chihiro Hiramatsu, Tim Caro,PLOS ONE(Jan. 22, 2016))
- ^ http://www.nationalgeographic.co.jp/animals/mammals/zebra.html
- ^ Thermoregulatory Postures and Orientation to the Sun: A Mechanistic Evaluation for the Zebra-Tailed Lizard, Callisaurus draconoides(Allan Muth,Copeia,Vol. 1977, No. 4(Nov. 25, 1977), pp. 710-720 Published by: American Society of Ichthyologists and Herpetologists(ASIH))
- ^ 第524回 白黒つけます!シマウマの謎 ちなみに天敵攪乱説が誤りであることについても、Melinらとの論文の共同執筆者の九州大学の平松千尋が番組に出演し紹介した
- ^ http://www.nature.com/articles/ncomms4535
- ^ Groves, C. P. & Bell, H. B. 2004. New investigations on the taxonomy of the zebras genus Equus, subgenus Hippotigris. Mammalian Biology. 69: 182-196. abstract online
- ^ Moodley, Y. & Harley, E. H. 2005 Population structuring in mountain zebras (Equus zebra): the molecular consequences of divergent demographic histories. Conservation Genetics 6: 953–968.