シコふんじゃった。
シコふんじゃった。 | |
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Sumo Do, Sumo Don't | |
監督 | 周防正行 |
脚本 | 周防正行 |
製作 |
平明暘 山本洋 |
出演者 |
本木雅弘 清水美砂 柄本明 竹中直人 田口浩正 |
音楽 |
周防義和 おおたか静流 |
撮影 | 栢野直樹 |
編集 | 菊池純一 |
製作会社 |
大映 キャビン |
配給 | 東宝 |
公開 |
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上映時間 | 105分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
配給収入 | 2.5億円[1] |
『シコふんじゃった。』は、1992年公開の日本映画。監督・脚本は周防正行。主演は本木雅弘。
卒業のための単位と引き換えに、廃部寸前の弱小相撲部に入ることになった大学生の奮闘をコミカルに描いたコメディ映画。第35回ブルーリボン賞作品賞ならびに第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。
映画の公開後、監督の周防自身によって小説版も執筆された。
ストーリー[編集]
教立大学の4年生、山本秋平(本木雅弘)は根っからの遊び人で勉強にはまるで興味がなく、授業は友人の代返頼み。卒論の指導教員である穴山教授(柄本明)の顔も知らぬまま、伯父のコネで一流企業への就職を決めていたが、ある日その穴山教授に呼び出され、卒業に必要な単位がほしかったら一日だけ相撲部員になって試合に出ろと言われる。かつては強豪だった教立大相撲部だが今は弱体化し、廃部の危機に瀕していた。相撲部部長で学生横綱の経験もある穴山は相撲部存続のため、とりあえず大会出場に必要なメンバーを集めようとしていたのである。穴山の研究室に属する大学院生で相撲部マネージャーを務める川村夏子(清水美沙)の頼みもあり、秋平は渋々承諾する。
たった一人の部員である青木(竹中直人)は相撲を愛しているが入部以来一度も勝ったことがない。そこに、単位のため入部した秋平、体型だけで勧誘された運動神経ゼロの田中(田口浩正)、大相撲人気に憧れてやってきた秋平の弟の春雄(宝井誠明)が加わり、かろうじて大会に参加したが誰も勝つことはできない。勝っても負けてもこれで終わりだと思っていた秋平だったが、慰労会でOBの熊田(六平直政)に激しく罵倒されて腹を立て、思わず立ち上がると「勝ってやろうじゃねえか」とたんかを切ってしまう。
秋平と青木は相撲部強化のため、オックスフォード大学ではラグビー選手だったイギリス人留学生スマイリー(ロバート・ホフマン)の勧誘に向かう。日本文化を馬鹿にしているスマイリーは、まわしの下にパンツをはくことを条件に入部する。
一方、巨体の女子学生、正子は春雄に憧れ、志願して二人目の相撲部マネージャーとなる。
夏、一同は穴山の実家で合宿を行うが、地元の小学生相手の練習試合でもさんざんに負け、やはり合宿に来ていた北東学院大学の相撲部員たちにも嘲笑されてしまう。
合宿を契機に俄然やる気になったメンバーたちは猛練習でめきめき力をつけ、学生相撲三部のリーグ戦に出場する。どうしてもまわしの下のパンツを脱ぐ気になれないスマイリーは毎回不戦敗だが他のメンバーが勝利を重ね、とうとう全勝同士で北東学院大と対戦することになる。初戦で春雄が腕を骨折するが、スマイリーがついにパンツを破り捨てて参戦し、青木も入部以来初勝利を挙げ、教立大が勝ち越して優勝する。
一同は大喜びするが、三部リーグ優勝校には二部リーグ最下位校との入れ替え戦が待っていた。しかし春雄が骨折しているためにメンバーが足りない。入れ替え戦は棄権ということになりかけるが、正子が男に扮して出場すると言い出す。
翌日の入れ替え戦で、正子は胸を隠すため身体に包帯とテープを巻いて土俵に上がり、善戦するも敗れる。だが彼女の姿に相撲部員たちは奮起し、再び勝ち越して教立大の二部昇格が決まった。
その後、田中は大学を辞めて大相撲の世界に入ることを決める。スマイリーはイギリスに帰国。正子と春雄はロンドンへ留学することになり、8年生の青木は卒業のため退部する。そんな中、秋平は「もう楽してズルするのはやめだ」と、コネによる就職を辞退し、もう一年相撲部を続ける決意をする。唯一の相撲部員となった秋平が練習所の土俵で四股を踏んでいると夏子が現れ、四股を教えてくれと頼む。二人は向かい合って四股を踏むのだった。
登場人物[編集]
教立大学相撲部[編集]
- 山本秋平:本木雅弘
- 教立大学4年生。コネで大手企業へ内定が決まっていたが、卒業に必要な穴山教授担当の講義の単位を取るためだけに相撲部に入ることになった。勝負強さを買われ、大将を任される。
- 相撲部に入る前は、シーズン・スポーツ愛好会に所属していた。かなりの遊び人で、春雄曰く多くのガールフレンドがいるらしい。
- 昇格後は就職を辞退し、相撲部へ残る。
- 青木富夫:竹中直人
- 教立大学相撲部員。浪人して教立大に入学した8年生で、秋平たちが助っ人で加入するまでは唯一の相撲部員だった。4年間ずっと稽古部屋に住み込んでいる。
- 相撲が好きで知識も豊富だが、公式戦では一度も勝ったことがなかった(緊張して下痢を催すことが一因)。得意技(自称)は猫騙し・内無双・頭捻り。
- 昇格後は無事卒業した。
- 田中豊作:田口浩正
- 教立大学学生。クリスチャン。内気で引っ込み思案な性格で、高校時代まで友達が一人もおらず、人から誘われた経験も無かった。肥満体を見込んだ青木の勧誘を受け、相撲部員となる。
- 体は大きいが気は小さく、立合いではどうしても目を閉じてしまうが、穴山からそれを逆手に取り、体格を活かしてがぶり寄る相撲を教わる。
- 昇格後は砂高部屋に入門する。
- 山本春雄:宝井誠明
- 教立大学学生。秋平の弟。プロレス部に入っていたが、後に「相撲なら女の子にモテそうだから」と言う理由で相撲部に入る。
- かなり細身だが、穴山は春雄の気迫を買っている。女子学生に人気で、追っかけが多数おり、兄・秋平とのコンビで大学リーグの若貴と呼ばれる。
- 昇格後はイギリスへ留学。
- ジョージ・スマイリー:ロバート・ホフマン
- 英国スオックフォード大学からの交換留学生で、ラグビー経験者。クリスチャン。日本の物価が高いため下宿先の家賃を滞納しており、「家賃無料」と言う理由から稽古部屋へ住み込む形で「練習は2時間まで」「廻しの下にパンツを履いてもいい」と言う条件付きで相撲部に加入。
- 相撲部の中では最も体力に恵まれるが、当初は尻を人前に晒すことを頑なに拒否し、稽古では廻しの下にスパッツを着用し、スパッツ着用が認められない公式戦では不戦敗を続けていたが、仲間たちの熱意に促されてスパッツを破り捨てた。
- 昇格後はイギリスへ帰国した。
- 間宮正子:梅本律子
- 春雄に憧れて教立大学相撲部マネージャーとなった。部員顔負けの巨体の持ち主。
- 川村夏子:清水美砂
- 教立大学相撲部マネージャー。相撲部顧問の穴山教授の研究室に属する大学院生。
- 穴山冬吉:柄本明
- 教立大学相撲部の顧問。秋平の卒業論文指導教員でもあり、元学生横綱。秋平に相撲部入部を持ちかける。
その他[編集]
- 堀野達雄:松田勝
- 教立大学アメフト部。秋平とは知り合いで、二部リーグ入れ替え戦のメンバーに助っ人として加わる。
- 倉高(北東のケン):宮坂ひろし
- 北東学院大学相撲部の主将。
- 峰安二郎:村上冬樹
- 教立大学相撲部OB会会長。少々助兵衛である。
- 穴山ゆき:桜むつ子
- 穴山冬吉の母。
- 熊田寅雄:六平直政
- 教立大学相撲部のOB。初戦で全員全敗した秋平たちを慰労会で激しく罵倒した。
- 朝井知恵:水島かおり
- 教立大学相撲部を取材に訪れたリポーター。
- 林:片岡五郎
- 相撲大会の主審。
- 佐藤恒治、みのすけ、小浦一優、大堀浩一(現:大堀こういち)、和田宣房(現:和田圭市)、手塚とおる、三宅弘城、戸田昌宏、今川杉作、飯田和平、秋田宗好ほか
スタッフ[編集]
- 監督・脚本・ノベライゼーション:周防正行
- プロデューサー:桝井省志
- 相撲指導:堀口圭一(立教大学相撲部監督)、ISSEY
- 製作者:山本洋、平明暘
- 企画:島田開、石川勝敏
- 撮影:栢野直樹
- 照明:長田達也
- 美術:部谷京子
- 編集:菊池純一
- 音響効果:東洋音響(佐々木英世)
- 音楽:周防義和、おおたか静流
- 主題歌:おおたか静流「悲しくてやりきれない」「林檎の木の下で」
- チーフ助監督:高野敏幸
- 技斗:深作覚
- エキストラ協力:栃木県小山わんぱく相撲の皆さん、大東文化大学全学応援団、武蔵大学応援団チアリーダー部、関東学生プロレス同盟、慶應ダックス
- 照明協力:石谷ライティングサービス
- 特機:NK特機
- 美術協力:日映美術
- 装飾:京映アーツ
- MA:映広
- ネガ編集:三陽編集室
- 現像:IMAGICA
- スタジオ:日活撮影所、大映スタジオ
- 製作協力:大映映像
受賞[編集]
- 第66回キネマ旬報ベストテン
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- 委員選出日本映画部門第1位/読者選出日本映画部門第1位/監督賞
- 第35回ブルーリボン賞
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- 作品賞/監督賞/主演男優賞
- 第16回日本アカデミー賞
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- 最優秀作品賞/最優秀監督賞/最優秀脚本賞/最優秀主演男優賞/最優秀助演男優賞/優秀助演女優賞
- 第17回報知映画賞
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- 最優秀作品賞/最優秀主演男優賞/最優秀主演女優賞
- 第7回高崎映画祭
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- 最優秀作品賞/最優秀監督賞/最優秀新人賞
- その他
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- 第5回日刊スポーツ映画大賞 作品賞
- 第47回毎日映画コンクール 日本映画大賞
エピソード[編集]
- 周防によると「(他のスポーツが映画の題材になる中、)一般的に相撲はなかなか映画にならない」と言われていたとのことだが、周防は敢えて「モックン(本木雅弘)と相撲」という設定で制作に取り掛かった。本木の起用には前作映画に出てもらい気心の知れていたことに加え、周防の「(元アイドルである)モックンの裸を見せたら女性客がたくさん来るかも」という思惑も少なからずあった。なお、気の弱い力士(青木)役の起用も、本木と同じく最初から竹中が演じる前提で話が進められた[2]。
- 主演の本木雅弘は、周防監督の前作『ファンシイダンス』に続く主役起用であったが、坊主頭の僧侶役の前作に続き、廻し姿を披露した役者根性が高く評価されることになった。
- 舞台となった大学(教立大学)は名前からもわかるように、周防の母校である立教大学がモデルの相撲部がモデルだが、相撲部の場面は立教大学構内では撮影されていない。
- 映画を撮影するにあたり、映画監督の周防正行とプロデューサーの桝井省志は、立教大学相撲部監督(当時)の堀口圭一に様々な相撲関係の人脈の紹介を受けた。柄本明が演じる穴山教授は、元学生横綱の設定であり、本作で相撲指導をつとめた堀口圭一がモデルになっている。周防正行と桝井省志は、堀口圭一の紹介で、東京大学、慶應義塾大学、法政大学などの相撲部も取材した[3]。映画の公開から26年が経過した2018年3月に周防は立教大学相撲部の「名誉監督」に就任した[4]。
- 劇中にはその他にも本日医科大学や北東学院大学、応慶大学、衛防大学、波筑大学、スオックフォード大学など、実在大学の捩りが多く登場する。
- 竹中直人演じる青木富夫の名前は、「突貫小僧」の名で小津安二郎作品に出演した青木富夫にちなむ。竹中はその後の周防監督作品である『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』『舞妓はレディ』『カツベン!』でもこの役名のキャラクターを演じた。
- 冒頭で柄本明演じる穴山が読み上げるジャン・コクトーの相撲観戦記は1936年の来日時のもので、彼のエッセイ『僕の初旅』(Mon Premier voyage)に収録されている。
- 間宮正子役は一般からのオーディションで役者が選ばれた。『週刊明星』、『月刊明星』との合同企画で募集記事を掲載。記事には「映画で本木雅弘と共演出来る」と銘打っていたが、ストーリーや役どころなど具体的な内容は一切記載されていなかった。ただ「極度の肥満体型」「若い女性」のみが応募条件であった。
- 教立大学相撲部が練習試合で子どもと対戦するシーンで使用された土俵は、栃木県小山市の間々田八幡宮のものである[5]。
脚注[編集]
- ^ 「日本映画フリーブッキング作品配給収入」『キネマ旬報』1993年(平成5年)2月下旬号、キネマ旬報社、1993年、 147頁。
- ^ さくらももこのエッセイ「さるのこしかけ」より周防正行+さくらももこによる巻末お楽しみ対談p279
- ^ 周防正行さん特別インタビュー - 立教大学相撲部2018年3月13日
- ^ “立教大相撲部 「シコふんじゃった。」周防正行監督が名誉監督に就任 部員獲得・強化へ「責任感じる」 /東京”. 毎日新聞. (2018年3月20日) 2018年3月21日閲覧。
- ^ “【ロケ地巡りの旅】映画「シコふんじゃった。」奉納相撲やジャガマイタ…市民が集う場 栃木・間々田八幡宮”. MSN産経ニュース. (2013年10月20日). オリジナルの2013年10月24日時点におけるアーカイブ。 2020年4月13日閲覧。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- シコふんじゃった。 - allcinema
- シコふんじゃった。 - KINENOTE
- シコふんじゃった。 - オールムービー(英語)
- シコふんじゃった。 - IMDb(英語)
- 周防正行監督 特別インタビュー「シコふんじゃった。」の秘話と立教大学相撲部