シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ)

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Pierre Monteux(指揮)、Naoum Blinder(ヴァイオリン独奏)、サンフランシスコ交響楽団による演奏(1942年)

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シェヘラザード』(Шехераза́да作品35は、1888年夏に完成されたニコライ・アンドレイェヴィチ・リムスキー=コルサコフ作曲の交響組曲である。千夜一夜物語の語り手、シェヘラザード(シャハラザード、シェエラザード)の物語をテーマとしている。シェヘラザードを象徴する独奏ヴァイオリンの主題が全楽章でみられる。各楽章の表題は本来は付けられていない。作曲途中では付けられていたものの、最終的には『アンタール』のように《交響曲第4番》として聴いてもらうために除去したものといわれている。作者の死後の1910年にミハイル・フォーキンの振付によってバレエ『シェヘラザード』が制作された。

日本での演奏会、録音媒体などでは「シェエラザード」と表記されることが多い。

作曲の経過と初演[編集]

『シェヘラザード』作曲の頃のリムスキー=コルサコフは、全生涯のうちで最も作曲意欲が湧き上がっていた時期にあり、この作品の前に『スペイン奇想曲』、後に『ロシアの復活祭』序曲といった代表作が作曲されている。1888年8月7日に完成したとみられ、同年中にサンクトペテルブルクの交響楽演奏会にて初演された。総譜1889年に出版された。

日本での初演は1925年4月26日歌舞伎座における「日露交歓交響管弦楽演奏会」にて、山田耕筰指揮の日露混成オーケストラによるものが初演と見られている。戦前期の日本では難曲とみられており、第二次世界大戦末期の満州でこの曲を指揮したことがある朝比奈隆によれば、当時としては「マーラー級の大曲」だったという。

演奏時間[編集]

約45分

楽器編成[編集]

ピッコロ
2 フルート(2ndは第2ピッコロの持ち替えを含む)
2 オーボエ
イングリッシュホルン(第2オーボエの持ち替え)
2 クラリネット
2 ファゴット
4 ホルン
2 トランペット
2 トロンボーン
バストロンボーン
チューバ
ティンパニ
タンバリン
バスドラム
スネアドラム
シンバル
トライアングル
タムタム
第1ヴァイオリンSolo, 6Soli, 2Soli含む)
第2ヴァイオリン(6Soli含む)
ヴィオラ
チェロ(Solo含む)
コントラバス(4Soli含む)

構成[編集]

第1楽章《海とシンドバッドの船》(Largo e maestoso—Allegro non troppo)
ホ短調 - ホ長調
力強いユニゾンはシャリアール王の主題、ハープ伴奏の独奏ヴァイオリンがシェヘラザードの主題を示す。これらの序奏が終わったあとに主部となり、うねるような海の様子をよく表す伴奏音型にのって、海の主題、船の主題がつづく。シャリアール王とシェヘラザード王妃の主題が絡み合う。
第2楽章《カランダール王子の物語》(Lento—Andantino—Allegro molto—Con moto)
ロ短調
カランダールとは諸国行脚の苦行僧のこと。シェヘラザードの主題に始まり、ファゴットによる3/8拍子のメロディがカレンダー王の主題を示す。その後、中間部ではトロンボーンやトランペットの力強い響きが特徴的。そしてさまざまな主題が絡み合い、力強く激しく終わる。
第3楽章《若い王子と王女》(Andantino quasi allegretto—Pochissimo più mosso—Come prima—Pochissimo più animato)
ト長調
主部では歌謡的主題をヴァイオリンがゆったりと奏でる。中間部では独特な小太鼓のリズムに乗って、クラリネットが快活な舞曲風の王女の主題を奏する。シェヘラザードの主題を挟みながら、静かにやさしく終わる。
第4楽章《バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲》(Allegro molto—Vivo—Allegro non troppo maestoso)
ホ短調 - ホ長調
1楽章のシャリアール王の主題がテンポ違いで示されたあとに、シェヘラザードの主題がそれを受けるところから始まる。主部となり、バグダッドの「祭り」の主題が6/16拍子で激しく奏でられる。前楽章の各主題も回想されつつ、徐々に曲は盛り上がっていく。その頂点で荒れ狂う波に呑まれる船の難破の場面に変わり、そして穏やかに波が引く描写となり「海」の主題を静かに再現、独奏ヴァイオリンのシェヘラザードの主題を奏して、消え行く様に終結する。


 

代表的な録音[編集]

先行する音楽作品[編集]

『シェヘラザード』は次の作品の影響を受け、あるいはアイディアを取り入れて成立したと言える。

バレエ『シェヘラザード』[編集]

ミハイル・フォーキンとベラ・フォーキナによる『シェヘラザード』(1914年)

本作はロシアの「バレエ・リュス」の振付師、ミハイル・フォーキンレオン・バクストの振付によって同名のバレエ作品に使用されている。1910年パリオペラ座で初演された。バレエの使用は作者の未亡人ナジェージダ・リムスカヤ=コルサコヴァを始め遺族の批判を受けた。しかし「バレエ・リュス」の芸術活動が評価されると、その代表作品であるバレエ『シェヘラザード』もロシア本国でも受け入れられるようになり、ボリショイバレエマリインスキー・バレエなどロシアのバレエ団でも上演されている。

バレエ『シェヘラザード』は『千夜一夜物語』の冒頭、シェヘラザードが夜伽の際にお話をするきっかけになった事件を題材にしたもので(詳細は千夜一夜物語のあらすじ #シャハリヤール王と弟シャハザマーン王との物語を参照)脚本はアレクサンドル・ベノワが、衣装と美術はレオン・バクストが手掛けた。初演時の指揮はニコライ・チェレプニン、主な出演者はイダ・ルビンシュタインヴァーツラフ・ニジンスキーである。

バレエ『シェヘラザード』あらすじ[編集]

シャハリヤール王が狩りで城を留守にしている最中に、彼の愛妾ゾベイダを含む後宮の女奴隷たちは看守のユーマクを買収し、男奴隷部屋のカギを入手する。女奴隷たちは男奴隷たちを解放し、彼らとの逢瀬を楽しむ。ゾベイダもまた「金の奴隷」との逢瀬を楽しむ。そこへ王が帰還。後宮の女たちの不義密通が露見してしまう。王はあらかじめ弟から女たちの留守を利用した不貞の可能性を警告を受けており、今回の狩りでの外出はそれを調べるためのものであった。王は「金の奴隷」を含む男奴隷を皆殺しにする。ゾベイダは悲嘆のあまり短剣で自殺。愛妾の自殺に王は深く悲しむのであった。

その他[編集]

外部リンク[編集]