シェイク・エム・オン・ダウン

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Shake 'Em on Down
ブッカ・ホワイトシングル
A面 "Pinebluff, Arkansas"
リリース
規格 10" 78回転板
録音 シカゴ
1937年9月2日
ジャンル ブルース
時間 <time datetime="2:59">2:59
レーベル Vocalion (Cat. no. 3711)
プロデュース レスター・メルローズ
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シェイク・エム・オン・ダウン (Shake 'Em On Down)」は、ブッカ・ホワイト1937年に吹き込んだデルタ・ブルースの楽曲。ホワイトにとって最もよく知られた曲であり、「シカゴ・ブルースのレパートリーの一部になっている[1]」。

背景[編集]

1930年代ビクター・レコードや、オーケー・レコード (Okeh Records) で数枚の吹き込みを行なった後、ブッカ・ホワイトは、ヴォカリオン・レコード(Vocalion Records) のプロデューサーであったレスター・メルローズ (Lester Melrose) の関心を引いた。1937年、メルローズはホワイトにシカゴでレコードを吹き込む機会を設けたが、ホワイトは銃撃事件に関わったとして逮捕され、2年の実刑判決を受け、悪名高いミシシッピ州州立刑務所 (Mississippi State Penitentiary)、通称「パーチマン監獄農場 (Parchman Prison Farm)」に投獄された。しかし、ホワイトは、一時保釈中に抜け出したか、メルローズによる何らかの手配があって、服役中に「シェイク・エム・オン・ダウン」と「Pinebluff, Arkansas」の2曲を吹き込んだ[1]

オリジナル録音[編集]

シャッフルするリズムにのせて、きわどい歌詞[2]」が歌われる「シェイク・エム・オン・ダウン」は、ホワイトのボーカルとギターに、奏者不明のセカンド・ギターが加わる形で録音された。このオリジナル録音は、キーはE(ホ長調)で、4分の4拍子、中間的なテンポの12小節のブルースであった[3]

「シェイク・エム・オン・ダウン」は、ヒット曲となり、ホワイトは「パーチマン(刑務所)の中でのセレブリティになった[4]」という。「ミシシッピ州の知事がパーチマンを訪問した際、ホワイトは演奏を披露したが、ホワイトはこのとき、知事が既に自分のことを知っていたことに驚いた[4]」という。ホワイトが服役していた2年半ほどの間に生じた大衆の嗜好の変化にもかかわらず、もっぱら「シェイク・エム・オン・ダウン」の力によって、釈放後のホワイトはメルローズのヴォカリオンで、録音を再開することができた[4]

他の録音[編集]

ブッカ・ホワイトの成功の後、「シェイク・エム・オン・ダウン」は何人ものブルースマンによって録音された。ホワイトが付けた曲名で吹き込んだ者もいれば、「Ride 'Em on Down」。「Break 'Em on Down」、「Truck 'Em on Down」などと題名を少しいじった例もあった。ビッグ・ビル・ブルーンジーは、1938年にこの曲を吹き込み (Vocalion 4149)、ホワイト盤よりも「さらに大きなヒットとなった[4]。これに、 トミー・マクレナン (Tommy McClennan)(1939年:Bluebird 8347)、 ビッグ・ジョー・ウィリアムス (Big Joe Williams)(1941年:Bluebird 8969)、 ロバート・ペットウェイ (Robert Petway)(1941年:Bluebird 8838)などが続いた。

ミシシッピ・フレッド・マクダウェル (Mississippi Fred McDowell) は、エレクトリック・スライド・ギターによる演奏をいくつも遺しており、1972年のアルバム『Live in New York』にも、この曲が収められている。

イギリスのロック・バンドであるサヴォイ・ブラウン (Savoy Brown) は、1967年のデビュー・アルバム『Shake Down』のために、この曲を吹き込んだ。

レッド・ツェッペリン1970年の曲「ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー (Hats Off to (Roy) Harper)」は、この曲とよく似た歌詞で歌われている。 レッド・ツェッペリンの1975年の曲「カスタード・パイ (Custard Pie)」にも、同様の歌詞が使われている。

ブラック・クロウズは、「シェイク・エム・オン・ダウン」のライブ演奏を、1992年のアルバム『サザン・ハーモニー (The Southern Harmony And Musical Companion)』に、日本発売盤のみのボーナス・トラックとして収録した。

リコイルは、ブッカ・ホワイトが演奏した「シェイク・エム・オン・ダウン」を加工して、1992年のアルバム『ブラッドライン (Bloodline)』に収録した「エレクトロ・ブルース・フォー・ブッカ・ホワイト (Electro Blues for Bukka White)」に使用し、さらに2000年のシングル「Jezebel」に「Electro Blues for Bukka White (2000 Version)」を収録した。

R・L・バーンサイド (R.L. Burnside) はこの曲を何回も吹き込んでおり、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンと共演した1996年のアルバム『A Ass Pocket of Whiskey』にもこの曲を収録している。

ノース・ミシシッピ・オールスターズ (North Mississippi Allstars) は、グラミー賞の「最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞」にノミネートされた[5]2000年のアルバム『Shake Hands with Shorty』に、この曲を収録している[6]

ローリング・ストーンズが2016年に発売したカバーアルバム『ブルー&ロンサム』にこの曲を収録している。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b Bukka White”. Gale Musician Profiles. Answers.com. 2011年7月17日閲覧。
  2. ^ Humphrey, Mark (1994). The Complete Bukka White (Media notes). Bukka White. Columbia/Legacy. CK 52782。
  3. ^ Burton, Thomas G. (1981). Tom Ashley, Sam McGee, Bukka White: Tennessee Traditional Singers. University of Tennessee Press. p. 173. ISBN 0-87049-260-8 
  4. ^ a b c d Gioia, Ted (2008). Delta Blues. W. W. Norton. pp. 90-93. ISBN 978-0-393-33750-1 
  5. ^ About NMA E.P.K.”. North Mississippi Allstars. 2014年1月19日閲覧。
  6. ^ North Mississippi Allstars / Shake Hands with Shorty - オールミュージック. 2014年1月19日閲覧。