ザイゴンの逆転

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ザイゴンの逆転
The Zygon Inversion
ドクター・フー』のエピソード
2つのオズグッドボックス
話数シーズン9
第8話
監督ダニエル・ネサイム
脚本ピーター・ハーネス英語版
スティーヴン・モファット
制作ピーター・ベネット英語版
音楽マレイ・ゴールド
初放送日イギリスの旗 2015年11月7日
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ドクター・フーのエピソード一覧

ザイゴンの逆転」(ザイゴンのぎゃくてん、原題: "The Zygon Inversion")は、イギリスSFドラマドクター・フー』の第9シリーズ第8話。2015年11月7日に BBC One で初放送された。脚本はピーター・ハーネス英語版、監督はダニエル・ネサイムが担当した。10月31日に放送された「ザイゴンの侵略」との二部作の後編である。

本作では、ドクターのコンパニオンであるクララ・オズワルド(演:ジェナ・ルイーズ・コールマン)の姿に変身したザイゴンのボニーがドクターの乗る大統領専用機を撃墜する。彼女はオズグッドボックスと呼ばれるオブジェクトを利用して2000万人のザイゴンの素顔を露見させ、それに恐怖するであろう人類との戦争勃発を計画する。

連続性[編集]

ケイトは攻撃中のザイゴンから逃れる際に、自らの銃撃を "five rounds rapid" と呼ぶ。これはケイトの父であるレスブリッジ・スチュワート准将が The Dæmons(1971年)で使用したフレーズに似ている[1]

4代目ドクターのコンパニオンであったハリー・サリバン英語版は、前話「ザイゴンの侵略」に引き続き、対ザイゴン用神経ガスZ67開発の協力者として言及されている[1][2]。ドクターはサリバンのことを "the imbecile" と呼んでおり、これは4代目ドクターが「サイバー人間の復讐」にて "Harry Sullivan is an imbecile!" と叫んだことに由来する。当該エピソードでは、サリバンはロックスライドを発動させ、ブービートラップを解除せずにドクターからサイバー爆弾を取り出そうとしていた[3][4]

UNITのブラックアーカイブは「ドクターの日」(2013年)で初登場した。本作ではブラックアーカイブに「死んだ少女」(2015年)のマイア兵のバトルヘルメットが収容されている[1]。ドクターはボタンを押して大量殺人を決行するつもりだったと叫ぶ。これは「ドクターの日」で3人のドクターが集まってタイムロードの終末兵器モメントを起動してタイム・ウォーに終止符を打とうとしたことへの言及である[1]

オズグッドはターディス(TARDIS)という頭字語には別の意味があると述べる。ターディスのスペルのうちDはクラシックシリーズと新シリーズいずれでも "dimension" と "dimensions" の意味が与えられており、それによりターディスという名前には別の意味も存在するようになっている[1]。「もうひとりのドクター」(2008年)では、ジャクソン・レイクがターディス[注 1]について “Tethered Aerial Release Developed In Style” という意味であると説明した[4]。本作では、12代目ドクターはターディスに "Totally And Radically Driving In Space" というさらに別の意味を与えた[5][6]

去り際にドクターはオズグッドに "I'm a very big fan" と告げる。これは「ドクターの日」でオズグッドが11代目ドクターに言った台詞である[7]

他作品への言及[編集]

ドクターの使用したイギリスの国旗のパラシュートは、同様のデザインのパラシュートを広げて崖から飛び降りるジェームズ・ボンドの映画『007 私を愛したスパイ』のオマージュである[8]

ドクターはボニーのことを "Zygella" と呼ぶが、これはナイジェラ・ローソンの名前に由来する[4][9]

ボニーは彼女の革命で創造される "brave new world" についてドクターに問われる。この "brave new world" というフレーズはウィリアム・シェイクスピアの劇『テンペスト』の "O brave new world, that has such people in it." という1文に由来する[1]。また、ドクターは "And I mean that most sincerely" というフレーズをイギリスのテレビ番組 Opportunity Knocks (enから借用している[1]

放送と反応[編集]

Appreciation Index は84[10]、タイムシフト視聴者を加算した視聴者数は603万人に上った[11]

批評家の反応[編集]

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
The A.V. Club英語版A[12]
ペースト8.8[13]
SFX4/5stars[14]
TV Fanatic2.7/5 stars[15]
IndieWire英語版A++[16]
IGN7.9[17]
ニューヨーク・マガジン4/5stars[18]
デイリー・テレグラフ3/5stars[19]
ラジオ・タイムズ5/5stars[20]

「ザイゴンの逆転」は肯定的にレビューされ、カパルディとコールマンの演技やエピソードの政治的テーマが高く評価された。

Slant Magazine のスティーヴン・クーパーは本作が暫定的に第9シリーズで最高のエピソードであるとし、「先週準備された物語へのパワフルな結末だ」と称賛した[21]ペースト誌のマーク・ローズマンは「スタンダードな異星人の侵略のプロットラインから、戦争とその究極の無駄さの教科書に変わった」ことを称賛した。彼はボニーを演じるコールマンの演技を称賛し、カパルディの演技についても「ピーター・カパルディのような俳優が主役の役を引き受け、それを自分のものにしてくれたことがどれほど幸運なことか、しっかりと思い出させてくれる」と賛辞の言葉を送った。本作に彼が付けた評価は8.8点であった[13]IndieWire英語版のケイト・ウェルシュはA++の評価を付け、「前回のエピソードよりも政治的要素があからさまでなく、今週は恥ずかしいほどに豊富であった」と述べた。彼女はコールマンの演技について、「優にジェナ・コールマンの別れのプレゼントにもなり得る」と称賛した[16]

ガーディアン紙のダン・マーティンも本作を称賛し、特にエピソードの終盤にあったドクターの反戦演説を高く評価した。彼はドクターについて「かつてないほどに良く書かれ、トム・ベイカーと繋がっている」と評価した。彼は、このエピソードが行った「現代寓話のようなものを試みるのは危険なゲームだった」と述べたが、彼はすぐにこのエピソードが「場外ホームランを打った」と感じたという[22]The A.V. Club英語版のアラスデア・ウィルキンスは本作に第9シリーズで三度目のA評価を与えた。彼は「『ザイゴンの逆転』のクライマックスは、最高の『ドクター・フー』の反戦物語が常に理解してきたことを明らかにしている。戦争の狂気を描くのに壮大なスケールは必要ない。どちらかと言えば、焦点を単一の紛争や道徳的ジレンマに絞ることで、暴力的な紛争の本質的な無益さが明らかになるのだ」と述べてレビューを始め、「シンプルな設定ゆえに、この二部作は戦争に反対する番組史上最強の声明の1つになっている。それはドクターが上から目線で私たちに異議を唱えるのではなく、自身の経験した痛みを他の誰にも知ってほしくないからだ」と締め括った[12]

航空機墜落事件[編集]

本作はエジプトコガリムアビア航空9268便墜落事件の1週間後に放送されたため、冒頭での大統領専用機撃墜に関してOfcomに31件の苦情が寄せられた。事故の直後に当該シーンを放送するのは不適切だと主張する視聴者がいた一方、Ofcomはこの一件に関する調査を行わないことを決定した。規制当局は「『ドクター・フー』のSF性とストーリーラインは最近の出来事とは十分に区別されている」と結論づけた[23]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、彼の所有するターディスは本物のターディスではなく熱気球であった。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g The Zygon Inversion: The Fact File”. BBC. 2020年10月4日閲覧。
  2. ^ The Zygon Inversion: Hints & Teasers (Set #2)”. doctorwhotv.co.uk (2015年11月6日). 2020年10月4日閲覧。
  3. ^ Pete Dillon-Trenchard (2015年11月7日). “Doctor Who series 9: geeky spots in The Zygon Inversion”. デン・オブ・ギーク. 2020年10月4日閲覧。
  4. ^ a b c 'Doctor Who': 10 Things You May Not Know About 'The Zygon Inversion'”. bBCアメリカ. 2020年10月4日閲覧。
  5. ^ Dave Golder. “MCM BUZZ – Movies, TV, Comics, Gaming, Anime, Cosplay News & Reviews » Doctor Who S09E08 "The Zygon Inversion" REVIEW”. MCM BUZZ – Movies, TV, Comics, Gaming, Anime, Cosplay News & Reviews. 2015年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月4日閲覧。
  6. ^ Kelly Connolly (2015年11月8日). “Doctor Who recap: The Zygon Inversion”. ew.com. 2020年10月4日閲覧。
  7. ^ 12 Great Moments From The Zygon Inversion (Part 1) ”. doctorwhotv.co.uk (2015年11月8日). 2020年10月4日閲覧。
  8. ^ Paul Jones (2015年11月7日). “Did you spot the James Bond reference in Doctor Who The Zygon Inversion?”. ラジオ・タイムズ. 2015年11月7日閲覧。
  9. ^ Pete Dillon-Trenchard (2015年11月7日). “Doctor Who: The Zygon Inversion reference guide”. デン・オブ・ギーク. 2016年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月4日閲覧。
  10. ^ The Zygon Inversion – AI:84”. Doctor Who News (2015年11月9日). 2020年10月4日閲覧。
  11. ^ Doctor Who Guide: The Zygon Inversion”. Doctor Who Guide. 2015年11月16日閲覧。
  12. ^ a b Doctor Who makes its closing argument against war”. The A.V. Club (2015年11月7日). 2015年11月22日閲覧。
  13. ^ a b Mark Rozeman (2015年11月8日). “Doctor Who Review: The Zygon Inversion”. Paste Magazine. 2020年10月5日閲覧。
  14. ^ Richard Edwards (2015年11月7日). “Doctor Who S9.08 – "The Zygon Inversion" review”. GamesRadar+. 2020年10月4日閲覧。
  15. ^ Henry A. Otero (2015年11月7日). “Doctor Who Season 9 Episode 8 Review: The Zygon Inversion”. TV Fanatic. 2020年10月5日閲覧。
  16. ^ a b Kaite Welsh (2015年11月7日). “Review: ‘Doctor Who’ Season 9 Episode 8, ‘The Zygon Inversion,’ Faces Truth and Consequences”. IndieWire. 2020年10月5日閲覧。
  17. ^ Scott Collura (2015年11月7日). “Doctor Who: "The Zygon Inversion" Review”. IGN. 2020年10月5日閲覧。
  18. ^ Ross Ruediger (2015年11月7日). “Doctor Who Recap: The Bonnie Situation”. Vulture. 2020年10月5日閲覧。
  19. ^ Tim Martin (2015年11月9日). “Doctor Who: The Zygon Inversion: 6 things we learnt, plus a sneak peek at next week's episode”. Telegraph.co.uk. 2020年10月5日閲覧。
  20. ^ Patrick Mulkern (2015年11月7日). “Doctor Who series 9 episode 8 review: Peter Capaldi triumphs in a soul-searching peace negotiation for our times”. ラジオ・タイムズ. 2020年10月5日閲覧。
  21. ^ Steven Cooper (2015年11月9日). “Doctor Who Recap: Season 9, Episode 8, “The Zygon Inversion””. Slant Magazine. 2020年10月5日閲覧。
  22. ^ Doctor Who series 35, episode eight: The Zygon Inversion”. ガーディアン. Dan Martin. 2015年11月22日閲覧。
  23. ^ Sweney, Mark (2015年11月23日). “Doctor Who cleared over 'insensitive' airliner scene despite 31 complaints”. ガーディアン (Guardian Media Group). https://www.theguardian.com/media/2015/nov/23/doctor-who-cleared-by-ofcom-airliner-the-zygon-inversion?subid=15276612&CMP=ema_546 2015年11月28日閲覧。 

外部リンク[編集]