サーキットブレーカー制度

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サーキットブレーカー制度(サーキットブレーカーせいど、Circuit Breaker)とは、株式市場や先物取引において価格が一定以上の変動を起こした場合に、強制的に取引を止めるなどの措置をとる制度である。

概説[編集]

株式市場などでは、売りが売りを呼んで下落が止まらなくなることがあり、値動きが一定の幅になったら取引を強制的に止めて、投資家に冷静になってもらう目的で設けられた制度である[1][2]。電流が流れ過ぎた時に、発熱などを食い止める電源を落とす電気回路の遮断器(サーキットブレーカー)と似ている制度であるため、このように呼ばれる[1]

1987年10月19日に、米国市場最大規模の暴落となった「ブラックマンデー」をきっかけに、ニューヨーク証券取引所で始まった[1]。このときは1日で株価が22パーセントも値下がりしたため、行き過ぎた下落を防ごうと考え出された[1]。日米欧や韓国などの先進国の株式市場は一般的に導入している[1][2]。ただし日本のサーキットブレーカー制度は、先物とオプションにのみ適用され、現物株式は対象外とされる[2]

日本のサーキットブレーカー制度[編集]

金融先物市場[編集]

東京証券取引所大阪証券取引所では、1994年2月14日から導入されている。

先物価格が基準値に応じた一定の変動幅を超えて上昇または下落した場合、取引を10分間中断する(ただし、東京証券取引所の場合は11時15分から前場終了時までおよび14時45分から後場終了時まで、大阪証券取引所の場合は14時45分から日中立会終了時までおよび23時からイブニング・セッション終了時までの時間帯は発動しない)。なお、東京証券取引所では制限値幅は2段階、大阪証券取引所では3段階に設定されている。
先物価格が基準価格(前日清算価格)から2円以上変動した場合に、取引を15分間中断する(ただし、14時35分以降の場合は発動しない)。なお、発動は1営業日中に一度である。
おもな発動事例
  • 2001年9月12日 - アメリカ同時多発テロ事件翌日。アメリカの国内取引が全て中止になった煽りを受け、株価が大きく値を下げ、日経平均先物(大証)の取引が中断。
  • 2008年
    • 9月16日 - 国債先物の取引が中断。リーマン・ブラザーズの経営破たんを受けてアメリカの金融システムの不安が増幅してリーマン・ショックが起こり、先物を中心に大きく買われる展開となったため。
    • 10月10日 - 世界的な金融不安で、9日のニューヨーク市場のダウ平均株価が9,000ドルを割ったこと(8,579.19ドル)などを受け、株の売り注文が殺到したため、TOPIX先物(東証)・日経平均先物(大証)の取引を中断。
    • 10月14日 - 世界各国の政府と中央銀行が発表した金融不安の回避策が好感され、世界的に株価が反騰した影響を受け、株の買い注文が殺到。取引開始直後に前週末比1,310円高の9,330円をつけた直後に、日経平均先物(大証)の取引を中断。
    • 10月16日 - 前日のニューヨーク市場のダウ平均株価が史上2番目の下げ幅(733.08ドル安)をつけ9,000ドルを再び割ったこと(終値8,577.91ドル)などを受け、株の売り注文が殺到。取引開始直後に日経平均先物(大証)の取引を中断。
  • 2011年
  • 2013年
    • 5月23日 - 日経平均先物(大証)でレギュラー・セッション(ザラバ) 14時28分〜14時43分(通常時制限値幅)の中断及びクロージング・オークション(第一次拡大時制限値幅)の板寄せ不成立の合計2回発動。「アベノミクス」への期待による、5月からの過熱気味な急ピッチな上昇の反動などにより、売りが殺到した。
  • 2016年
    • 2月9日 - 日経平均先物(東証)は、日経平均VI先物取引について、午後0時36分12秒から同0時46分12秒(通常時制限値幅)の間。日本銀行のマイナス金利を受けて、長期金利がマイナスになり売り注文が殺到。

商品先物市場[編集]

東京商品取引所におけるCB制度は、設定した幅外で対当した限月ごとにCBを発動させる運用である(2011年12月30日までのCBの運用については、6限月のうち1限月でも設定した幅外で対当した場合、全限月でCBを発動(限月間連動)させていた)。

先物価格が毎月設定される一定の変動幅を超えて上昇または下落した場合、取引を5分間中断する。なお、商品ごとに変動幅が異なって設定されている。

  1. CB発動の規定回数までは、CB発動時刻から5分間立会を中断し、また、立会再開時はCB幅を拡張し(直前のCB幅に拡大値幅を加算した幅とする)、立会を開始する。
  2. 規定回数超過以降は、CB幅を拡張せず、 CB発動時刻から5分間中断した後、立会を開始する。ただし、本取引所が必要と認めるときは、中断時間及び拡大値幅を変更することがある。

なお規定回数は、小豆が1回、大豆・とうもろこし・粗糖が2回、左記以外の商品が3回である。

サイドカー[編集]

サイドカー(Side car)は、サーキットブレーカー制度の一種だが、取引を完全に中断するのではなく、一部の取引に制限を加えるもの。

各国の株式市場におけるサーキットブレーカー制度[編集]

中国の株式市場[編集]

中華人民共和国では、サーキットブレーカー制度を2016年1月4日から導入した[2]2015年夏に上海株式市場が急落したことを教訓に、中国証券監督当局が導入を決めた[2]。中国の代表的な株式指数の1つである「CSI300」の変動幅が前日比で5パーセントを超えると全ての株式と先物の売買を15分間止める[2]。同じく変動幅が前日比で7パーセントを超えると、その日の売買は全て停止される制度である[2]。日本のサーキットブレーカー制度が先物とオプションのみに適用され、現物株式については対象外となっているのに対して、中国の制度は現物株式についても適用される点で特徴的である[2]。「取引が止まる」と焦った投資家が株を売ることにより、余計に値下がりがしやすくなったとも指摘がある[1]

中国におけるサーキットブレーカー制度は、制度導入の初日である2016年1月4日に「CSI300」が7パーセント下落したため、早速発動がされるという世界的にも異例の事態となった[5]。さらに中国株式監督当局は、この前年の2015年7月に株価の下落を食い止めるため上場企業の大株主に持ち株を売ることを半年間禁じていた[5]。この期限が2016年1月8日に切れるため、「大量の株が売りに出される」と市場の不安要因になっている。中国証券監督管理委員会は1月5日の取引開始前に、大株主による株売却について「市場への打撃を避けるため、規制を今作っている」との緊急声明を発表し、市場心理を落ち着かせることを狙った[5]。しかし、5日の市場では上海総合株価指数が対前日比で0.26パーセント下落し、3営業日連続で下落した[5]。さらに1月4日に引き続き、1月7日にも同制度が発動された[1]。しかし、7日深夜中国の証券当局は、サーキットブレーカー制度発動の一時見合わせを発表した[6]

2015年以降中国の株式市場は混乱が続き、同年前半は急騰したのち同年6月以降急落し、証券監督当局は強引な株価の下支え策を繰り出したが、逆に市場の信頼を失う結果を招いた[7]。そののち、2016年1月に株価の急変を防ぐために本「サーキットブレーカー」制度を導入したものの、すぐに制度の撤回に追い込まれた[7]。中国政府は中国証券監督管理委員会のトップである肖鋼・主席を更迭した。本制度の撤回をはじめとする一連の事態により、指導部内で肖主席の手腕に対する不満が高まり、異例の更迭に結び付いた[7]

アメリカ・シカゴ市場[編集]

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では、S&P 500先物が前日終値よりも12ポイント以上下落した場合、プログラム取引に基づく成り行き注文の執行を5分間停止する。

韓国市場[編集]

韓国証券先物取引所では、総合株価指数(KOSPI)及びKOSDAQ指数の先物が基準価格から1分間以上にわたり5%以上乖離した場合に、プログラム売買を5分間停止する。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 朝日新聞 2016年1月8日朝刊第2面「いちからわかる!」
  2. ^ a b c d e f g h 日本経済新聞 2016年1月5日朝刊3面「きょうのことば」
  3. ^ “ドキュメント東京市場 日銀、市場と駆け引き”. 日経QUICKニュース. (2011年3月14日). http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C9381949EE3E6E296838DE3E6E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C9381949EE3E6E296878DE3E6E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2 2011年3月15日閲覧。 
  4. ^ “日経平均が大幅続落、原発事故への懸念強まる”. ロイター. (2011年3月15日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20041120110315?sp=true 2011年3月15日閲覧。 
  5. ^ a b c d 朝日新聞 2016年1月6日第8面「中国株続落なお不安材料」
  6. ^ 朝日新聞 2016年1月8日第1面「東証、年明け5日続落 戦後初」
  7. ^ a b c 朝日新聞(2016年2月21日)朝刊第7面「証券監督トップ更迭 中国政府、市場混乱で」

関連項目[編集]

外部リンク[編集]