メロンパン
メロンパンとは、日本発祥の菓子パンの一種。パン生地の上に甘いビスケット生地(クッキー生地)をのせて焼いたパンである。
ビスケット生地は他のパンに見られないほどに分厚く広範囲を覆っており、このパンの最大の特徴であるとされる。主に紡錘形のタイプと円形のタイプとそれ以外の形のタイプに分かれる。近畿地方と四国地方の一部、中国地方の一部では円形のメロンパンをサンライズと呼称する習慣がある[注 1]。
名称の由来[編集]
名前の由来は以下の通りいくつかの説があり、どれが正しいのかは不明である。
- 表面のビスケット生地に数本の筋や格子状の溝が入れてある外見が、マスクメロンの模様に似ているため。現在はこの説が主流である。
- 「メレンゲパン」が訛ってメロンパンになった。
- 紡錘形の形状と、表面に数本の溝が入れてある様が、メロン(マクワウリ)に似ているため。
- 業務用調理器具「メロン型[2][3]」を使用して成型したパンだから。
なお、後に実際にメロンを原材料に加えた商品も登場しているが、これはスタイルに名称が追いついた例であり、命名された理由とは無関係である。
歴史[編集]
起源[編集]
1910年にアルメニア人のパン職人イワン・サゴヤンがフランスの焼き菓子ガレットを元に発明したという説がある。満州のハルビンのホテルニューハルビンから大倉喜八郎が帝国ホテルに引き抜いたイワン・サゴヤンは、ロシア帝国のロマノフ皇帝家の元宮廷料理人であったため、フランスパンとウィーン風パン(ドイツパン)両方の製法に精通していた。そうした様々な技法や食感のパンを組み合わせるロシアの伝統から、メロンパンは生まれたとされる[4]。
その他、駒込木村屋の店主・三代川菊次による、新しい菓子パンの実用新案登録(昭和5年)が製法や形状が現在のメロンパンに類似しており、これをルーツとする説がある。他にアメリカ経由で日本に入ってきたメキシコの菓子「コンチャ」とも、ドイツの菓子「ストロイゼルクーヘン 」とも言われている。また、香港や台湾には「菠蘿包」(パイナップルパン)と呼ばれるメロンパンに酷似したパンが存在し、起源を同じくすると考えられる。
紡錘形のメロンパン[編集]
コープこうべによると、1952年に同組合の前身である神戸消費組合のパン職人がオムライス用のキャップを見てひらめいたのが紡錘形メロンパンの始まりだという。円形のものとは違ってビスケット生地は使わず、中にはマーガリンを加えた白餡が入っている[5][6]。洋食店などで使われるライスを成型するのに用いる食型で成型して焼き上げていたため、この当時のメロンパンはアーモンドを縦に割ったような紡錘形をしていた。上に乗ったビスケット生地の表面には数本の溝が付き、この形が、メロンの亜種であり、当時「メロン」として売られていたマクワウリに似ていることからメロンパンという名で呼ばれるようになった。神戸や京都などで売られているものは、中には白餡が入っている[7]。令和になっても白餡入り紡錘形のタイプは製造販売されており、大阪府下のスーパーなどの小売店でも、兵庫県内の工場で大量生産された物やビスケット生地を乗せたものも含め、販売されている例は少なくない[要出典]。
広島県呉市では、第二次世界大戦前から、カスタードクリーム入りのメロンパンも作られている[8]。また昭和11年(1936年)創業の呉市の老舗パン店「メロンパン」[9]への取材からは、かつて業務用調理器具「メロン型」(洋食のランチに添えるライスを成型するための金属製で紡錘形のライス抜き型の通称)を使ってパン生地を成型していたので、メロンパンと命名されたと推察される[10]。
円形のメロンパン[編集]
1930年代に、日の出の形を真似て、円形で上にビスケット生地を乗せたパン、サンライズが誕生した[11]。神戸に本店のある金生堂の呉支店が軍艦旗の放射状の線を付けていたことからサンライズと呼称した。放射状の線より格子状の線が付けやすいので、現在の形になった。これが一般化するにつれ、旧来の紡錘形のメロンパンは次第に姿を消していった。また、大正時代に入りマスクメロンが日本に輸入されるようになると、「メロン」という言葉で丸いマスクメロンが連想されるようになる。サンライズと上記のメロンパンは別物だったが、マスクメロンに形が似ているサンライズも混同されてメロンパンと呼ばれるようになった。大手の製パン業者もこれに倣い、それまでサンライズという名で製造していたものをメロンパンと改めた。
2000年以降では、自動車を使っての屋台方式で円形のメロンパンのみを実演販売する専門店が増えている[12]。
近畿地方(大阪地域は含まず)の一部店舗では、現在でも円形のサンライズと紡錘形のメロンパンの両方が製造・販売されている。また、神戸や京都などではサンライズを「サンライス」と呼ぶ人も少なくない[13]。
他方、アンデルセンやリトルマーメイドは本社を広島県に持つため、「サンライズ」が販売されている。
その他のメロンパン(その他の形)[編集]
その他にも、円形のものを中心としたメロンパンの変種が次々と作られる中で、中にはメロンの形とは全く無関係の長方形や楕円形などの形をしたメロンパンも登場している。富士山型のメロンパンもある。また、表面にビスケット生地が乗せられてはいるものの、平行線が付けられているなどメロンの表面の模様を全くイメージしていないものも多い。 また、円形の物が亀甲をイメージしやすいのと語呂合わせの容易さから、頭・四肢・尾を付けた【カメロンパン】がある。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 食べ物日本地図 - メロンパンとサンライズの呼称による日本地図
- ^ 昭和のレトロな金物屋 関口国吉商店 昔懐かしの アルミライス型 メロン型 (2018年2月20日閲覧)
- ^ 前川金属工業所・製品情報・キッチンツール・ライス型・メロン型 (2018年2月20日閲覧)
- ^ The Armenian Who Invented the Japanese Sweet Bun - The Armenian Mirror-Spectator
- ^ “ハイカラメロンパンのあの形の誕生物語”. コープこうべネット. 生活協同組合コープこうべ. 2014年10月22日閲覧。
- ^ “メロンパン 神戸ではなぜ「サンライズ」?”. 神戸新聞NEXT. 神戸新聞. 2016年10月12日閲覧。
- ^ 「週間トマト&テレビ京都」(京都新聞:2011年1月14日発行)
- ^ Itoh, Mika (2010年8月13日). “呉のメロンパン はズッシリ重い!旧日本海軍も愛した呉の名物パン”. 「広島ニュース 食べタインジャー」. DiamondLife合同会社. 2014年10月22日閲覧。
- ^ メロンパン (広島県呉市に本店があるパン屋の店名)
- ^ 澁川祐子 (2013年3月8日). “固い皮の中は謎だらけ、「メロンパン」の形はどこからやって来たのか”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2018年2月19日閲覧。
- ^ 澁川祐子 2013, p. 127.
- ^ 澁川祐子 2013, p. 128.
- ^ “メロンパン 神戸ではなぜ「サンライズ」?”. 神戸新聞. 2018年4月6日閲覧。
参考文献[編集]
- 澁川祐子 『ニッポン定番メニュー事始め』 彩流社、2013年。ISBN 978-4-7791-1934-7。
- 締木信太郎 『パンの百科』 中央公論社〈中公文庫〉、1980年。全国書誌番号:81010504。
- 東嶋和子 『メロンパンの真実』 講談社、2004年。ISBN 4-06-212278-2。