サンダーチャイルド

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サンダーチャイルドHMS Thunder Child)は、H・G・ウェルズSF小説宇宙戦争』に登場する架空の軍艦である。艦名は「雷震子」の意。

概要[編集]

イギリス海軍水雷衝角艦(Torpedo-ram)[1]。水雷衝角艦とは、衝角魚雷発射管を融合させた「水雷衝角」を艦首に装備した小型高速の艦艇のことで、具体的なスペック、武装などは劇中に描かれていないため不明であるが、2本煙突を持ち、武装として水雷衝角と砲填兵装を有している。モデルとなった艦は、用途や挿絵などから水雷衝角艦「ポリフィーマス」(en:HMS Polyphemus (1881))やアラガント級防護巡洋艦などであると推測できる。また、『ザ・カウントダウン 地球大戦争』ではハヴォック級駆逐艦en:Havock-class destroyer)、『Jeff Wayne's Musical Version of The War of the Worlds(英語)』ではカノーパス級戦艦として描かれている。

なお、実際の水雷衝角艦は実戦においては使い物にならず、とくに敵艦への衝角突撃など非現実的だと判断され、主に魚雷の運用試験にのみ用いられていた[2]。サンダーチャイルド自体も、衝角内の魚雷発射管を使用する描写は見られない。

劇中での活躍[編集]

トライポッドに衝角攻撃を行うサンダーチャイルド

サンダーチャイルドの戦いは、主人公が避難民の一人だった弟から又聞きした話として描写される。

サンダーチャイルドは20世紀初頭に起こった火星人の地球侵略時、イギリスからヨーロッパ本土への避難民を乗せた船団の護衛のためにエセックス沖で警備任務に就いていた。6月の水曜日の午後、ファウルネス方面から火星人のトライポッドが3台出現し、船団の出港を阻止するコースを取りつつ進行。この時点で海軍の他の艦艇はテムズ川の河口付近に展開しており、トライポッドから船団を守ることが出来るのはサンダーチャイルドのみだった。

駆けつけたサンダーチャイルドは、トライポッドの至近距離に到達するまで一切発砲せずに全速力で突進した。この行動は火星人を混乱させたようで、ようやく1台のトライポッドがガス弾を発射した時には、サンダーチャイルドは既に船団とトライポッドとのほぼ中間点にまで達していた。サンダーチャイルドはガス弾をもろに喰らったものの、その勢いを少しも衰えさせることなくなおも突撃を敢行した。トライポッドは陸地へ退却を始めながらも熱線で反撃。熱線によって生じた水蒸気がサンダーチャイルドの姿を隠し、サンダーチャイルドは撃沈されたかに思われた。

だが、外部こそ炎に包まれたものの、機関や操舵装置といったサンダーチャイルドの中枢部は無事であった。熱線を発射したトライポッドにそのまま突撃し、衝角攻撃と砲撃によって撃破したサンダーチャイルドは、攻撃対象を第2のトライポッドに変え、再びまっしぐらに突撃した。双方の距離が100ヤードに迫った時、トライポッドが熱線を発射。熱線の直撃によって甲板や煙突が吹き飛び、大破したサンダーチャイルドだったが、船体は慣性によってなおも前進、2台目のトライポッドに激突し、これを突き沈めた。3台目のトライポッドは撤退していき、避難船団は無事にヨーロッパへと向かっていった。

なお、その後のサンダーチャイルドの消息安否は「視界が晴れたときには、すでにその姿はなかった」としか描写されておらず、撃沈されたのか、それとも生還を果たしたのかは不明瞭である。

他作品における「サンダーチャイルド」[編集]

サンダーチャイルドはその英雄的な活躍から、他作品に登場する艦艇の艦名として引用されることがある。

スタートレック』シリーズ
アキラ級の二番艦として、『スタートレック ファーストコンタクト』に「U.S.S. サンダーチャイルド」が登場する。
宇宙一の無責任男』シリーズ
吉岡平によるライトノベル。銀河解放同盟の旗艦として宇宙駆逐艦「サンダー・チャイルド」が登場する。
第二次宇宙戦争 マルス1938
伊吹秀明による『宇宙戦争』の続編的作品。撃沈されたサンダーチャイルドの乗員60名のうち3名が生還したとされており、その生き残りの一人であるジョン・トーヴェイ大将の旗艦として、指揮通信機能を強化した改サウサンプトン級軽巡洋艦「サンダー・チャイルド」が登場する。
世界戦艦大和列伝
吉田親司による架空戦記。イギリス海軍が保有する46cm砲搭載の「超Y(ヤマト)級戦艦」として「サンダーチャイルド」が登場する。また、イギリスからオランダ海軍に譲渡された改ピローラス級防護巡洋艦「マウリッツ」の旧名も「サンダーチャイルド」である(衝角もちゃんと有している)。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 日本語版では「衝角駆逐艦」と翻訳されている。
  2. ^ ただし、埠頭への攻撃に水雷衝角が用いられた例はある。