サメによる襲撃
サメによる襲撃 | |
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サメの出現を警告する看板(南アフリカ共和国ソルトロック) | |
概要 | |
症状 | 出血、裂傷 |
原因 | サメ |
危険因子 | サーフィン、嵐、漂流 |
合併症 | 切断、失血、敗血症 |
予防 | シャークバリア、シャークネットなど |
分類および外部参照情報 |
サメによる襲撃(サメによるしゅうげき、英: Shark attack)とは、サメによる人間への攻撃であり、獣害の一種である。
概要
[編集]サメによる襲撃は、毎年世界中で80件ほど報告されている[1]。サメが人間を襲う事例は非常に珍しいが[2][3][4][5]、ニュージャージーサメ襲撃事件や『ジョーズ』をはじめとする映画などの影響で、世界中で恐れられている。しかし、人間を襲う事故はホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種によって引き起こされる場合がほとんどであり[6]、人間に危害を加える恐れのあるサメも30種ほどであるため、500種以上存在するサメのごく一部に過ぎない[7]。ヨゴレも人間を襲撃するとされるが、襲撃は沿岸ではなく外洋で行われるため、残された記録は多くない[8]。なお、サメは通常、小魚や無脊椎動物、アザラシやアシカなどの海獣を食べ、人間を食べることはない。サメによる襲撃は、サメの好奇心や混乱によるものである[9]。
日本近海では、1992年(平成4年)に愛媛県松山市沖の瀬戸内海でタイラギの潜水漁師がホホジロザメに襲われて死亡した事故がきっかけでサメ騒動が発生、潜水漁や海洋工事、レジャーなど多方向に影響をおよぼした[10]。
統計
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地域 | 襲撃件数 | 死亡事故 | 直近の死亡事故 |
---|---|---|---|
アメリカ合衆国[注釈 1] | 1106 | 37 | 2021 |
ハワイ | 137[11] | 11[11] | 2024[12] |
バミューダ諸島 | 3 | 0 | - |
中部アメリカ | 56 | 27 | 2011 |
アンティル諸島、バハマ諸島 | 71 | 17 | 2022 |
南アメリカ | 117 | 26 | 2018[13] |
オーストラリア | 647 | 261 | 2023 |
ニュージーランド | 50 | 10 | 2021 |
オセアニア [注釈 2] | 129 | 50 | 2023 |
アジア | 129 | 48 | 2000 |
ヨーロッパ | 52[14] | 27 | 1989 |
アフリカ | 347 | 95 | 2023 |
レユニオン島 | 39 | 19 | 2019[15] |
不明 | 21 | 7 | 1995 |
総計 | 2900 | 633 | - |
インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル(ISAF)によると、1958年から2016年にかけて世界中で報告されたサメによる襲撃件数は2,785件であり、そのうち439件が死亡事故であった[16]。なお、2001年から2010年の間に、年間平均4.3人がサメによる襲撃で亡くなった[3]。
しかしながら、サメによる襲撃件数の統計をとっていない国も多く、世界中でのサメによる死亡事故件数は依然として不確かである。そのため、実際の負傷者数は分かっていない。
サメによる襲撃件数はアメリカ合衆国が最も多く、平均して年間16件の襲撃事故が発生しており、2年に1人が死亡している[17]。ISAFによると、襲撃はフロリダ州、ハワイ州、カリフォルニア州、テキサス州などの沿岸州で多く発生している[18]。また、死亡事故件数はオーストラリアが最も多く[19]、ダイバーがサメに襲撃されて死亡する事故が多く発生している[20][21]。ただし、アメリカやオーストラリアなどの先進国では、サメによる襲撃事故をより詳細に記録しているため、地域別の統計に偏りが生じている面がある。
対策
[編集]個人の対策
[編集]個人ができる対策としては以下のようなものがある[22]。
- 単独で行動すると襲撃される可能性が高まるため、複数人で行動する。
- 夜中ではなく日中に遊泳する。
- 魚が多く生息する海域を避ける。
- 貴金属は魚の鱗のように反射するため、アクセサリーを身に着けない。
シャークバリア
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シャークバリアは、ビーチの周囲に設置される防壁であり、サメが侵入できない遊泳エリアを形成する[23]。しかし、波が激しい場合にはバリアがうまく機能しないため、サーフビーチでは効果的な対策ではない[24]。
シャークネット
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オーストラリアや南アフリカ共和国では、刺し網の一種であるシャークネットが用いられる。日本では海水浴場にサメが侵入することを防止するため、遊泳区域を囲むように設置される網を「サメよけネット」[25]「サメ防護ネット」[26]と呼称する場合がある。
シャークネットはサメによる襲撃を効果的に減少させる一方、絶滅危惧種のサメの混獲につながるため[27]、環境活動家や科学者などに批判されている[28]。
ドラムライン
[編集]ドラムラインは、釣り針に餌をかけた仕掛けを用いてサメを捕獲する放置式の罠であり、1962年にオーストラリアのクイーンズランド州で初めて導入された。ドラムラインはシャークネットと比較して、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種による襲撃をより効果的に減少させることができる[29]。
その他の対策
[編集]ビーチパトロールや空中哨戒なども行われているが、効果は限定的である[30][31]。また、沿岸部のサメを沖合へと移動させたり、サメに識別タグを付けて追跡したりするなど、様々な対策が行われている。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “Yearly Worldwide Shark Attack Summary”. International Shark Attack File. Florida Museum of Natural History, University of Florida. 2017年11月27日閲覧。 “The 2016 yearly total of 81 unprovoked attacks was on par with our most recent five-year (2011–2015) average of 82 incidents & 11 deaths annually.”
- ^ “ASU shark scientist: Fatal shark attacks 'extremely rare'”. ASU News (2020年8月6日). 2025年1月28日閲覧。
- ^ a b “Shark attacks are rare – and related deaths even rarer”. The Guardian (2011年8月17日). 2025年1月28日閲覧。
- ^ Plumer, Brad (2014年7月8日). “How common are shark attacks, really?”. Vox. 2025年1月28日閲覧。
- ^ “Chart: The animals that are most likely to kill you this summer – The Washington Post”. The Washington Post
- ^ ISAF Statistics on Attacking Species of Shark
- ^ “Species Implicated in Attacks”. 2025年1月27日閲覧。
- ^ Edmonds, Molly (2008年6月5日). “HowStuffWorks "Dangerous Shark 4: Oceanic Whitetip Shark"”. Animals.howstuffworks.com. 2010年9月23日閲覧。
- ^ US Department of Commerce, National Oceanic and Atmospheric Administration. “Are sharks dangerous?” (英語). oceanservice.noaa.gov. 2024年1月4日閲覧。
- ^ 『愛媛新聞』1992年12月15日朝刊第13版社会面4頁「'92えひめ10大ニュース回顧 >1< サメ、瀬戸内海襲う 広い海域に〝神出鬼没〟 レジャーや工事に影響」(愛媛新聞社)
- ^ a b “Incidents List”. Government of Hawaii (2014年6月18日). 2019年5月27日閲覧。
- ^ Lam, Kristin (2019年5月27日). “California man, 65, swimming off Maui killed in Hawaii's first fatal shark attack since 2015”. USA Today (Gannett) 2019年5月27日閲覧。
- ^ “A Teen Died After Losing His Leg and Penis in a Horrific Shark Attack” (2018年6月4日). 2025年1月28日閲覧。
- ^ “Confirmed Unprovoked Shark Attacks (1847–Present). Europe”. Florida Museum of Natural History (2018年1月24日). 2019年5月27日閲覧。
- ^ “Un surfeur tué après une attaque de requin à La Réunion”. BFMTV. (2019年5月9日)
- ^ “World's Confirmed Unprovoked Shark Attacks”. International Shark Attack File (2015年8月25日). 2015年9月10日閲覧。
- ^ “Shark Facts: Attack Stats, Record Swims, More”. News.nationalgeographic.com (2010年10月28日). 2005年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月17日閲覧。
- ^ “Map of United States (incl. Hawaii) Confirmed Unprovoked Shark Attacks”. Flmnh.ufl.edu (2010年8月26日). 2012年2月16日閲覧。
- ^ “WA 'deadiest' for shark attacks – The West Australian”. Au.news.yahoo.com (2012年4月1日). 2012年8月17日閲覧。
- ^ Sprivulis, P (2014). “Western Australian Coastal Shark Bites: A risk assessment”. Australasian Medical Journal 7 (2): 137–42. doi:10.4066/AMJ.2014.2008. PMC 3941575. PMID 24611078 .
- ^ “Shark attacks and whale migration in Western Australia”. 2017年4月25日閲覧。
- ^ “Advice to Swimmers” (英語). Florida Museum (2018年1月24日). 2022年7月3日閲覧。
- ^ Meerman, Ruben (2009年1月16日). “Shark nets”. オリジナルの2016年11月29日時点におけるアーカイブ。 2017年1月5日閲覧。
- ^ “Fact File: Protecting people from shark attacks”. (2015年1月5日)
- ^ 『毎日新聞』1992年6月28日大阪朝刊社会面27頁「囲い切れぬ海 13海水浴場が営業断念 伝統の遠泳も中止に--サメ騒動」(毎日新聞大阪本社) - 1992年の瀬戸内海サメ騒動を受けての記事。
- ^ 『毎日新聞』1992年5月14日大阪朝刊社会面27頁「岡山県渋川海水浴場がサメ対策に網で遊泳区域を“包囲”」(毎日新聞大阪本社)
- ^ “Shark Attacks and the Surfer's Dilemma: Cull or Conserve?” (2015年8月21日). 2017年4月22日閲覧。
- ^ http://www.sharkangels.org/index.php/media/news/157-shark-nets Archived 19 September 2018 at the Wayback Machine. Shark Nets. Sharkangels.org. Retrieved 18 September 2018.
- ^ Dudley, Sheldon F.J.; Haestier, R.C.; Cox, K.R.; Murray, M. (January 1998). “Shark control: Experimental fishing with baited drumlines”. Marine and Freshwater Research 49 (7): 653. doi:10.1071/MF98026.
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- ^ Robbins, William D. (2014). “Experimental evaluation of shark detection rates by aerial observers.”. PLOS ONE 9 (2): e83456. Bibcode: 2014PLoSO...983456R. doi:10.1371/journal.pone.0083456. PMC 3911894. PMID 24498258 .