サイェレット・マトカル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
総司令部偵察部隊
サイェレット・マトカル
Sayeret matkal crest dark post.jpg
サイェレット・マトカルのエンブレム
創設 1957年 – 現在[1][2]
所属政体 イスラエルの旗 イスラエル
所属組織 イスラエル参謀本部諜報局
部隊編制単位 機密扱い
兵種/任務/特性 特殊部隊
コマンド部隊
対テロ作戦
所在地 南部地区, イスラエル
愛称 ザ・ユニット(The Unit), 269部隊, 262部隊
標語 敢えて挑む者が勝つ (Who Dares Wins
上級単位 アマーン 154部隊ヘブライ語版
最終上級単位 アマーン特殊作戦部門ヘブライ語版
主な戦歴 消耗戦争
第四次中東戦争
エンテベ空港奇襲作戦
第1次インティファーダ
レバノン侵攻
ガザ侵攻
テンプレートを表示

総司令部偵察部隊(サイェレット・マトカル、Sayeret Matkalヘブライ語: סיירת מטכ"ל‎)は、イスラエル国防軍(IDF)の特殊部隊[2]。第269部隊としても知られており[1][2]参謀本部諜報局(アマーン)コマンド部隊として組織されたが、実質的に部隊長は参謀総長に直属している[3]

概要[編集]

サイェレット・マトカルの隊員

サイェレット・マトカルは、元々、イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)をモデルとして創設されており、モットーもSASのもの (Who Dares Winsを踏襲している[2]。創設当初の任務は秘密偵察・監視 (Special reconnaissanceだったが、後には対テロ作戦や直接行動 (Direct actionへと拡大されていった[2]。特に1972年サベナ航空572便ハイジャック事件における人質救出作戦は、譲歩せずにハイジャックに立ち向かい、テロと戦ったという点で革新的な作戦であった[1]。ただしこの時点では、サイェレット・マトカルにはハイジャック機での近接戦闘で必要な拳銃の訓練が欠けており、エル・アル航空スカイマーシャルとして拳銃での実戦を経験していたサイェレット・マトカルOBが急遽招集されて[注 1]、突入の先頭を担った[1]

これに続いて、1976年エンテベ空港奇襲作戦では、空挺旅団およびゴラニ旅団とともにエンテベ国際空港強行着陸し、敵地での人質救出作戦を成功させたことで、世界からの称賛を受けた[2]。また1973年ベイルート奇襲作戦では、海軍シャイェテット・13と協同して、パレスチナ解放機構(PLO)幹部への奇襲攻撃を成功させた[2][4]。しかしこの間、全ての作戦が成功したわけではなく、特に1974年のマーロット村事件 (Ma'alot massacreは、アメリカ陸軍デルタフォースにおけるイーグルクロー作戦に比せられるような、部隊の最悪の経験として語り継がれている[2]。この事件では、パレスチナ解放民主戦線(DFLP)によって占拠された小学校においてサイェレット・マトカルが人質救出作戦を実施したものの、狙撃手は犯人のリーダーを一撃で射殺することができず、また突入部隊も誤った階に突入してしまったために隙が生じ、犯人を射殺する前に人質たちに向けて手榴弾が投擲されてしまい、人質28名とサイェレット隊員1名が死亡した[2]

サイェレット・マトカルの隊員候補は、IDFの兵士や予備役兵、徴集兵などから厳選される[3]。小規模部隊ではあるが、元隊員からは、少将数名、参謀総長2名、首相2名など、錚々たる人材が生まれている[3][注 2]。また空軍シャルダグの創設母体となったほか[5]西ドイツ(当時)のGSG-9オーストリアGEKコブラなど、国外の対テロ部隊の創設の際にも支援を提供している[6][7]

在籍していた著名人[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ ここで招集されたモルデハイ・ラハミムはサイェレット・マトカルの予備隊員でもあり、1969年にチューリッヒ空港で地上走行中のエル・アル航空機が待ち伏せ攻撃を受けた事件 (El Al Flight 432において、AK-47で武装したテロリストに対して.22口径のベレッタ拳銃で応戦し、スイス当局の到着まで持ちこたえたことで世界的に有名になっていた[1]
  2. ^ イスラエル国防軍の階級制度においては、各軍種および方面軍司令官でも少将(アルーフ)であり、参謀総長のみが中将(ラヴ・アルーフ)となることができる。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e Bar-Zohar & Mishal 2018, ch.12.
  2. ^ a b c d e f g h i Neville 2020, pp. 173–178.
  3. ^ a b c Ryan, Stillwell & Mann 2004, pp. 37–38.
  4. ^ Bar-Zohar & Mishal 2018, ch.14.
  5. ^ isayeret.com Shaldag Unit Overview
  6. ^ Neville 2019, pp. 100–109.
  7. ^ Neville 2019, pp. 81–84.

参考文献[編集]

  • Bar-Zohar, Michael、Mishal, Nissim 著、上野元美 訳 『秘録イスラエル特殊部隊 中東戦記1948-2014』早川書房、2018年 (原著2015年)。ISBN 978-4152097521 
  • Neville, Leigh 著、茂木作太郎 訳 『欧州対テロ部隊』床井雅美 (監修)、並木書房、2019年 (原著2017年)。ISBN 978-4890633852 
  • Neville, Leigh 著、村上和久 訳 『ヴィジュアル版 世界特殊部隊大全:部隊・装備・戦術』原書房、2020年 (原著2019年)。ISBN 978-4562057986 
  • Ryan, Mike、Stillwell, Alexander、Mann, Chris 著、小林朋則 訳 『ヴィジュアル版 世界の特殊部隊―戦術・歴史・戦略・武器』原書房、2004年 (原著2003年)。ISBN 978-4562037278 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]