コスモス・レッドシフト7

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コスモス・レッドシフト7
Cosmos Redshift 7
コスモス・レッドシフト7の想像図。左上にある赤味を帯びた銀河がC、その右側にあるやや青白く輝く銀河がB、下の一番明るい銀河がAである。
コスモス・レッドシフト7の想像図。左上にある赤味を帯びた銀河がC、その右側にあるやや青白く輝く銀河がB、下の一番明るい銀河がAである。
仮符号・別名 CR7
Galaxy CR7
COSMOS RedShift 7
星座 ろくぶんぎ座
見かけの等級 (mv) 24.62 ± 0.10[1]
分類 原始銀河
発見
発見日 2015年
発見者 VLT
すばる望遠鏡
発見方法 望遠鏡による直接観測
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  10h 00m 58.005s[1]
赤緯 (Dec, δ) +01° 48′ 15.251″[1]
赤方偏移 6.604[1]
距離 ~129億 光年[2] 
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コスモス・レッドシフト7地球から約130億光年離れた位置にある原始銀河である。英名のCosmos Redshift 7の頭文字をとってCR7とよばれることが多い[3]。史上初めて、これまで確認されていなかった種族IIIの恒星が含まれている銀河である。

発見[編集]

コスモス・レッドシフト7はヨーロッパ南天天文台の研究チームがVLTすばる望遠鏡を使って、ろくぶんぎ座の「コスモス・フィールド」という領域内で発見された[1][4]

特徴[編集]

すばる望遠鏡で観測したコスモス・レッドシフト7

コスモス・レッドシフト7は宇宙誕生から約8億年後に存在した銀河であるが、この時代の典型的な銀河よりもはるかに明るいことが大きな特徴である。それまでに発見されていた、距離が同程度の銀河で最も明るい原始銀河、ヒミコの3倍もの明るさを持つ[3]。コスモス・レッドシフト7を発見した研究チームが詳しく観測した結果、コスモス・レッドシフト7からは宇宙初期に存在していた水素ヘリウムしか検出されず、その他の重い元素は検出されなかった[1][3]。これはこの銀河を構成している天体が水素とヘリウムからでしか形成されていないことを表す。これは宇宙の初期に存在したとされている種族IIIの恒星(ファーストスターとも言われる)の特徴と一致する。この観測結果によってコスモス・レッドシフト7に史上初めての種族IIIの恒星が発見された。

その後のハッブル宇宙望遠鏡による観測で、コスモス・レッドシフト7が1つの銀河ではなく、3つの銀河が集まった銀河群であることが明らかになった[1]。この3つの銀河には明るさが大きい順にA、B、Cと名づけられている。この中で、種族IIIの恒星が存在するとされているのはAとBであり、推測ではAだけでも数億個の種族IIIの恒星があると考えられている。Cには種族IIIの恒星は存在しないと考えられている[1]。ただし、Cには種族IIIの恒星の超新星残骸が残っているため、赤味を帯びた銀河とされている[1]

名称[編集]

Cosmos Redshift 7の「Cosmos」は前述のとおり、この銀河がコスモス・フィールドという領域で発見されたことに由来する。「Redshift 7」の「Redshift」は日本語で赤方偏移を意味しており、「7」はこの銀河の赤方偏移の6.604を四捨五入したものである[3]。コスモス・レッドシフト7の略称「CR7」がポルトガルサッカー代表選手のクリスティアーノ・ロナウドの愛称と同じであることから、コスモス・レッドシフト7の発見はスポーツ雑誌でも大きく取り上げられた[5][6]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i David Sobral, Jorryt Matthee, Behnam Darvish; et al. (4 June 2015). "EVIDENCE FOR POPIII-LIKE STELLAR POPULATIONS IN THE MOST LUMINOUS LYMAN-α EMITTERS AT THE EPOCH OF RE-IONISATION: SPECTROSCOPIC CONFIRMATION". arXiv:1504.01734v2 [astro-ph.GA]。
  2. ^ Dennis Overbye (2015年6月17日). “Astronomers Report Finding Earliest Stars That Enriched Cosmos”. ニューヨーク・タイムズ. http://www.nytimes.com/2015/06/18/science/space/astronomers-report-finding-earliest-stars-that-enriched-cosmos.html 2016年2月19日閲覧。 
  3. ^ a b c d 初期宇宙に明るい銀河「CR7」発見、第一世代星の証拠も検出”. AstroArts (2015年6月19日). 2016年2月19日閲覧。
  4. ^ Staff (2015年6月17日). “ESO1524 — Science Release - Best Observational Evidence of First Generation Stars in the Universe”. ヨーロッパ南天天文台. 2016年2月19日閲覧。
  5. ^ Staff (2015年6月18日). “Cristiano Ronaldo: CR7 name given to discovered galaxy”. BBC. 2016年2月19日閲覧。
  6. ^ これでC・ロナウドは宇宙一? 天文学者が新発見銀河を「CR7」と命名”. Soccer King. 2016年2月19日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 星図 10h 00m 58.005s, +01° 48′ 251″