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コキクガシラコウモリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コキクガシラコウモリ
2018年9月撮影・福島県いわき市
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Near Threatened
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 NT.svg
Status iucn2.3 NT.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 翼手目 Chiroptera
: キクガシラコウモリ科
Rhinolophidae
: キクガシラコウモリ属
Rhinolophus
: コキクガシラコウモリ R. cornutus
学名
Rhinolophus cornutus Temminck1834[2]
和名
コキクガシラコウモリ[3]
英名
Japanese little horseshoe bat[4]

コキクガシラコウモリ(小菊頭蝙蝠、Rhinolophus cornutus)は、キクガシラコウモリ科キクガシラコウモリ属に分類されるコウモリ

分布

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  • R. c. cornutus コキクガシラコウモリ

日本北海道本州四国九州固有亜種

  • R. c. orii オリイコキクガシラコウモリ

日本(奄美大島沖永良部島加計呂麻島徳之島)固有亜種

形態

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頭胴長が3.5 - 4.8 cm、尾長が1.6 - 2.6 cm、前腕長3.6 - 4.4 cm、体重は4.5 - 9 gになる。下唇の裸出板は4つに分かれる。和名の通りキクガシラコウモリより体の大きさが2分の1ほどであり、小型である。体毛は淡い褐色になる。出産を経験した雌は、下腹部に1対の擬乳頭が肥大する。北の個体の方が大型であり、南へいくに従って小さくなるという地理的変異がある。

分類

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頭骨の形態に基づき、オキナワコキクガシラコウモリを同種とする説もある[5]

  • Rhinolophus cornutus cornutus Temminck, 1834 コキクガシラコウモリ、ニホンコキクガシラコウモリ
  • Rhinolophus cornutus orii Kuroda, 1924 オリイオキクガシラコウモリ Orii's least horseshoe bat

生態

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主に山地から里山に生息する。夜行性で、50 - 数百頭の群れを形成し、昼間は洞窟鍾乳洞鉱山廃鉱など)を隠れ家として休む[6]。夕方になると隠れ家から出て、飛翔する昆虫類を捕食し[6]、日の出前に洞穴へ帰ってくる。洞窟などから出る時は、出入り口付近で何度も出入りを繰り返す。その後は決まった経路を繰り返し飛びながら採餌する。夜間には、ねぐらとは違う場所に数頭集まって休息場所とすることもある。

餌となる昆虫類が飛ばない冬期は冬眠する[6]。冬眠期と繁殖期では温度など求める条件が異なるようであり、同一の洞穴で両方の条件を満たさない時は、条件の合う別の洞穴へ移動することが知られている。秋の繁殖期以外は雌雄がわかれて生活する傾向が強い。冬眠期には、雄は集団を作り11 - 13℃の場所で冬眠するが、多くの成獣の雌は単独で10℃以下の場所で冬眠する。

繁殖形態は胎生であり、繁殖期には妊娠した雌と雄に分かれて数百頭になる集団を形成する。6月に1頭の幼獣を産む。幼獣は約25日で飛翔できるようになる。哺育の初期には、幼獣が雌の下腹部にある擬乳頭をかんでしがみつく。

保護上の位置づけ

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亜種 オリイコキクガシラコウモリ Rhinolophus cornutus orii

開発による生息地の破壊や、ねぐらや冬眠場所である洞窟の減少などにより生息数は減少している。

日本では1929年に西湖蝙蝠穴およびコウモリ、1938年岩泉湧窟及びコウモリとして、西湖蝙蝠穴と岩泉湧窟(竜泉洞)の個体が国の天然記念物に指定されている。

脚注

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  1. ^ Chiroptera Specialist Group 1996. Rhinolophus cornutus. The IUCN Red List of Threatened Species 1996: e.T19534A8957242. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.1996.RLTS.T19534A8957242.en. Accessed on 10 June 2025.
  2. ^ Temminck, C.J. 1834. Over een geslacht der vleugelhandige zoogdieren, Bladneus genaamd. Tijdschrift voor Natuurlijke Geschiedenis en Physiologie 1: 1-30.
  3. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ 佐野明「コキクガシラコウモリ」、コウモリの会 編『識別図鑑 日本のコウモリ』佐野明・福井大 監修、文一総合出版、2023年、50-53頁。
  5. ^ Wu, Y., Motokawa, M., Harada, M., Thong, V.D., Lin, L.K. and Li, Y.C. 2012. “Morphometric Variation in the pusillus Group of the Genus Rhinolophus (Mammalia: Chiroptera: Rhinolophidae) in East Asia.” Zoological Science 29: 396-402.
  6. ^ a b c コキクガシラコウモリ 京都府レッドデータブック2015”. 京都府 公式ウェブサイト. 京都府 (2015年). 2016年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月16日閲覧。
  7. ^ 前田喜四雄「オリイコキクガシラコウモリ」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-1 哺乳類』ぎょうせい、2014年、40-41頁。

参考文献

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  • 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社1984年、20、199頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館2002年、124頁。
  • 前田喜四雄 阿部 永 監修 『改訂2版 日本の哺乳類』 東海大学出版会、2008年、P31
  • 山本輝正 コウモリの会 編 『コウモリ識別ハンドブック』 文一総合出版、2005年、P16-17

関連項目

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外部リンク

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