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コウモリソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コウモリソウ
長野県諏訪地域 2021年9月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: コウモリソウ属 Parasenecio
: コウモリソウ
P. maximowiczianus
学名
Parasenecio maximowiczianus (Nakai et F.Maek. ex H.Hara) H.Koyama (1995)[1] var. maximowiczianus[2]
シノニム
  • Cacalia maximowicziana Nakai et F.Maek. ex H.Hara (1934)[3]
  • Cacalia hastata L. subsp. farfarifolia (Koidz.) Kitam. (1938)[4]
  • Cacalia hastata L. var. farfarifolia (Koidz.) Ohwi (1953) [5]
  • Koyamacalia maximowicziana (Nakai et F.Maek. ex H.Hara) H.Rob. et Brettell (1973)[6]
和名
コウモリソウ(蝙蝠草)[7]

コウモリソウ(蝙蝠草、学名:Parasenecio maximowiczianus var. maximowiczianus)は、キク科コウモリソウ属多年草[7][2] [8]

特徴

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地下茎は短く、直立し、または斜上する。は細く、ややジグザグ状に伸長し、高さは30-70cmになり、茎の下部には褐色で多細胞の縮れた毛が生える。は互生し、茎の中部につく葉の葉身は三角状ほこ形から扁五角形で、5浅裂し、長さ8-10cm、幅13-15cmと長さより幅のほうが広く、両面に縮れた毛が生える。中央の頂裂片が一番大きく、先端がとがり、基部は心形から切形、縁には大小不ぞろいの鋸歯がある。茎の上部につく葉は縦に狭長の形になる。茎の中部の茎葉の葉柄は長さ3.5-6cmになり、翼はないかまたは上部に狭い翼があり、基部は半ば茎を抱き、「耳」とよばれるごく小型の葉鞘があり、葉鞘は閉じない[7][2][8]

花期は8-10月。頭状花序は円錐状または総状に斜上してつき、すべて両性の筒状花からなり、筒状花は紫色をおびる。総苞は狭筒型で長さ7.5-10mm、総苞片は1列で5-7個ある。1頭花は6-10個の筒状花で構成されており、花冠の長さは7mmになる。果実は円柱形で長さ6mmになる痩果となる。冠毛は白色で長さ5mmになる。染色体数2n=60[7][2][8]

分布と生育環境

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日本固有種[9]。本州の関東地方中部地方近畿地方の太平洋側に分布し、山地の落葉広葉樹林の林内に生育する[7][2][8]。しばしば群生することがある[7]

名前の由来

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和名コウモリソウは、「蝙蝠草」のことで、葉の形がコウモリが翼を広げた形に似るのでいう[10]

1856年(安政3年)に出版された飯沼慾斎の『草木図説』に「カウモリサウ 甲」があり、葉について、「形三尖缺刻数突起鋸歯アリテ。略ホ(ほぼ)三角ニ乄(して)蝙蝠ノ態アリ。故ニソノ名ヲ得」とある[11]牧野富太郎 (1940)は、『牧野日本植物図鑑』の初版において、簡単に「和名ハ葉形ニ基ク」と述べるにとまる[12]

種小名(種形容語)maximowiczianus は、ロシアの植物学者カール・ヨハン・マキシモヴィッチへの献名[13]

本種が属していた Cacalia 属が廃止され、アジア産のものが Parasenecio 属とされ[14]Koyama (1995) によって Cacalia maximowicziana から Parasenecio maximowicziana に組み替えられた[1]。しかし、属名の Parasenecio男性名詞であることから、それに続く種小名(種形容語)の語尾は、「-a」を「-us」にする必要がある[15]ことから、Parasenecio maximowiczianus とされている[1]

なお牧野 (1940) などにおいて見られるように、かつてコウモリソウの学名としては現在は(ウスゲ)タマブキにあたる Cacalia farfarifolia Siebold & Zucc. があてられていたが、1935年の時点で中井猛之進前川文夫により誤同定とされ、別種であるとして上述の C. maximowicziana の名が初めて与えられたという経緯が存在する[16]

利用

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同属のイヌドウナヨブスマソウ同様、食べることができるが、茎が細く、食用価値は低い[17]

ギャラリー

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下位分類

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オクヤマコウモリ Parasenecio maximowiczianus (Nakai et F.Maek. ex H.Hara) H.Koyama var. alatus (F.Maek.) H.Koyama (1995)[18]、(シノニムCacalia maximowicziana Nakai et F.Maek. ex H.Hara var. alata F.Maek. (1935)[16][19]) - コウモリソウの変種で、基本種のコウモリソウと比べ、葉柄にはっきりとした翼があり、葉柄の基部は茎を耳状に抱き、「耳」に鋸歯があることがあり、葉鞘は円筒状に閉じる。染色体数2n=60。本州の中部地方の太平洋側に分布し、コウモリソウより標高が高い場所に生育し、高山帯の低木林の縁でも生育している[7][2]。変種名 alatus は、「翼のある」の意味[20]門田裕一 (2017) は、「コウモリソウの1変種ではなく、独立したである可能性がある。」としている[2]

脚注

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  1. ^ a b c コウモリソウ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f g 門田裕一 (2017) 「キク科キオン連」『改訂新版 日本の野生植物 5』p.305
  3. ^ コウモリソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ コウモリソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ コウモリソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  6. ^ コウモリソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.506
  8. ^ a b c d 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1158
  9. ^ 『日本の固有植物』p.144
  10. ^ 『山溪名前図鑑 野草の名前 秋・冬』pp.132-133
  11. ^ 飯沼慾斎 草木図説前編20巻(16)、カウモリサウ、コマ番号17/68、国立国会図書館デジタルコレクション-2021年10月10日閲覧
  12. ^ 牧野富太郎、『牧野日本植物図鑑(初版・増補版)インターネット版』p.31、「かうもりさう」、高知県立牧野植物園
  13. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1502
  14. ^ 門田裕一 (2017) 「キク科キオン連」『改訂新版 日本の野生植物 5』p.301
  15. ^ 門田裕一:秋田県産コウモリソウ属(キク科)の一新種,オガコウモリ, The Journal of Japanese Botany, 『植物研究雑誌』Vol.80, No.4, p.220, (2005).
  16. ^ a b 中井 (1935).
  17. ^ 『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』p.270
  18. ^ オクヤマコウモリ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  19. ^ オクヤマコウモリ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  20. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1482

参考文献

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関連文献

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  • Koyama, Hiroshige (1995). Iwatsuki, Kunio; Yamazaki, Takasi; Boufford, David E. et al.. eds. Flora of Japan. IIIb: Angiospermae, Dicotyledoneae Sympetalae(b). Tokyo: Kodansha. ISBN 978-4-06-154602-8