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グリューナー・ヴェルトリーナー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
グリューナー・ヴェルトリーナー
ブドウ (Vitis)
Vitis vinifera
別名 グリューナー・ムスカテラー、ヴェルトリーナー、
原産地  オーストリア?
主な産地 ニーダーエスターライヒ州、ブルゲンラント州、スロヴァキア、モラヴィア
主なワイン ヴァッハウの「スマラクト」
VIVC番号 12930
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グリューナー・ヴェルトリーナー(グリューナー・フェルトリーナー、ドイツ語: Grüner Veltliner発音: [ˈɡʁyːnɐ fɛltˈliːnɐ] ( 音声ファイル))は白ワインに用いられるワイン用ブドウ品種であり、主にオーストリアハンガリースロバキア、そしてチェコ英語版で栽培されている。葉は五裂であり、ブドウの房は細長いが小さく、濃い緑色のブドウが北半球では10月中旬から下旬に熟する。

2008年のオーストリアにおけるグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培面積は17,151ヘクタールであり、オーストリアにおけるブドウ園の32.6%を占めた。そのほぼ全てがオーストリアの北東部で栽培されており、グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストリアで最も栽培されているブドウ品種である。最北東部のポイスドルフ英語版の周辺ではスパークリングワインも製造されている。ドナウ川に沿ってウィーンの西側までの、ヴァッハウ英語版クレムスタール英語版カンプタール英語版においては土壌をほとんどの保つことのできないような急な斜面に設けられた段々畑でリースリングと共に栽培されている。グリューナー・ヴェルトリーナーから生まれるワインは非常に純粋で長い熟成に耐えるミネラルに富んだワインであり、世界の素晴らしいワインのいくつかとの比較に耐えられるものである。オーストリア・ワイン・マーケティング協会が主催した近年のブラインドテイスティングでは、グリューナー・ヴェルトリーナーのワインはロバート・モンダヴィメゾン・ルイ・ラトゥール英語版といった世界レベルのシャルドネを上回る好評を得た[1]

オーストリア国外では、グリューナー・ヴェルトリーナーはチェコ共和国で2番目に多く栽培されている白ブドウ品種であり、その栽培面積は約2,120ヘクタールで、チェコにおけるワイン生産量の約11%を占めている[2]。近年ではいくつかの米国のワイナリーがグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培とワイン生産を始めた。その中には、マサチューセッツ州英語版のワイナリー及びブドウ園、バージニア州シャーロッツビルのBlenheim Vineyards、バージニア州スウォープ英語版シェナンドー・バレーAVA英語版)にあるHazy Mountain社のLittle North Mountain Vineyard、オレゴン州メリーランド州英語版ニューヨーク州英語版ノース・フォーク・オブ・ロング・アイランドAVA英語版フィンガー・レイクスAVA英語版カリフォルニア州ナパ・ヴァレークラークスバーグAVA英語版モントレーAVA英語版サンタ・イネス・バレーAVA英語版オハイオ州英語版アシュタビューラ郡ニュージャージー州英語版南部のベルビューワイナリー英語版、ペンシルベニア州、そしてミシガン州南西のミシガン湖岸AVA英語版が含まれる。グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストラリアでも栽培されており、特に南オーストラリア州のアデレード・ヒルズが知られる。また、カナダブリティッシュコロンビア州オカナガン・ヴァレー英語版でも栽培が行われている。

一部のブドウ品種学者(例えば1887年にブドウ品種学のハンドブックを出版したヘルマン・ゲーテドイツ語版)は長らくグリューナー・ヴェルトリーナーは他の「ヴェルトリーナー」の名前を有する品種(例えばローター・ヴェルトリーナー英語版)とは無関係であるか、遠縁であると考えてきた[3]。1990年代後半に行われたDNA分析により、グリューナー・ヴェルトリーナーの片方の親がサヴァニャン(トラミネール)であることが確実になったが、調査対象となった候補の中からはもう一方の親を見つけることができなかった[4]。もう一方の親が後に発見されたが、それは名もない品種の一本のみ存在する放棄された非常に古く弱ったブドウの木で、オーストリアのアイゼンシュタット郊外のザンクト・ゲオルゲン・アム・ライタゲビルゲドイツ語版で発見された。このブドウはそれゆえ、「ザンクト・ゲオルゲンドイツ語版」と呼ばれている[5]

グリューナー・ヴェルトリーナーは特に食べ物と合わせやすいワインであるとの評価を得ており、レストランのワインリスト英語版でおいて人気がある[6]。グリューナー・ヴェルトリーナーからは様々な種類のワインが作られる。多くはウィーンホイリゲ(新酒を提供するワイン酒場)での若飲み用だが、スパークリングワインも少量生産され、また、一部は長い熟成英語版に耐える。ウィーンの西側のドナウ川沿いの急峻なブドウ園では非常に純粋でミネラルに富んだ熟成に向くグリューナー・ヴェルトリーナーが作られる。平野部においては、柑橘や桃の香りがより明確になり、コショウや場合によってはタバコのようなスパイシーな香りを有する。

歴史

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オーストリア東部のブルゲンラント州にあるアイゼンシュタットの場所。近隣にグリューナー・ヴェルトリーナーの親である品種の生き残りが発見されたザンクト・ゲオルゲン・アム・ライタゲビルゲが所在する。

グリューナー・ヴェルトリーナーは北イタリアヴァルテッリーナドイツ語: Veltlin)に由来するその名前から古代ローマ英語版に遡ると信じられてきたが、ブドウ品種学者やワイン歴史学者たちはまだブドウとイタリアのコミューンとの関係を発見知るに至っていない[5]。グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストリアの在来種であると考えられる[7]。現在の名称が文書上に初めて登場するのは1855年であり、それまではWeißgipflerとして知られていた[3][4]。1930年代になってようやく、グリューナー・ヴェルトリーナーが標準名称として確立された。第二次世界大戦まで、グリューナー・ヴェルトリーナーはただのオーストリアのブドウの一種だとみなされていたが、レンツ・モーザードイツ語版がハイカルチャー(ドイツ語: Hochkultur仕立て英語版を導入して以来、1950年代からは急速に栽培が拡大し、その後、オーストリアので最も栽培されている品種となった[4]

近年、2002年にマスター・オブ・ワイン英語版ジャンシス・ロビンソンティム・アトキン英語版によって主催されたワイン鑑定会英語版によってグリューナー・ヴェルトリーナーへの関心が高まっている。その会ではオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーがブルゴーニュの高名な「グランクリュ」の白ワインを上回る評価を得た[7]

血統

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サヴァニャンを経て、グリューナー・ヴェルトリーナーはピノ・ノワール(写真)の孫もしくは異母兄弟である

2007年、DNA分析により、グリューナー・ヴェルトリーナーはサヴァニャン(トラミネール)とオーストリア東部のブルゲンラント州アイゼンシュタット郊外のザンクト・ゲオルゲン・アム・ライタゲビルゲにある無名のブドウの自然交配によって生まれたことが明らかになった[5]。この無名のブドウは19世紀後半以降ブドウ園であったことのない牧草地の荒れた一角で2000年にはじめて発見された。そして、その場所で過去1世紀において最後のブドウであったと推定された。現地の有識者たちはそのブドウの品種を判別することができなかった。2005年にそのブドウが引き抜かれる危機に瀕したとき、追加のサンプルが採取され、後にクロスターノイブルクで分析された。その後、フェルディナント・レグナードイツ語版による遺伝子分析により、「ザンクト・ゲオルゲンのブドウ」がグリューナー・ヴェルトリーナーの親であることが確定した[3][8]

ザンクト・ゲオルゲンのブドウは一時は「グリューナー・ムスカテラー(ドイツ語: Grüner Muskateller)」の別名で知られていたが、マスカット系のブドウとは直接の関係がないようである。2011年2月、樹齢500年以上と考えられていたザンクト・ゲオルゲンのブドウの唯一の生き残りは何者かによっていたずらされ、複数個所をひどく切りつけられていた。ブドウの木はオーストリア政府が天然記念物に指定したことによって生き残った。ブドウ品種学者たちは現在、ブドウ園での植え付けと商業的な栽培に向けて挿し木を行っている[5][9]

他のブドウ品種との関係

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グリューナー・ヴェルトリーナーは親であるサヴァニャンを経て、ロートギプフラー英語版の異母兄弟であり、サヴァニャンと親子関係にあるピノ・ノワールと孫もしくは異母兄弟の関係にある。DNA型鑑定ではピノ・ノワールとサヴァニャンのどちらが親でどちらが子なのか明らかにできていないため、この関係の本質はまだ明らかではない[5]

「グリューナー・ヴェルトリーナー」という名前にもかかわらず、ローター・ヴェルトリーナー英語版フリュアーローター・ヴェルトリーナー英語版といった他のヴェルトリーナーの名前を有するブドウとの関係は知られていない。灰色の果実の「グラウアー・ヴェルトリーナーー(ドイツ語: Grauer Veltliner、Veltliner Grauとしても知られる)」は一時は別の品種だと考えられていたが、1996年のDNA分析結果により、グリューナー・ヴェルトリーナーの突然変異であることが明らかになった[5]

栽培

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アデレード・ヒルズのハーンドルフヒル ブドウ園で手摘みされているグリューナー・ヴェルトリーナー

グリューナー・ヴェルトリーナーは中生のブドウ品種であり、このブドウが栽培されるヨーロッパ北部のワイン生産地域において通常は問題なく生理的成熟英語版に達することができる。小さな黄緑色の果実を付け、非常に実り豊かで歩留まり良好となりうる。グリューナー・ヴェルトリーナーはべと病うどんこ病といった病害英語版や葉を食害するサビダニ英語版の侵入への感受性が非常に高い[5]

グリューナー・ヴェルトリーナーは様々な種類の土壌英語版で育つことができるが、ワイン専門家のオズ・クラーク英語版黄土の割合の高い土壌においてよく育つ傾向にあるとしている[10]。新しいブドウ園は様々な仕立て方英語版を実験しているが、オーストリアではグリューナー・ヴェルトリーナーは伝統的にレンツ・モーザーが1920年代に開発した方式で仕立てられている。この仕立て方はブドウの木を3.5mの広い間隔で植えることで木の密度を下げることを目的にブドウが幹が比較的高く(1.3m)成長することを許しているため、ハイカルチャー(ドイツ語: Hochkultur)方式として知られている[11]

地域

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グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストリアと最も近く関連付けられている。オーストリアではグリューナー・ヴェルトリーナーは最も幅広く栽培されているブドウ品種であり、2012年の統計では17,034ヘクタールの栽培面積を有し、オーストリアのブドウ栽培面積の3分の1近くを占めている。グリューナー・ヴェルトリーナーは5つのDistrictus Austriae Controllatus英語版 (DAC)地域で認定されている;ヴァインフィアテル英語版では使用が認められている唯一のブドウ品種である;ライタベルク英語版では単一品種のヴァラエタルワインとして醸造することも、ピノ・ブランシャルドネノイブルガー英語版とブレンドすることも可能である;トライゼンタール英語版クレムスタール英語版カンプタール英語版ではリースリングと共に栽培されている。グリューナー・ヴェルトリーナーはニーダーエスターライヒ州のドナウラント(現在ではヴァーグラム英語版地域として知られる)やヴァッハウ英語版でも栽培がみられる。ドナウ川に沿ってパンノニア平原からの暖かい空気の流れが東から西に吹き、ブドウを暖める。この地域ではの香りを有するフルボディのワインが生産される傾向がある[5]

ヴァッハウのドナウ川沿いのブドウ園で栽培されているグリューナー・ヴェルトリーナー

チェコ共和国及びスロヴァキアとの国境沿いにあるオーストリア北東部のヴァインフィアテル地域はオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーの半分以上が栽培されており、2012年の統計では8,529ヘクタールの栽培面積を有する。ここではグリューナー・ヴェルトリーナーは非常に高い歩留まり(最大100ヘクトリットル/ヘクタール、もしくは5.7トン/エーカー)を有し、さわやかなと若い果実味のあるシンプルながぶ飲み向けのワインと発泡性のゼクトに用いるベースワイン英語版を生産することができる。一方、歩留まりが制限される良い立地のブドウ園においては、ワイン生産者たちはコショウやミネラル、柑橘系の香りを有し、熟成されるとブルゴーニュワインのような特徴を持つフルボディで辛口のワインを生産することができる[5]

ハンガリーとの国境沿いにあるノイジードル湖沿岸のブドウ栽培地域については、湖の東岸では1,272ヘクタールのグリューナー・ヴェルトリーナーが栽培され、西岸のノイジードラーゼー・ヒューゲルラント「丘陵地帯」では882ヘクタールが栽培されている。ここでは甘口英語版アウスレーゼ英語版貴腐ワイントロッケンベーレンアウスレーゼ英語版を生産することができる[5]

クレムス・アン・デア・ドナウのすぐ東のクレムス=ホレンブルクではオーストリアで最も古いブドウ園があり、樹齢150年以上のグリューナー・ヴェルトリーナーの古木英語版が商業的なワイン生産のためにいまだに使用されている[5]

ヨーロッパの他の地域

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スロバキアではグリューナー・ヴェルトリーナーはVeltlinske Zelenéとして知られ、その国で最も広く植えられている白ブドウ品種である。グリューナー・ヴェルトリーナーの栽培面積は3,805ヘクタールであり、スロバキアにおけるブドウの栽培面積の5分の1近くを占めている。国境をまたいだチェコ共和国においてもグリューナー・ヴェルトリーナーは同様の現地名のVeltlinské zelenéと呼ばれており、2011年には1,713ヘクタールの栽培面積がある[5]

オーストリア国境沿いにあるイタリア北東部のアルト・アディジェ英語版ではVeltlinerを名前に有するブドウ(特にVeltliner bianco)は事実上全てグリューナー・ヴェルトリーナーである可能性が高い。一時期、アルト・アディジェの古いブドウ園ではフリュアーローター・ヴェルトリーナー英語版が植えられていたが、そのほとんどが引き抜かれ英語版、ほかの品種へと置き換えられた。グリューナー・ヴェルトリーナーはヴァルダーディジェ DOCとヴァッレ・イサルコ DOCのデノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ (DOC) ワインで使用が許可されている[5]

ドイツではグリューナー・ヴェルトリーナーはヴュルテンベルク英語版地域にあるシュトゥットガルト近郊のプロヒンゲンで生産されていた歴史的なハンセンワインに使用されていた。フランスではグリューナー・ヴェルトリーナーはどのアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ (AOC) ワインでも許可されていないが、数ヘクタールの実験的な栽培がおこなわれている[5]

ハンガリーではグリューナー・ヴェルトリーナーはZöld Veltliniとして知られ、1,439ヘクタールが栽培されている。栽培の多くはバラトン湖周辺の西部のワイン生産地域や、マートラ山地英語版の山麓の丘にある北部のブドウ園、トルナ県クンシャーグ英語版の南部のワイン生産地域で見られる。ブルガリアでもグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培がいくらか見られる[5]

新世界

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オレゴン州のウィラメット・ヴァレーAVAのグリューナー・ヴェルトリーナー

近年、グリューナー・ヴェルトリーナーの栽培はオーストラリアニュージーランド英語版アメリカ合衆国カナダ英語版といった新世界ワイン英語版の地域にも広がっている。ニュージーランドではグリューナー・ヴェルトリーナーは北島ギズボーン地方に初めて植えられ、商業生産された初のワインがクーパーズ・クリーク・ヴィンヤードから2008年に発売された。それ以来、グリューナー・ヴェルトリーナーの栽培は南島のワイン生産地域であるマールボロ地方セントラル・オタゴ英語版にも広まっていった。世界で最も南にあるブドウ園の1つであるアタ・マラ(Ata Mara)でも栽培されており、最初のワインは2013年に製造された。セントラル・オタゴの気候はオーストリアのヴァッハウと似て、日中は暑く、夜は涼しい。

カナダではグリューナー・ヴェルトリーナーはブリティッシュコロンビア州でみられる。国境をまたいだアメリカ合衆国では、グリューナー・ヴェルトリーナーはカリフォルニア州ワシントン州英語版オレゴン州、アイダホ州、そしてニューヨーク州で小規模な栽培がみられる[5]。オレゴン州では、チェハレム・マウンテンズAVA英語版エオラ・アミティ・ヒルズAVA英語版ウィラメット・ヴァレーAVA、そしてアムクワ・ヴァレーAVA英語版米国政府認定ブドウ栽培地域英語版で栽培がみられる。アムクワ・ヴァレーのReustle Prayer Rock Vineyardsは2005年に米国で初めてグリューナー・ヴェルトリーナーを用いたワインの商業的な生産を始めたとされている[12][13]。そのほかのオレゴン州における特筆すべき栽培者としては、チェハレム・ワイナリー、ラプター・リッジ・ワイナリー、そしてイルヒー・ヴィンヤーズがある。ニューヨーク州のフィンガー・レイクスAVA英語版は冷涼な気候と氷河により形成されたフィンガー・レイクスとの近さが早春と冬の過剰な寒さを和らげてくれることから、小規模なグリューナー・ヴェルトリーナーの小規模な栽培がおこなわれている場所の一つである。ラモロー・ランディングはグリューナー・ヴェルトリーナーのワインを生産しているフィンガー・レイクスの数少ない特筆すべきワイナリーの1つである[14]

アメリカ合衆国におけるその他のグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培は、メリーランド州英語版バージニア州英語版ニュージャージー州英語版アウター・コースタル・プレーン AVA英語版[15]、そしてペンシルベニア州英語版リーハイ・バレー AVA英語版で見られる。アメリカのグリューナー・ヴェルトリーナーはミディアムボディで軽い果実味があり、強い酸味とスパイスの風味を有する傾向にある[16]

カリフォルニアでは、初期のグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培の1つがナパ・ヴァレーダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト AVA英語版で行われた。2006年時点では、ダイヤモンド・マウンテンのフォン・ストラッサー・ワイナリーにおける13エーカー (0.13ヘクタール)の栽培がカリフォルニア州で記録されているグリューナー・ヴェルトリーナーの唯一の栽培場所であった[17]

アデレード・ヒルズのハーンドルフヒル・ワイナリー英語版で作られたオーストラリア産のグリューナー・ヴェルトリーナーによるワイン

オーストラリアでは、グリューナー・ヴェルトリーナーへの関心とその栽培は増しており、ワイン専門家のジェームス・ハリデー英語版はオーストラリアワインにおける「次の目玉」になるのではないかと推測している[18]。オーストラリアにおける最初期のグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培は南オーストラリア州英語版アデレード・ヒルズにおけるハーンドルフヒル・ワイナリー英語版で2008年に行われた。この栽培はヘンチキ英語版のブドウ栽培家のプルー・ヘンチキが代表するアデレード・ヒルズの栽培家たちによるグリューナー・ヴェルトリーナーをその地域の特徴的な品種としようとする多大な努力の一環であった。ここでは気温の日較差が大きいため、暖かい日中にブドウが糖度を高めることができる一方で、涼しい夜にを保つことができる[19]

オーストラリアにおける初のグリューナー・ヴェルトリーナーのヴァラエタルワインは2009年にキャンベラ・ディストリクト英語版のラーク・ヒル、続いて2010年にハーンドルフヒルから発売された[5]

ワインのスタイル

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グリューナー・ヴェルトリーナーからは醸造後すぐに消費されることを意図したシンプルなジャグワインから瓶の中で熟成させることができるような長命なワインまで様々なワインを製造することができる。ワイン専門家のオズ・クラークによると、グリューナー・ヴェルトリーナーから作られたワインは通常、若いうちはあまりアロマティック英語版ではないが、熟成により第3アロマを増加させる。グリューナー・ヴェルトリーナーのワインからはおおむね、白コショウレンズ豆セロリの香りが感じられ、一部では柑橘系の香りや、よりフルボディのものにはクラークが「ハチミツをかけたような重み」と表現したものが感じられる[10]

多くの人が白コショウの香り(ロタンドン)をグリューナー・ヴェルトリーナーの特徴的な香りだと信じているにもかかわらず、ワイン専門家のジャンシス・ロビンソンや彼女のウェブページの他の記者たちは、それは事実とは異なるとよく記事に書いている[20]。ロビンソン氏は、過去数十年でグリューナー・ヴェルトリーナーの白コショウの香りが分かりにくくなってきており、最近では大抵の場合、その香りがこの品種の古典的なワインの多くにおいて存在しないことに気づいた。

ワイン専門家のトム・スティーブンソン英語版によると、グリューナー・ヴェルトリーナーのワインは大抵、軽い果実味と分かりやすいスパイス感及び特徴的な白コショウの香りがある。良好なヴィンテージの出来の良いワインはブルゴーニュで生産されたシャルドネと近く、シャルドネと同様にオーク樽英語版の香りの強い「ふくよかな」スタイルにすることができる。オーク樽で熟成させていないワインはリースリングのワインと同様のミネラル感を示すこともある[7]

マスター・オブ・ワインのジャンシス・ロビンソンは、グリューナー・ヴェルトリーナーからはスパイシーなコショウのような香りのある辛口のワインが通常造られ、大抵フルボディであり、熟成によりブルゴーニュの白ワインに近いアロマや風味となる、と書いている[11]

別名

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長年の間に、口語的には時折GrüVeと呼ばれるグリューナー・ヴェルトリーナーは以下のような別名で知られている;Bielospicak, Cima Biancam, Dreimänner, Feherhegyü, Feldlinger, Grauer Veltliner (オーストリアにて), Green Veltliner, Grün Muskateller, Grüne Manhardsrebe, Grüner, Grüner Muskateler (オーストリアにて), Grüner Muskateller (1930年代まで広く使われていた), Grüner Velteliner, Grüner Weissgipfler, Grüner Weltliner, Grünmuskateller, Gruner Veltliner, Manhardsrebe, Manhardtraube, Manhartsrebe, Mauhardsrebe, Mouhardrebe, Mouhardsrebe, Muskatel, Muskatel Zeleny, Nemes Veltelini, Plinia Austriaca, Ranfol bianco, Ranfol Bijeli, Ranfol Weisser, Rdeci Veltinec, Reifler Weiss, Ryvola Bila, Tarant Bily, Valtelin blanc, Valtelina vert, Valteliner, Valteliner blanc, Valteliner vert, Velteliner Grüner, Velteliner vert, Velteliner Weisser, Veltelini Zöld, Veltlin Zeleny, Veltlinac Zeleni, Veltlinec, Veltliner (アルト・アディジェにて), Veltliner blanc, Veltliner grau (オーストリアにて), Veltliner Grun, Veltliner Gruner, Veltliner Grün, Veltliner verde, Veltlini, Veltlinske zelené (スロバキアにて), Veltlínské zelené (チェコ共和国にて), Veltlinski Zelenii, Veltlinsky Vert, Veltlinsky Zeleny, Vetlinac, Vetlinac Zeleni, Weisser Raifler, Weisser Reifler, Weisser Valteliner, Weisser Velteliner, Weisser Veltliner, Weissgipfler (オーストリアにて), Weissgipfler Grüner, Yesil Veltliner, Zeleni Vetlinac (スロベニアにて), Zeleny Muskatel, Zleni Veltinac, Zöld Muskotally, Zöld Muskotalynak, Zöld Veltelini (ハンガリーにて), Zöld Velteliny, Zöldveltelini, Zold Veltelini[5][21][22]

出典

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  1. ^ Robinson, Jancis (2002年11月16日). “Grüner Veltliner - distinctly groovy grape”. jancisrobinson.com. 2007年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月26日閲覧。
  2. ^ Wine of Czech Republic: Statistics and Charts”. 2008年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  3. ^ a b c Veltliner > Glossary > Wein-Plus”. 2013年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  4. ^ a b c Grüner Veltliner – Austrias Secret Weapon” (PDF). Austrian Wine Marketing Service (2006年4月). 2007年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月26日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r J. Robinson, J. Harding and J. Vouillamoz Wine Grapes - A complete guide to 1,368 vine varieties, including their origins and flavours pgs 449-450 Allen Lane 2012 ISBN 978-1-846-14446-2
  6. ^ Robinson, Jancis Vines, Grapes & Wines Mitchell Beazley 1986 ISBN 1-85732-999-6
  7. ^ a b c T. Stevenson, ed. The Sotheby's Wine Encyclopedia (5th Edition) pgs 54,403, 448-451 Dorling Kindersley (2011) ISBN 9780756686840
  8. ^ Pressemappe zum Pressegespräch „Vater (-rebe) des Grünen Veltliner gefunden“” (PDF) (ドイツ語). Wine-Times (2009年8月6日). 2023年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
  9. ^ Nick Stephens (2011年2月15日). “Unique, Ancient St Georgen Vine Vandalized”. Bordeaux Undiscovered. 2013年10月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
  10. ^ a b Oz Clarke Encyclopedia of Grapes pg 114 Harcourt Books 2001 ISBN 0-15-100714-4
  11. ^ a b J. Robinson (ed) "The Oxford Companion to Wine" Third Edition pgs 335, 399-400 Oxford University Press 2006 ISBN 0-19-860990-6
  12. ^ Berger, Dan (2008年3月17日). “Go Ahead, Say It: Umpqua Better You Should Taste It”. Appellation America. 2025年5月15日閲覧。
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外部リンク

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