クープマンズの定理

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クープマンズの定理(クープマンズのていり、: Koopmans' theorem)はチャリング・クープマンスによって提出された分子の第一イオン化エネルギー電子親和力を見積もる定理である[1] [2]:92-93 [3]:133-139

ハートリー–フォック近似において、N 個の電子からなる系の基底状態における全エネルギーEN とし、その系から電子を1個取り出した場合、つまりN -1 個の電子からなる系の全エネルギーをEN -1 とする。この時、電子は相互作用が無視できるような無限遠方まで取り去られるとする。そして取り出した電子の占有していた軌道をi 、軌道のエネルギーをとすると、

という関係が成り立つ。ここで、電子を無限遠方へ取り去ることに対し、一電子波動関数は不変であると仮定している。 これを固定軌道近似(英: Frozen orbital approximation)と呼ぶ。 左辺はイオン化エネルギーに対応しており、これが軌道エネルギーから見積もられることを意味している。

特に、最高占有軌道(HOMO)から電子を取り去る場合、次式が成立する。

同様にして、N 電子系に電子1個を加えたN +1 電子系の全エネルギーをEN +1 とすると以下の式が成り立つ。

ここで最低非占有軌道(LUMO)の軌道エネルギーである。左辺は電子親和力に対応している[2]:92-93[3]:133-139

電子数の変化による軌道緩和を考慮した手法としては、ΔSCF法が挙げられる[4]:88-89。また、密度汎関数法においてはヤナックの定理が相当する[2]:157

参考文献[編集]

  1. ^ Koopmans, T (1934). “Über die Zuordnung von Wellenfunktionen und Eigenwerten zu den Einzelnen Elektronen Eines Atoms”. Physica 1 (1-6): 104–113. doi:10.1016/S0031-8914(34)90011-2. ISSN 00318914. 
  2. ^ a b c Frank Jensen (2007). Introduction to Computational Chemistry. Jonh Wiley & Sons Ltd. ISBN 978-0-470-01187-4. 
  3. ^ a b A.ザボ, N.S.オストランド 『新しい量子化学 上 電子構造の理論入門』 大野公男, 阪井健男, 望月祐志訳、東京大学出版会、1991年ISBN 978-4-13-062111-3
  4. ^ 小谷正博, 幸田清一郎, 染田清彦 『大学院講義物理化学』 近藤保、東京化学同人、1997年ISBN 4-8079-0462-0

関連項目[編集]