クレン古細菌

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クレン古細菌
Urzwerg.jpg
Ignicoccus hospitalis
分類
ドメ
イン
: 古細菌 Archaea
: プロテオ古細菌界
"Proteoarchaeota"
: クレン古細菌門
Crenarchaeota
学名
Crenarchaeota
Garrity and Holt 2002
下位分類(綱・目)

クレン古細菌(-こさいきん、クレンアーキオータCrenarchaeota、クレンアーキア/Crenarchaea)は、好熱菌を中心とした古細菌分類群である。2018年9月現在、29属64種が含まれ、正式に発表されている古細菌のおおよそ2割弱を占める。

他の古細菌グループとは、基本的に16S rRNA系統解析によって区別される[1]。進化速度が遅く、古細菌の祖先的な形質を残していると考えられたことから、ギリシャ語のκρηνη(ラテン文字:Crene、意味:泉・源泉)に因んで命名された[1]

1988年に提唱されたエオサイト説は、現在の2分岐説(2ドメイン説)の基礎になっている。これはクレン古細菌(当時は硫黄依存好熱好酸菌と呼称)が真核生物の起源となったとする説であった。

特徴[編集]

元々系統解析により設定された門であり、表面的な性質はユーリ古細菌に属すテルモコックス綱アルカエオグロブス綱とそれほど差はない。多くが超好熱菌や好熱好酸菌に占められ、水素硫黄を酸化、あるいは従属栄養的に増殖するものが多い。典型的な例としては、好熱好酸好気性で硫黄を酸化するSulfolobus、110°Cで増殖する嫌気性のPyrodictiumなどが知られている。

固有の形質としては、ユーリ古細菌と異なり、ヒストンを持たないことが指摘されてきた。全ゲノムが解読されているクレン古細菌17種のうち、ヒストンと相同性のある遺伝子を持つのはテルモプロテウス目3種のみである。また、殆どの原核生物に保存されているFtsZも(1種を除いて)保有していない。細胞分裂については、2008年に別々の研究グループから、真核生物エンドソーム小胞を形成する時と同様の機構(ESCRT複合体)を使うという報告がなされている[2]。ただしテルモプロテウス目はFtsZもESCRT複合体も持たない。テルモプロテウス目はアクチンを用いた細胞分裂機構を持つと予想されている[3]

この他、ユーリ古細菌との比較では、古細菌型DNA複製酵素Pol Dを持たない、リボソーム[4]RNAポリメラーゼ[5]のサブユニット数が多いなどの差異がある。細胞壁はユリアーキオータほど多様ではなく、Ignicoccus1属(細胞壁をもたない)を除き、S層が担う。Ignicoccusなど一部の種は、ジカルボン酸/4-ヒドロキシ酪酸回路というほかの生物では見られない炭素同化経路を使用しているようである[6]

ナノ古細菌はこの門の生物に寄生する。

分類[編集]

2008年ごろまでは、現在TACK上門(除くコル古細菌)やアスガルド古細菌と呼ばれている系統の全てを含んでいたが、徐々に分割が進み、現在はテルモプロテウス綱のみを含む範囲に縮小している。一方、全原核生物の分類を分岐距離で再評価したGTDB分類では、TACKを再度吸収して6綱(うち未記載綱4つを含む)となっている。

NCBI/LPSN[編集]

以前、海洋性クレンアーキオータと呼ばれていたニトロソプミルス目、ケナルカエウム目は、現在タウム古細菌門に分離されることが多い。この他、クレン古細菌に近接するゲオ古細菌と呼ばれる系統が存在し、門相当か、あるいはクレン古細菌に属す新綱とされている[7]。未培養のメタン菌であるウェルストラエテ古細菌も綱として編入される場合がある。

GTDB[編集]

  • テルモプロテウス綱/Thermoprotei
  • ニトロソスパエラ綱/Nitrososphaeria(NCBI分類のタウム古細菌/Thaumarchaeotaに相当)
  • コラルカエウム綱/Korarchaeia(NCBI分類のコル古細菌/Korarchaeotaに相当)
  • バテュアルカエイア綱/Bathyarchaeia(NCBI分類のバテュ古細菌/Bathyarchaeotaに相当)
  • メタノメテュリクス綱/Methanomethylicia(NCBI分類のウェルストラエテ古細菌/Verstraetearchaeotaに相当)

GTDB分類(The Genome Taxonomy Database)は、全原核生物の分類を分岐距離で再評価したもので、古細菌はTACKが統合されるとともに、ユーリ古細菌は分割された。

具体的には、NCBI分類においてTACKに含まれていた門が綱や目に格下げされてクレン古細菌に吸収されている。うちゲオ古細菌は目にまで格下げされ、テルモプロテウス綱に吸収、アイグ古細菌も同様に目に格下げされニトロソスパエラ綱に吸収される。元々クレン古細菌は、上記のうちコラルカエウム綱以外をすべて含んでいたが[8]、その後の分割でユーリ古細菌に比べ細分化が進んでいた。

系統[編集]


クレン古細菌  


Sulfolobales(テルモプロテウス目




Fervidicoccales(フェルウィディコックス目




Desulfurococcales(デスルフロコックス目



Acidilobales(アキディロブス目






Thermoproteales(テルモプロテウス目




Thaumarchaeota→タウム古細菌



脚注[編集]

  1. ^ a b Woese, CR; Kandler O, Wheelis ML (1990年). “Towards a natural system of organisms: proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 4576–4579. PMID 2112744. 
  2. ^ Lindås, A.C., Karlsson, E.A., Lindgren, M.T., Ettema, T.J., Bernander, R. (2008年). “A unique cell division machinery in the Archaea”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (45): 18942-6. doi:10.1073/pnas.0809467105. PMID 18987308. Cann, I.K. (2008年). “Cell sorting protein homologs reveal an unusual diversity in archaeal cell division”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (45): 18653-4. doi:10.1073/pnas.0810505106. PMID 19033202. 
  3. ^ 生化学第86巻第1号, pp. 59-62(2014)
  4. ^ リボソームタンパクは68種であり、原核生物最多である。内訳は全生物に共通するものが34種、真核生物と古細菌に共通するものが28種、真核生物とクレン古細菌に共通するものが5種、クレン古細菌とユーリ古細菌に共通するものが1種
  5. ^ RpoG(真核生物のRpb6に相当)の存在
  6. ^ Huber, H., et al. (2008年). “A dicarboxylate/4-hydroxybutyrate autotrophic carbon assimilation cycle in the hyperthermophilic Archaeum Ignicoccus hospitalis”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (22): 7851-6. doi:10.1073/pnas.0801043105. 
  7. ^ M Kozubal, MF Romine, RdeM Jennings, ZJ Jay, SG Tringe, DB Rusch, JP Beam, LA McCue, and WP Inskeep. 2012. "Geoarchaeota: A New Candidate Phylum in the Archaea from High-Temperature Acidic Iron Mats in Yellowstone National Park." Submitted to The ISME Journal.
  8. ^ Barns, S. M., et al. (1996年). “Perspectives on archaeal diversity, thermophily and monophyly from environmental rRNA sequences”. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 93 (17): 9188–9193. PMID 8799176.