クルアーンの日本語訳

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クルアーンの日本語訳は、イスラーム聖典であるクルアーンの、日本語での翻訳アラビア語以外に移されたものは「解釈」にすぎないとみなされる[注 1])

概要[編集]

日本では大正に入って、コーランの翻訳がようやく刊行された。 コーランはもともとアラビア語で啓示され編纂されたものであるが、初期の日本語化は最初はアラビア語の原典からではなく主として英訳本を元にして行われていた。

2014年には中田考らによって正統10伝承の異伝を全て訳す翻訳本が出版された。

全訳
  • 1920(大正9年) 坂本健一 『世界聖典全集 : コーラン經(上 第十四卷・下 第十五卷)回々教』[1]
  • 1938 高橋五郎有賀阿馬土『聖香蘭経 : イスラム経典』聖香蘭経刊行会[2]
    原則ジョン・M・ロッドウェルの啓示類推順で章が配置されているが、一部異なる。アフマド有賀(有賀文八郎)は高橋五郎の翻訳を校正し、時には文言の訂正、書き換えを行っていた。また下訳の権利を買い取っていた。校正原稿はノートの形で現存している。英語が堪能だったアフマド有賀はインドでイスラームに改宗する前はキリスト教信者で主に横浜、東京で英国人宣教師と起居を共にして通訳兼宣教活動を行っていた。晩年、京都市左京区鞍馬口に住んでいたが、二階の部屋で常に声を高く朗読しながら読書をしていた。それほど文章には気を配っていたが、それは「日本に於けるイスラム教」『日本宗教大講座』全20冊、東方書院編、1927-28。の語りかける文体からも伺い知れる。その他、パンフレット、小冊子など多数の著作活動も行っていた。
  • 1950 大川周明 『古蘭』岩崎書店[3]コーラン翻訳の進捗状況は大川周明顕彰会編集『大川周明日記』岩崎学術出版社、1986に記されている。*:漢英仏独の諸訳本を参照[4]
  • 1957 井筒俊彦 『コーラン』岩波書店[5]。岩波文庫『コーラン』第9章、昭和32年発行にはないが、『井筒俊彦著作集7 コーラン』中央公論社、1992年、第9章「改悛」p235と岩波文庫『コーラン(上)』岩波書店、2006年第58刷、第9章「改悛」p250のどちらにも冒頭の第9章 改悛・・・の後の行に、前者は(慈悲深い慈愛あまねきアッラーの御名において…)と、後者は、慈悲深い慈愛あまねきアッラーの御名において…と、アラビア語原文『クルアーン』にも、井筒俊彦訳『コーラン』昭和32年発行にもないものを挿入している。編集部が間違って挿入したのであろうが、いづれにしても重大ミスである。在日イスラーム教徒及びイスラーム諸国外交団から何らかの形で絶版の抗議運動が予想される。第9章だけが「慈悲深い慈愛あまねきアッラーの御名において」の文言がない理由は、イスラーム教徒との協定を破った部族のことを扱っているからである。ちなみに第1章のみが同文言を章の1節とし、第9章を除く他の章は章を構成する第1節としていない。
    底本はフリューゲル版(1834年刊)。改訂版ではカイロ版の章数も参考的に併記されている。
  • 1970 藤本勝次, 伴康哉, 池田修『コーラン』[6]
    底本は、標準エジプト版(1923年刊)に準拠したクルアーン。
  • 1972 オマール・三田了一『聖クルアーン : 日亜対訳・注解』日訳クラーン刊行会[7]
  • 1988 モハマッド・オウェース・小林淳訳『聖クルアーン』イスラーム・インターナショナル・パブリケーションズ(アフマディア・ムスリム・センター名古屋)
  • 2013澤田達一『聖クルアーン : 日本語訳』啓示翻訳文化研究所(ISBN:978-600-92543-2-3)
  • 2014 中田考,中田香織,下村佳州紀,黎明イスラーム学術・文化振興会『日亜対訳 クルアーン――「付」訳解と正統十読誦注解』[8]


部分訳
囘敎圈硏究所の大久保幸次、月刊機関紙「囘敎圈」に昭和16年から24回連載 3章までを翻訳 『コーラン研究』刀江書院 1950年[9]
  • 1974 中村満次郎『コーランの世界』栄光出版社、示年代順に配列し、各章毎に哲学的解説(著者によると)を加えたもので、コーラン訳は、藤本勝次, 伴康哉, 池田修『コーラン』訳を使用している。
  • 1982年 アリ・安倍治夫訳『日・亜・英対訳 聖クルアーン』谷沢書房 (開序章および78-114章を所収)

日本ではクルアーンの翻訳が7回試みてこられ、完訳されたものは6点だと大川玲子はする[注 1]。もう1点の完訳に至らなかったもの(敗戦の影響とされる)は、囘敎圈硏究所の大久保幸次・小林元による1938年開始の作だった[注 2]

章題[編集]

藤本版は「○○の章」[注 3]
大川版は「○○章」
坂本版は「○○品」(「眞信者」は#23が複数、#40が単数。「人間」は#76が単数。#114は複数[注 4]

三田
1982
藤本
1970
井筒
1957
大川
1950
高橋
1938
坂本
1920
1 開端 開巻 開扉 開經 讃美の章
2 雌牛 雌牛 牝牛 牝牛 黄牛
3 イムラーン家 イムラーン家 イムラーン一家 イムラーン家 伊牟蘭
4 婦人 女人 女人 女人
5 食卓 食卓 食卓 食卓 餐卓
6 家畜 家畜 家畜 家畜 畜牛
7 高壁 高壁 胸壁 高壁 隔壁
8 戦利品 戦利品 戦利品 戰利品 掠略
9 悔悟 悔い改め 改悛 懺悔 懴悔
10 ユーヌス ヨナ ユーヌス[10] ヨナ 懴奈須
11 フード フード フード ホード 布度
12 ユースフ ヨセフ ユースフ[11] ヨセフ 猶須布
13 雷電 雷鳴 雷鳴 電雷 雷電
14 イブラーヒーム アブラハム イーブラヒーム[12] アブラハム 伊不良比牟
15 アル・ヒジュル ヒジル アル・ヒジュル ヒジル ヘヂル谷 巖谷
16 蜜蜂 蜜蜂 蜜蜂 蜜蜂 蜜蜂
17 夜の旅 夜の旅 夜の旅 夜行 夜旅行 伊色列
18 洞窟 洞穴 洞窟 洞窟 洞窟 洞穴
19 マルヤム マリヤ マルヤム[13] マリア 『マリヤ』『ザカリア』 瑪利亞母
20 ター・ハー ター・ハー ター・ハー タア・ハア タハ 他哈
21 預言者 預言者 預言者 豫言者 預言者等 豫言者
22 巡礼 巡礼 巡礼 參詣 巡拜
23 信者たち 信ずる人々 信仰者 信者 信者 眞信者
24 御光 光り 光明 光明
25 識別 フルカーン 天啓 識別 闡明 差別
26 詩人たち 詩人 詩人たち 詩人 詩人 詩人
27 螻蟻 蟻螘
28 物語 物語 物語り 來歴 故事
29 蜘蛛 蜘蛛 蜘蛛 蜘蛛 蜘蛛
30 ビザンチン ギリシア人 ギリシアびと 羅馬人 羅馬
31 ルクマーン ルクマーン ルクマーン ルクマーン 鹿古曼
32 アッ・サジダ 伏拝 跪拝 叩首 禮拜 崇敬
33 部族連合 部族連合 部族同盟 聯盟 連盟
34 サバア サバ サバア サバー 娑婆
35 創造者 創造者 天使 天使 造化
36 ヤー・スィーン ヤー・スィーン ヤー・スィーン ヤー・スーン ヤ、シン 耶信
37 整列者 整列者 整列者 整列者 整列 位階
38 サード サード サード サード サド 左度
39 集団 集団 群なす人々 隊伍 軍衆
40 ガーフィル 信者 信者 信者 眞信者[注 5]
41 フッスィラ 説明 わかりやすく 解説 解説
42 相談 協議 相談 商議 商量
43 金の装飾 装飾 光りまばゆい部屋飾り 金飾 黄金の裝飾 金裝
44 煙霧 煙氣 黒煙 煙氣
45 跪く時 跪く 腰抜けども 跪坐 跪坐
46 砂丘 砂丘 砂丘 アハカーフ 砂丘
47 ムハンマド マホメット ムハマンド[14] マホメット 麻訶末
48 勝利 勝利 勝利 勝利 捷利
49 部屋 部屋 私室 内房 内房
50 カーフ カーフ カーフ カーフ カーフ 可布
51 撒き散らすもの まき散らすもの 吹き散らす風 散布者 撒布
52 山嶽 山嶽
53 星辰 星辰
54 太陰 月輪 太陰
55 慈悲あまねく御方 慈悲ぶかいお方 お情ぶかい御神 大悲者 慈悲
56 出来事 出来事 恐ろしい出来事 不可避者 難抗
57 黒鐵 黒鐵
58 抗弁する女 異議を唱える女 言いがかりつける女 爭辯者 爭女
59 集合 追放 追放 追放 遷徙
60 試問される女 試される女 調べられる女 試女 試女
61 戦列 隊列 戦列 列伍 戰列
62 合同礼拝 集会 集会 集會 集會
63 偽信者たち 偽善者ども 似非信者ども 僞信者 僞善
64 騙し合い 騙しあい 騙し合い 相欺 相欺
65 離婚 離婚 離縁 離婚 離婚
66 禁止 禁止 禁断 禁止 禁制
67 大権 主権 主権 大權 王國 王國
68 筆翰 筆墨 光筆
69 真実 必然 絶対 必來者 不誤必來
70 階段 階段 階段 階段 階段
71 ヌーフ ノア ヌーフ ノア ノア
72 幽精 ジン 妖霊 幽鬼 神靈 妖精
73 衣を纏う者 衣をかぶる者 衣かぶる男 着絨衣者 包み抱かれた者 包套
74 包る者 外衣を纏う者 外衣に身を包んだ男 着套衣者 包み絡つて 掩蔽
75 復活 復活 復活 復活 復活
76 人間 運命 人間 人間 人類 人間
77 送られるもの 送られるもの 放たれるもの 神使 神使
78 消息 音信 知らせ 消息 新聞
79 引き離すもの ひき抜くもの 引っこ抜く者 抽出者 曳出 奪魂
80 眉をひそめて 眉をひそめた 眉をひそめて 顰蹙 彼は顰蹙 顰蹙
81 包み隠す つつみ隠す 巻きつける 摺疊 掩ひ包れて 摺疊
82 裂ける 裂ける 裂け割れる 分裂 剖分 分裂
83 量を減らす者 減量者ども 詐欺漢 減量者 偸量
84 割れる 割れる 真二つ 分散 分散
85 星座 星座 星の座 望樓 天徴
86 夜訪れるもの 夜の訪問者 明星 夜者來 夜來者 太白
87 至高者 至高なるお方 いと高き神 至高者 至高き 至上
88 圧倒的事態 隠蔽 蔽塞 壓倒者 壓伏
89 夜明け 黎明 暁天
90 國土 靈地
91 太陽 太陽 太陽 太陽 日月 太陽
92 暗夜 暗夜に 暗夜
93 午前 光輝
94 胸を広げる 拡張 張り拡げる 開胸 心を開く事 開胸
95 無花果 いちじく 無花果 無花果 無花果 無花果
96 凝血 凝血 凝血 凝血 血の凝塊もて 凝血
97 みいつ 聖断 定め 稜威 力夜
98 明証 明証 神兆 明證 明證
99 地震 地震 地震 地震 大地震 地震
100 進撃する馬 疾駆する馬 駿馬 戰馬 戰馬
101 恐れ戦く 叩く音 戸を叩く音 打撃者 打撃
102 蓄積 持ち物自慢 張り合い 競多 競望
103 時間 夕暮 日ざし傾く頃 午後 眞晝過 午下
104 中傷者 中傷者 中傷者 誹謗者 讒誣者 讒謗
105 巨象 象軍 香象
106 クライシュ族 クライシュ部族 クライシュ族 クライシュ族 コレイシ族 孤列種
107 慈善 慈善 慈善 布施 必需
108 潤沢 潤沢 カウサル 潤澤 豐澤
109 不信者たち 信仰なき者ども 無信仰者 不信者 不信者輩 不信
110 援助 助け 助け 佑助 神助
111 棕櫚 腐ってしまえ アブー・ラハブ アブー、ラハブ[15] 焔父
112 純正 真髄 信仰たゞひと筋 獨一 唯一神
113 黎明 黎明 黎明 曉天 黎明 拂曉
114 人々 人間 人間 人類 人類の爲 人間

脚注[編集]

出典・注釈
  1. ^ a b 「図説 コーランの世界」 pp.72 - 73 日本語で読むクルアーン 戦前より始まる「翻訳の試み」 (大川玲子、河出書房新社 2005) ISBN 9784309760605
  2. ^ 聖典「クルアーン」の思想――イスラームの世界観」 p.208 (大川玲子、講談社現代新書 2004) ISBN 9784061497115
  3. ^ 『世界の名著 15 コーラン』(1970)の目次を出典とした。
  4. ^ 訳典(第15巻10頁)にある注記から。
  5. ^ 訳典(第15巻目次3頁)では「眞者信」になっているが、同169頁では「眞信者」になっている。外部リンクを参考。
原典の正式表記

外部リンク[編集]

井筒
大川
高橋、有賀
坂本

関連項目[編集]