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ギリギラウ・コンクアン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ギリギラウ・コンクアン
Giljegiljaw Kungkuan
味全ドラゴンズ #4
プレミア12優勝を果たし、台湾総統頼清徳に謁見した際
(2024年11月27日)
基本情報
国籍 中華民国の旗 中華民国台湾
出身地 台中市
生年月日 (1994-03-13) 1994年3月13日(32歳)
身長
体重
180 cm
104 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 捕手
プロ入り 2012年 アマチュアFA
初出場 CPBL / 2021年8月25日
年俸 月給58万台湾元(2024年)
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム チャイニーズタイペイの旗 チャイニーズタイペイ
WBC 2023年2026年
プレミア12 2024年
獲得メダル
野球 男子
チャイニーズタイペイの旗 チャイニーズタイペイ
WBSCプレミア12
2024
アジア競技大会
2014
U-15アジア野球選手権大会
2010

ギリギラウ・コンクアンパイワン語: Giljegiljaw Kungkuan[1]繁体字:吉力吉撈・鞏冠[注 1]1994年3月13日 - )は、台湾台中市出身のプロ野球選手捕手)。右投右打。中華職業棒球大聯盟味全ドラゴンズ所属。

漢名および旧登録名は朱 立人(チュウ・リーレン、Chu Li-Jen)[3]台湾原住民パイワン族の出身であり、2019年オフシーズンよりパイワン語での民族名をそのまま(漢字の当て字及びローマ字)登録名としている(後述)。略称はギラウ(Giljaw)。

経歴

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プロ入りとインディアンス傘下時代

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台中市立西苑高級中学中国語版から国立台湾体育運動大学に進学。大学在学中の2012年クリーブランド・インディアンスとマイナー契約を結びプロ入り。傘下ルーキー級アリゾナリーグ・インディアンス英語版でキャリアを開始した。

2017年は傘下A級レイクカウンティで125試合に出場し、打率.269、17本塁打、67打点の成績を残した。ミッドウェストリーグオールスターゲームにも選出された。

2018年は主に傘下A+級リンチバーグでプレーしたが、シーズン終盤には短期間のみながら傘下AAA級コロンバスまで昇格。AAAへの昇格は台湾出身の捕手では史上2人目であった[注 2][4]

2020年COVID-19の影響でリーグの全試合が中止されたため試合出場機会は無かった。オフにFAとなり、台湾に帰国。

味全時代

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2021年は当初中華職業棒球大聯盟(CPBL)に加盟する味全ドラゴンズ二軍の練習に加わった。シーズン途中の7月12日に行われたCPBLドラフトで味全から1位指名を受け、8月20日に契約を交わし入団[5][4]。契約から5日後の8月25日に早くもCPBL初出場を果たした。最終的に54試合に出場して打率.256、11本塁打、32打点の成績を残した。

2022年は88試合に出場して打率.290、14本塁打、56打点の成績を残した。CPBLでは前年から使用球の反発係数を変更したことで本塁打が激減したため、同年は14本塁打ながら林立楽天)と同数のリーグ最多本塁打を記録し、最終的に規定上より打数の少なかったギリギラウが本塁打王のタイトルを獲得した[6]

2023年

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同年3月に開催された第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、自身初となるチャイニーズタイペイ(台湾)代表に選出された[7]

地元開催となった1次ラウンド・プールA(台中インターコンチネンタル野球場)のイタリア戦(3月10日)では、8-7と台湾が1点リードして迎えた8回裏に、貴重な追加点となるダメ押しの3ランホームランを放った。この一撃により台湾代表はイタリア代表を11-7で突き放して勝利を収めた[8]。この国際大会での勝負強いバッティングにより、持ち味である「長打力を備えた打てる捕手」としての存在感を世界に向けて大きくアピールした[9]

シーズンでは106試合に出場して打率.284、23本塁打、67打点の成績で、2年連続となる本塁打王のタイトルを獲得した[10]

2024年

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シーズンを通してチームの主軸として自身最多の120試合に出場。打率.279、23本塁打、78打点という好成績を残し、8月にはCPBLの月間MVPを受賞した。

同年11月に開催された第3回WBSCプレミア12では、チャイニーズタイペイ(台湾)代表に選出。1次ラウンドのオーストラリア戦では9回表に代打でダメ押しの3ランホームランを放ち、チームのスーパーラウンド進出を決定づけたほか[11]、続くキューバ戦でも先制の適時二塁打を放つなど[12]、持ち前の長打力と勝負強さを発揮した。同大会では6試合に出場して打率.333、1本塁打、5打点を記録し、台湾代表の大会初優勝に大きく貢献した。

なお、東京ドームで行われた決勝戦で優勝を決めた直後、歓喜のあまりグラウンドの二塁ベースを引き抜いて高く掲げ、そのまま台湾へ持ち帰るという行動を見せた[13]。帰国後の会見では「世界一になるためには、必ず二塁ベースを通過しなければならないから」とベースを珍蔵した理由を語り、台湾のファンやメディアの間で大きな話題となった[14]

2025年

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2月4日、味全ドラゴンズの春季キャンプ開始に際し、前任の呉東融(ウー・ドンロン)から引き継ぐ形で新キャプテン(隊長)に就任することが発表された。監督の葉君璋は、吉力吉撈の「周囲への高い影響力(渲染力)」と30歳という年齢を評価しての抜擢だと語っており、本人にとっては人生初のキャプテン経験となった[15]

同年シーズンは全120試合に出場して打率.274、24本塁打、自己最高の86打点を記録し、自身初となる打点王のタイトルを獲得。6月および9・10月の月間MVPに輝いたほか、7月のオールスターゲームで開催されたホームランダービーでは11本塁打を放ち1位タイの成績を収めるなど、1年を通して力強く打線を牽引した。

2026年

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同年開催の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、チャイニーズタイペイ代表の最終30人ロースターに選出された。

人物

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氏名の表記および発音について

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先述の通り台湾原住民であるパイワン族の出身で、ギリギラウが本人の名前である。その意味は「勇敢な戦士」である[16]、コンクアンが彼の所属している家の名前(家名)である[17]。2019年のオフに登録名を変更している。マイナーリーグで台湾の選手が原住民の母語表記となるのは初だった。CPBL入団後もこの登録名で台湾のプロ野球史上初の母語登録 (アルファベット表記)となった。2023年のWBCの際には台湾メディアの記者から呼び方を聞かれるなど、原住民の言語や文化などへの認識の低さなどの課題が見え、本人も家族もパイワン語で呼ばれることを望んでいると取材で応じた[17]

2024年に開催された第3回WBSCプレミア12の際、試合中継を行った日本のTBSやその他の一部メディアでは、繁体字の当て字 (元の発音とは異なる)[注 1]である吉力吉撈・鞏冠を、日本語漢字の音読みであるキチリキキチロウ・キョウカンで字幕表示し、アナウンサーも同様に発音し放送。台湾原住民族青年公共参与協会や原住民族青年陣線など複数の団体が抗議し、元の発音に近い「ギリギラウ・コンクアン」と表記・発音するようにSNSを通じて要望し、後日本人からも同様の要請を行った[18][注 3]。これを受け、表記及び発音は修正されている[19]

詳細情報

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年度別打撃成績

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O
P
S
2021 味全 54 226 203 24 52 8 0 11 93 32 1 0 0 5 17 1 1 46 9 .256 .310 .458 .768
2022 88 354 318 41 91 18 1 14 153 56 0 0 0 3 30 1 3 70 10 .286 .350 .481 .831
2023 106 436 388 58 110 21 2 23 204 67 1 1 0 3 37 3 8 89 11 .284 .356 .526 .882
2024 120 508 455 60 127 21 0 23 217 78 0 0 0 5 41 4 7 93 10 .279 .344 .477 .821
2025 120 499 453 54 124 42 0 24 238 86 4 0 0 2 35 3 9 88 15 .274 .337 .525 .862
通算:5年 488 2023 1817 237 504 110 3 95 905 319 6 1 0 18 160 12 28 386 55 .277 .342 .498 .840
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別打撃成績所属リーグ内順位

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O
P
S
2021 27 CPBL - - - - 7位 - - - - -
2022 28 - - 9位 - 1位 5位 - - - -
2023 29 - - 5位 - 1位 4位 - 10位 1位 3位
2024 30 - 6位 8位 - 2位 3位 - - 2位 5位
2025 31 - 6位 1位 - 2位 1位 - - 3位 4位
  • 「-」は10位未満(打率、出塁率、長打率、OPSは規定打席未到達の場合も「-」と表記)

WBCでの打撃成績

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2023 チャイニーズタイペイ 4 14 12 4 4 1 0 1 8 3 0 0 0 0 2 0 0 2 0 .333 .429 .667

WBSCプレミア12での打撃成績

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2024 チャイニーズタイペイ 6 17 15 2 5 1 0 1 9 5 0 0 0 0 2 0 0 6 1 .333 .412 .600

年度別守備成績

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捕手守備


捕手






















2021 味全 19 115 7 1 0 .992 1 19 18 1 .053
2022 45 278 25 1 3 .997 1 49 40 9 .184
2023 23 116 12 0 3 1.000 4 23 16 7 .304
2024 28 182 13 2 0 .990 0 28 22 6 .214
2025 18 88 15 0 0 1.000 1 23 18 5 .217
通算 679 4279 548 39 59 .992 7 142 114 28 .197
內野守備


一塁












2025 味全 41 280 38 3 26 .991
通算 41 280 38 3 26 .991
  • 2025年度シーズン終了時

タイトル

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記録

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初記録

背番号

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  • 44(2021年 - 同年途中)
  • 4(2021年途中 - )

代表歴

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脚注

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注釈

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  1. ^ a b パイワン語の音に近い音を持つ漢字を当てたもので、この漢字を中国語マンダリン読みしたものは、原音との乖離がある。中国語マンダリンには[gi]という音節がないので、漢字の「吉(jí)」を当てている。今までの報道・ネット記事では、漢訳された名前のピンイン(jílìjílāo gǒngguān)を、そのまま日本式のローマ字読みし、ジリジラオ・ゴングァンと書いてあるものもあるが、もとのパイワン語の音とは大きな乖離があるので注意すべきである[2]
  2. ^ 1人目は2016年にピッツバーグ・パイレーツ傘下のAAA級インディアナポリスでプレーした張進徳中国語版
  3. ^ 日本統治時代や中国国民党独裁時代以降、氏名表記は(パイワン語ではなく)繁体字での戸籍登録などを強要されたなど言語や文化の長期的な差別や迫害を受けた歴史を持つ中で、近年の台湾では氏名登録の条例改正など原住民族独自の言語や文化が知られつつあるが課題も多く、当該団体も人権や社会的地位の向上につながればと取材に答えている[17]

出典

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  1. ^ 棒球》朱立人改回排灣族名 明年連登錄名都會改 - 自由體育”. 自由時報電子報 (2019年12月5日). 2023年3月12日閲覧。
  2. ^ 張雄風, 楊啓芳 / 編集: 齊藤啓介「プレミア12/プレミア12 話題の選手名は「ギリギラウ」 先住民団体が周知呼びかけ/台湾」『フォーカス台湾』2024年11月21日。2024年11月21日閲覧。
  3. ^ 林宥辰 (2019年12月5日). “朱立人改回排灣族名 明年連登錄名都會改”. 自由時報. オリジナルの2020年9月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200929120725/https://sports.ltn.com.tw/news/breakingnews/2999707 2022年10月28日閲覧。 
  4. ^ a b 楊啟芳; 張新偉 (2021年8月20日). “吉力吉撈加盟味全龍 簽2.4年總值1293萬元”. 中央通訊社. オリジナルの2022年2月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220214081156/https://www.cna.com.tw/news/aspt/202108200312.aspx 2022年10月28日閲覧。 
  5. ^ “今年の台湾ドラフトは即戦力の宝庫 元ロッテ・チェンら1位指名5人は全員が元日米プロ”. Full-count. (2021年7月21日). https://full-count.jp/2021/07/21/post1111896/ 2022年10月28日閲覧。 
  6. ^ “台湾プロ野球で珍事、14発で本塁打王 “飛ばないボール”で打高投低に異変”. Full-count. (2021年10月27日). https://full-count.jp/2022/10/27/post1300107/ 2022年10月28日閲覧。 
  7. ^ チャイニーズ・タイペイ”. WBC2023 (2023年3月). 2026年3月1日閲覧。
  8. ^ 經典賽/中華隊全場3支全壘打11比7擊退義大利”. 公視新聞網 (2023年3月10日). 2026年3月1日閲覧。
  9. ^ 經典賽》中華隊全壘打傲視群雄 打擊率更優於日本排名第1”. 麗台運動報 (2023年3月11日). 2026年3月1日閲覧。
  10. ^ 陳宛晶 (2023年10月24日). “中職/個人獎底定…廖健富逆襲失敗 吉力吉撈全壘打王二連霸” (中国語). 聯合新聞網. 2024年1月13日閲覧。
  11. ^ 12強賽吉力吉撈代打開轟「敬禮」 直言台灣能打強力棒球”. 中央通訊社 (2024年11月18日). 2026年3月1日閲覧。
  12. ^ 【12強看東森】吉力吉撈2壘安打霸氣奪下第1分!台灣1:0領先古巴”. 東森新聞 (2024年11月18日). 2026年3月1日閲覧。
  13. ^ 12強賽》奪冠太興奮吉力吉撈.鞏冠拔走東京巨蛋二壘壘包”. TSNA (LINE TODAY配信) (2024年11月25日). 2026年3月1日閲覧。
  14. ^ 12強/再見雙殺「冠軍球」球迷求展出 吉力吉撈拔壘包帶回珍藏”. 客新聞 (2024年11月27日). 2026年3月1日閲覧。
  15. ^ 中職》葉總欽點當隊長更有渲染力 吉力吉撈・鞏冠扮演新龍頭 - 麗台運動報” (中国語). www.ltsports.com.tw. 2026年3月1日閲覧。
  16. ^ 「キチリキキチロウ」→「ギリギラウ」TBSが台湾選手『吉力吉撈鞏冠』の呼び名を改め紹介「ギリギラウは勇敢な戦士という意味」【プレミア12】”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ (2024年11月23日). 2024年11月24日閲覧。
  17. ^ a b c 許仁碩 (北海道大学メディア・コミュニケーション研究院助教) (2024年11月22日). “名前が話題の台湾野球選手、本来の読み方に想い”. 東洋経済オンライン. 2024年11月24日閲覧。
  18. ^ 「キチリキキチロウ」とは呼ばないで…台湾代表選手を先住民・パイワン族の発音で呼ぶよう要望 (園田将嗣)”. 読売新聞オンライン (2024年11月23日). 2024年11月24日閲覧。
  19. ^ 「キチリキキチロウ」→「ギリギラウ」TBSが台湾選手『吉力吉撈鞏冠』の呼び名を改め紹介「ギリギラウは勇敢な戦士という意味」【プレミア12】”. 中日スポーツ (2024年11月23日). 2024年11月25日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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