ギャップ・イヤー
ギャップ・イヤー(英: gap year)とは、高等学校卒業から大学への入学までのモラトリアムのこと。英語圏の大学(特に英国の大学)の中には入試から入学までの期間をあえて長く設定して(7月卒業、9月入学)、その間に大学では得られない経験をすることが推奨されている[1]。
意義
[編集]本来は大学入学資格(フランスを含む多くのヨーロッパ圏ではバカロレア、ドイツとフィンランドではアビトゥーア)を得た若者が入学を延期して親元を離れ、長期旅行、ボランティア、国内外留学、インターンシップ、アルバイトなどを体験することを言った[2]。イギリスで1960年代からみられるようになった慣行で、特に1990年代以降に安価に渡航できるようになったことで一般的になった[2]。本来は大学入学前のものを言ったが、休学時のほか卒業後のスキルアップや能力開発も含む概念として用いられるようにもなっている[2]。
ギャップ・イヤーの類義語にギャップ・タームがあるが、これは、2012年頃に、3月の高校の卒業時期を維持したまま、東京大学が大学入学時期を5ヶ月後の9月にすることを検討した際に、学校生活では得られない経験を奨励する時期として、関係者が作った和製英語である。
日本における導入状況
[編集]日本における最初の事例とされるのは、2002年(平成14)から2003年(平成15)に倉敷芸術科学大学において実施された、単位認定を前提に、AO入試合格者が入学後1年生後期の半年間大学を離れるプログラム(GAP制度)であり、2002年には13名が志願し、6名の学生が海外留学した。この他、2004年(平成16)から実施されている名古屋商科大学の「海外ギャップイヤー留学」の事例、2008年(平成20)から実施されている国際教養大学の「ギャップイヤー入試」の事例などがあり、2011年(平成23)以降の東京大学における秋入学検討時の成果の一つであり、2013年(平成25)から実施されている「FLY Program(初年次長期自主プログラム)」や、2013年に実施され、海外留学でなく地域での課題解決に重点を置き、複数の大学の学生が参加した「京都ギャップイヤー」事業などもギャップ・イヤーの取組みと言える[3]。
国レベルでの議論については、文部省から諮問を受けた中央教育審議会は、2002年(平成14)2月に「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」[4]の中で、教養教育を重要性を説きつつ、その取組みとしてギャップ・イヤーを紹介したのが最初であるが、日本で本格的な議論となったのは、2011年(平成23)の東京大学における秋入学検討発表以降で、メディアでも取り上げられるようになり、2013年(平成25)6月13日には日本経済団体連合会が『「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」-グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言-』[5]の中でギャップ・イヤー推進の立場を表明した[3]。
2014年(平成26)5月29日に文部科学省が「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて(意見のまとめ)」[6]を公開し、文部科学省の平成27年度「大学教育再生加速プログラム」により、2014年秋から12校の大学・短期大学・高専でギャップ・イヤー制度が導入されることとなった[7]。
主なギャップ・イヤー制度実施大学
[編集]- (北海道・東北)
- (関東)
- 東京大学 初年次長期自主活動プログラム:FLY Program (Freshers’ Leave Year Program)【入学後】[12][13]
- 入学した直後の学部学生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得し、大学以外の場において長期間の社会体験活動を行う制度
- 工学院大学 ハイブリッド留学【入学後】[14][15]
- 渡航する教員が授業を日本語で実施、滞在中は英語で生活する、というハイブリッドな環境による独自留学制度
- 津田塾大学 ギャップターム【入学後】[16]
- 東京工科大学 工学部 コーオプ教育【入学後】[17]
- 文化学園大学 梅春学期(長期学外学修プログラム)【入学後】[18]
- 武蔵野大学 フィールド・スタディーズ【入学後】[19]
- 東京大学 初年次長期自主活動プログラム:FLY Program (Freshers’ Leave Year Program)【入学後】[12][13]
- (中部)
- (近畿)
- (九州)
日本ギャップイヤー推進機構協会
[編集]専門的に調査研究・推進・啓発する団体として、2011年(平成23)に日本ギャップイヤー推進機構協会が設立された[3]。同協会は、2013(平成25)に日本で初めての『ギャップイヤー白書』を発行し[3]、2013年(平成25)6月22日開催の「ギャップイヤー・フェスタ」にて配布した。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ↑ 4月入学、3月卒業は世界的に見ても日本のみ
- 1 2 3 藤田和志、家田仁. “修学旅行にみる『旅』の意義〜自己錬磨型教育旅行の導入・変容そして現代的意義〜”. 土木学会. 2021年2月12日閲覧。
- 1 2 3 4 杉岡秀紀「わが国におけるギャップイヤーの導入事例-インターンシップの課題克服の視座を中心として」『京都府立大学学術報告(公共政策)』第7号、京都府立大学、2015年12月、159-175頁。
- ↑ “新しい時代における教養教育の在り方について(答申)”. 中央教育審議会 (2002年2月21日). 2026年4月7日閲覧。
- ↑ “「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」-グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言-”. 日本経済団体連合会 (2014年6月13日). 2026年4月7日閲覧。
- ↑ “学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて(意見のまとめ)”. 文部科学省 (2014年5月29日). 2026年4月7日閲覧。
- ↑ “今秋から10大学でギャップイヤー制度導入”. 大学ジャーナルオンライン (2015年8月12日). 2026年4月7日閲覧。
- ↑ “グローカルコース”. 小樽商科大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “日本初のギャップイヤープログラムに要注目!国内唯一無二。ビジネスに特化した国立の社会科学系単科大学─小樽商科大学”. 大学通信Online (2025年10月8日). 2026年4月9日閲覧。
- ↑ “ギャップイヤー入試(9月入学)”. 国際教養大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ 中津将樹「ギャップイヤー入試:どのようにギャップイヤーと入学試験を結びつけるか」『大学入試研究ジャーナル』第23号、大学入試センター、2013年、165-170頁、doi:10.57513/dncjournal.23.0_165、ISSN 1348-2629。
- ↑ “FLY Program”. 東京大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ 笹原風花「ベルトコンベアから降りて立ち止まり、高校までの学びや価値観をリセットする : 東京大学「FLY(フライ) Program」」『Career guidance=キャリアガイダンス』56(1)、リクルート、2024年1月、12-13頁。
- ↑ “ハイブリッド留学”. 工学院大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “「ハイブリッド留学」を軸に独自展開進化する工学院大学のグローバルプログラムの特色とは”. 大学ジャーナルオンライン (2017年2月8日). 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “学外学修”. 津田塾大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “コーオプ教育”. 東京工科大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “キャンパスカレンダー”. 文化学園大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “フィールド・スタディーズ”. 武蔵野大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “ギャップイヤー留学”. 名古屋商科大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “長期学外学修科目”. 新潟大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “DiCoResプログラム・長期学外学修プログラム”. 浜松学院大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “神戸GCP”. 神戸大学. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “学生便覧 令和6年度”. 長崎短期大学. 2026年4月8日閲覧。
外部リンク
[編集]- “ギャップイヤー”. 人事ポータルサイト【HRpro】. 2026年4月17日閲覧。
- “一般社団法人 日本ギャップイヤー推進機構協会(JGAP)”. 2026年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月9日閲覧。
- “ギャップイヤー・プラットフォーム(GP)”. 2021年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月9日閲覧。
- “ギャップイヤー白書2013 ギャップイヤー それは「空白」ではなく「機会」の創出”. 2021年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月9日閲覧。