ガム型電池

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ガム電池から転送)
パナソニック製のガム型ニッケルカドミウム電池

ガム型電池(ガムがたでんち、: gumstick battery)は電池の一種で、板状のチューインガムを2~3枚程度重ねた形状の電池のことである。

ほぼ全てが二次電池である。1985年にポータブルオーディオ装置などのために開発された。2000年代以降、新発売の機器では用いられることはほぼなくなった。

概要[編集]

ウォークマン用ガム型電池(黄緑色の帯がニッケル・カドミウム蓄電池、オレンジ色の帯がニッケル・水素充電池
専用充電器

1985年ソニー日本電池(当時)が共同開発した[1]

もともとは主に携帯カセットプレーヤー(や携帯CDプレーヤー)のために開発された電池で、後に他種の携帯機器でも用いられるようになった。 1979年登場した初代ウォークマンやそれに続いた各メーカーの携帯カセットプレーヤーでは、基本的に電源として単三乾電池を使用するのが当然視されていた。(なお通常の乾電池(一次電池)は使いきるたびに買い替えなければならずランニングコストがそれなりにかかったので、ユーザーの中には、単三型の二次電池(当時は主にニッカド電池)を用いる人もいた。)各社は携帯カセットプレーヤーの小型化を進めるために必要な課題を洗い出し、より小型の新製品を発売していったが、やがて徐々に小型化が進展しにくくなり、電池の改良が課題として浮上した。

こうしてソニーが携帯ステレオ用に開発するに至ったのがこのガム型電池である。1985年発売のウォークマン・WM-101で初採用され、その後多数のメーカーからガム型電池採用モデルが発売された。当初はメーカーごとにサイズや仕様にばらつきがあったものの、次第にソニーが開発したNC-5WMのサイズ・仕様がデファクトスタンダードとなり、以降は各社ともソニー規格で発売された。ガム型電池としての蓄電池はニッケル・カドミウム蓄電池ニッケル・水素充電池リチウムイオン二次電池シール鉛蓄電池などが販売された。

ソニーは縦方向の長さを短くしたガム型電池(NC-4WM)も開発した。通常のものに比べ容量が減少するために、主にワイヤレスレシーバーなどで採用されたが、シャープなど本体電源に採用するメーカーも存在した[注 1]

ユーザーには、あくまで小型・軽量を最優先にしたい場合と、それを多少犠牲にしても長時間聴きたい場合と、どちらの状況もありうるので、それら相反する需要を同時に満たすため、複数のメーカーが「本体 + 外付けバッテリーケース」という方式を導入し、広まった。本体にはガム型電池のみ収納部を設け、小型化を実現し、より長時間連続で聴きたい場合は外付けの(単三型)乾電池ケースを合体させる、という方式である。2000年以降はポータブルオーディオの省電力化が一層進んだため外付けケースを使うユーザーも減少したためかケースが存在しない機種もでてきた[2]。単三電池とガム型電池の兼用収納部を持つ機種も存在したが、併用による長時間再生ができないという欠点があり、採用例は少数に留まった。

一次電池タイプ[編集]

アメリカの大手乾電池メーカーであるデュラセルが海外市場にてNC-5WMと同形状で一次電池のアルカリマンガン電池を製造・販売していた。デュラセルではLP1という型番でポータブルオーディオ用電池という名称であった。

互換品[編集]

2015年以降は、新規に発売される主流のデジタルオーディオプレーヤーの大半が電池内蔵型となったため、次第に大手メーカーはガム型電池の製造・販売から撤退していった。その結果、ガム電池を使用するポータブルのコンパクトカセット、CDプレイヤー、MDプレイヤー等が新製品市場から姿を消すことにもなった。だが、すでに所有した機器を長年にわたり使い続けているユーザーも世の中にはそれなりの数おり、その結果、ガム型電池の部分を買い替えるユーザーもいるので、ガム型電池の需要は引き続き存在しつづけている。2018年現在でもガム型電池は購入可能で、たとえばネット通販のAmazon.comAmazon.co.jp等でガム型電池(SONY互換のニッケル水素タイプのもの。サードパーティ製で中国製・香港製・台湾製など)が多種、販売されている。かつての正規品よりも安価で、それでいながらむしろ容量が増しているものもある。また家電量販店や電子部品小売店などでも、やはりサードパーティ製のNC-5WM互換のニッケル水素タイプのものが入手できる場合もある。

サイズ[編集]

NC-5WM形 幅16.7×高さ66.7×奥行5.9mm。 それより小型(NC-4WM型)では、5WMに比べて高さがこれより約19mm短い構造になっている。

ポータブルオーディオ以外の採用例[編集]

おもな製造メーカー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ この方式のガム電池は2000年代以降は入手困難となっている。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]