カンムリガメ
カンムリガメ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() カンムリガメ Hardella thurjii
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保全状況評価[a 1][a 2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.2.3 (1994)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Herdella thurjii (Gray, 1831) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
カンムリガメ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Crowned river turtle Brahminy river turtle |
カンムリガメ(Hardella thurjii)は、爬虫綱カメ目イシガメ科カンムリガメ属に分類されるカメ。本種のみでカンムリガメ属を構成する。
分布[編集]
インド北部、パキスタン南東部、バングラデシュのインダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川水系[1][2][3]
形態[編集]
最大甲長61センチメートル[2][3]。オスよりもメスの方が大型になり、オスは最大でも甲長17.5センチメートル[3]。背甲はドーム状に盛り上がり[1]、上から見ると第2椎甲板と第3椎甲板の継ぎ目(シーム)で最も幅広い細長い楕円形[3]。椎甲板にはあまり発達しない筋状の盛りあがり(キール)があり、成体では椎甲板後部に瘤状の隆起を残すのみになる[3]。背甲の色彩は黒や暗灰色、暗褐色、暗緑色。肋甲板と縁甲板のシームには黄色や薄橙色の筋状の斑紋が入る[1][3]。縁甲板の外縁は黄色い。腹甲の色彩は黄色や黄褐色で、甲板ごとに黒い斑紋が1つずつ入る。
頭部は中型[3]。吻端はあまり突出せず、上顎の先端は凹む[3]。嘴の外縁は鋸状に尖り、咬合面は幅広い[3]。これにより植物を噛み切り、細かくすることに適している[3]。頭部や四肢、尾の色彩は黒や暗褐色で、側頭部に左右に3本ずつ黄色い筋模様が入る[3]。
体内から長径5.1センチメートル、短径3.4センチメートルの卵が発見された例がある[3]。孵化直後の幼体は甲長5.4-6.2センチメートル[3]。幼体は椎甲板のキールや後部縁甲板の突起が明瞭だが、成長に伴い消失する[3]。
オスの成体は腹甲の中央部がわずかに凹む[3]。尾は太くて長く、尾をまっすぐに伸ばした状態では総排泄口全体が背甲の外側にある[3]。 メスはオスに比べると背甲が幅広く甲高が高い[3]。メスは腹甲の中央部が平坦か、わずかに突き出る個体もいる[3]。尾は細くて短く、尾をまっすぐに伸ばした状態でも総排泄口全体が背甲よりも内側にある[3]。
分類[編集]
2亜種に分かれるが、識別形態が成長に伴う形態の変化にすぎない(基亜種でも幼体は肋甲板の初生甲板がキール状になり、亜種ガンジスカンムリガメでも幼体でわずかにキールがあるが成長すれば消失する)可能性があり不明瞭である[1][3]。
- Hardella thurjii thurjii (Gray, 1831) ガンジスカンムリガメ Ganges crowned river turtle
- Hardella thurjii indi Gray, 1870 インダスカンムリガメ Indus crowned river turtle
生態[編集]
流れの緩やかな河川や、湖沼、三日月湖、池、湾処などに生息し[2]、底質が泥で水生植物の繁茂した環境を好む[1][3]。乾季に干上がる一時的な水場や、河口や三角州といった汽水域に生息する事もある[3]。水棲傾向が強く、乾季に水が干上がった場合や産卵を除いて上陸する事はまれ[3]。乾季に水場が干上がると、陸伝いに別の水場に移動したり泥中に潜って乾燥をやり過ごす[3]。水面に浮かびながら日光浴を行うこともある[1][3]。
食性は植物食で、主に水辺の植物の葉(スゲ属、キシュウスズメノヒエなど)や水生植物、藻類などを食べる[2][3]。
繁殖形態は卵生。4-7月に主に水深50-180センチメートルの浅瀬で、オスは前肢(人間でいう手の甲)をあわせて音を出し頭部をメスの頭部に摺り寄せて求愛する[3]。基底が砂の場所に後肢で穴を掘り、1回に14-19個の卵を産む[3]。メスは夜間に上陸して産卵に合った場所を探して50-1,000メートルの距離を移動する[3]。
人間との関係[編集]
生息地では卵も含めて食用とされることもある[3]。
食用の乱獲などにより生息数は激減し、河川開発による生息地の破壊によっても生息数が減少していると考えられている[3]。2013年にワシントン条約附属書IIに掲載された[a 1]。
ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。水場を広く取ったアクアテラリウムで飼育される。餌として野菜や果実、水草などを与える[1][3]。飼育下では人工飼料にも餌付くが、植物質が多く含まれる植物食の魚類の配合飼料を与えることが望ましい[1]。飼育下でオスや幼体は動物質を食べた例もある[3]。メスは大型化するため、大型のケージが用意できない限り一般家庭での飼育には向かない[3]。
参考文献[編集]
- ^ a b c d e f g h i j 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ2 ユーラシア・オセアニア・アフリカのミズガメ』、誠文堂新光社、2005年、13頁。
- ^ a b c d e f 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、203頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 安川雄一郎 「バタグールガメ属グループの分類と生活史1」『クリーパー』第28号、クリーパー社、2005年、83、118-123頁。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- ^ a b CITES homepage
- ^
The IUCN Red List of Threatened Species
- Asian Turtle Trade Working Group 2000. Herdella thurjii. In: IUCN 2012. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2012.2.