カワシンジュガイ
カワシンジュガイ | ||||||||||||||||||
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![]() 画像はホンカワシンジュガイ Margaritifera margaritifera
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||
絶滅危惧IB類(環境省レッドリスト)![]() | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Margaritifera laevis(Haas,1910) | ||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||
カワシンジュガイ | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Freshwater pearl mussel |
カワシンジュガイ(川真珠貝、Margaritifera laevis)は、イシガイ目カワシンジュガイ科の二枚貝。令和4年(2022年)、希少野生動植物種に指定された。
生態[編集]
殻長は15cm[2]。遺伝的および形態的に、本種とコガタカワシンジュガイ(小型川真珠貝、Margaritifera togakushiensis)の2種類に分けられる。
殻の色は褐色から黒色まで変異があり、内側は真珠のような光沢がある[3]。寿命は50年から100年と推定され[4]、150年以上生きた個体も見つかっている[2]。
殻の半分ほどが川底から出るように突き刺さり、川の地形、流速を安定させる役割を果たしている[5]。
大きさ0.07-0.46mm[6]のグロキディウム幼生は、アマゴ[3]、イワナ[7]、オショロコマ[8]、サクラマス[9]、サツキマス[9]、ニジマス[3][注釈 1]、ヤマメ[3][7]などサケ科の魚のエラに1-2か月寄生する[11]。コガタカワシンジュガイはアメマス[11]、イワナ[2]を利用する。
分布[編集]
コガタカワシンジュガイとは北海道別海町・清里町・富良野市、長野県長野市で分布域が重なる[13]。
利用[編集]
縄文時代から食用、紀元前から真珠・ボタンなどの装飾のほか、アイヌは貝殻を石包丁のように用いた[2]。
タナゴ類の繁殖にも用いられる[14]。本種、イシガイ、オバエボシガイ、カタハガイ、ドブガイ、マツカサガイなどのうち、ミヤコタナゴはどの二枚貝を選択するかの研究では、本種を最も多く選択することが示唆されている[15]。
反面、サケ類のエラに本種のグロキディウム幼生が大量に寄生すると窒息死するため、水産分野では寄生虫として扱われている[6]。
保全状態評価[編集]
- 絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
- 特定第二種国内希少野生動植物種
本種とコガタカワシンジュガイは生息地での改修工事や水質悪化、さらにタナゴ類の繁殖目的での乱獲などの影響で絶滅の危機に瀕している[12]。
また、たくさんいるように見えても稚貝が確認できず、将来的に消滅すると予想される個体群もある[4]。
レッドリストでは販売目的での採取、譲渡に対して規制がないため2022年以前は大量に取引されていたが、特定第二種国内希少野生動植物種への指定により禁止された[12]。
なお、本種が大量に取引されていたネットオークションのヤフオク!は駆け込み需要を防ぐため、希少野生動植物種への指定直前に本種とコガタカワシンジュガイの出品を禁止した[16]。
天然記念物[編集]
地域レベルでは岡山県真庭市[17]、岩手県岩泉町[18]・野田村[19]、長野県長野市[7]、広島県庄原市[20]などで天然記念物に指定されている。
関連項目[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ “カワシンジュガイ”. レッドデータブック・レッドリスト. 環境省. 2023年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ a b c d 三浦一輝 (2020年6月3日). “第8回 カワシンジュガイの世界 ~魚にくっつく二枚貝がいる?~”. BuNa - Bun-ichi Nature Web Magazine. 文一総合出版. 2022年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ a b c d “カワシンジュガイ”. 岐阜県 (2015年9月16日). 2023年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ a b 三浦⼀輝 (2018年2月7日). “希少淡水二枚貝カワシンジュガイ類の絶滅の遅れ~死にゆく個体群の現状把握~ (PDF)”. 平成29年度厚岸湖・別寒辺牛湿原学術研究奨励補助研究テーマ一覧および報告書等. 厚岸水鳥観察館. 2023年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ “二枚貝が川底の安定性守る 斜里町立知床博物館など、絶滅危惧種で実証”. サイエンスポータル (科学技術振興機構). (2021-10-21) 2023年1月26日閲覧。.
- ^ a b “Margaritifera laevis(カワシンジュガイのグロキジウム幼生)”. 水産食品の寄生虫検索データベース. 東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻DPAF事務局. 2023年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月26日閲覧。
- ^ a b c “指定文化財詳細 カワシンジュガイ”. 長野市文化財データベース. 長野市. 2022年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ 栗原善宏. “カワシンジュガイ科貝類とサケ科魚類の宿主-寄生関係と遺伝的多様性” (PDF). 平成16年度厚岸湖・別寒辺牛湿原学術研究奨励補助成果報告書 (厚岸水鳥観察館) 2023年1月25日閲覧。.
- ^ a b 三浦一輝・川尻啓太・臼井平・石山信雄・秋山吉寛・渥美圭佑・根岸淳二郎・中村太士 (2018). “枝幸町内における淡水二枚貝コガタカワシンジュガイ(Margaritifera togakushiensis)の生息情報” (PDF). Bulletin of the Okhotsk Museum ESASHI (枝幸町) 2023年1月25日閲覧。.
- ^ 北野聡・小林収・山本祥一郎 (2010年3月). “外来マス類はカワシンジュガイの宿主となるか”. 日本生態学会第57回全国大会講演要旨. 日本生態学会. 2023年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月26日閲覧。
- ^ a b c “カワシンジュガイの不思議な生態”. 郷土館発 なかしべつ学. 中標津町郷土館 (2015年7月). 2022年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ a b c “絶滅危惧種「カワシンジュガイ」販売目的の採取・譲渡禁止へ”. 日本放送協会サケチャンネル. (2021年12月13日). オリジナルの2021年12月20日時点におけるアーカイブ。
- ^ 秋山吉寛・臼井平・町田善康・村山裕 (2014). “枝幸町におけるカワシンジュガイ科貝類の分布状況” (PDF). Bulletin of the Okhotsk Museum ESASHI (枝幸町) 2023年1月25日閲覧。.
- ^ “ミヤコタナゴの水槽にカワシンジュガイを投入”. 野毛山動物園 (2019年5月23日). 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ 秋山信彦; 今井秀行; 小笠原義光 (1994). ミヤコタナゴの産卵基質として用いたカワシンジュガイの有効性. 42. pp. 231-238. doi:10.11233/aquaculturesci1953.42.231.
- ^ 小坪遊 (2022年1月22日). “法規制に先立つ希少種取引禁止 ヤフオクに背景と今後を聞いてみた”. 朝日新聞. オリジナルの2022年11月22日時点におけるアーカイブ。
- ^ “かわしんじゅ貝生息地 (PDF)”. 岡山県. 2021年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ “岩手県内初!カワシンジュガイを町天然記念物に指定”. いわいずみブログ. 岩泉町. 2021年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ “野田村指定天然記念物『カワシンジュガイ』生育調査”. 野田村通信ブログ. 野田村観光協会. 2021年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
- ^ “東城地域の記念物(天然記念物)”. 庄原市. 2021年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月25日閲覧。