カレラ・パナメリカーナ・メヒコ

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鳥がぶつかり破損したメルセデス・ベンツ300SL(1952年)

カレラ・パナメリカーナ・メヒコCarrera Panamericana Mexico)は、1950年から1954年にかけてメキシコ合衆国で行われた公道を使った自動車レース。

概要[編集]

当時イタリアで行われていたミッレミリアタルガ・フローリオなどの公道レースを手本に、アメリカ大陸縦断道路「パンアメリカンハイウェイ」のメキシコ国内部分の完成を記念した公道レースとして、当時石油の輸出などで裕福であったメキシコ政府の大々的な支援の下、1950年より開催された。

レースはアメリカとの国境付近からスタートし、グアテマラ国境付近までを縦断する総延長3,000kmのルートを5日間かけて走破し、各ステージの合計タイムで最終成績が決まった。平野部の延々と続く直線区間、3,000mを超える山岳部の曲がりくねった未舗装路など、コース状況は変化に富み、人車ともにタフでなければ走りきれないことから「世界でもっとも過酷なレース」と呼ばれた[1]

バラエティに富む参加車[編集]

アメリカの隣国という土地柄、キャディラックリンカーンパッカードなどのアメリカのメーカーやレーシングドライバーが多数出場していたのが特徴だが、もちろんメルセデス・ベンツポルシェフェラーリなどのヨーロッパの主要メーカーも多数参加し、メキシコの荒れ果てた大地をアメリカの大排気量セダンヨーロッパスポーツカー、レーシングカーが走り回るという、他の公道レースにはないダイナミックな魅力が売りであった。

ヨーロッパのメーカーは大市場であるアメリカへの格好アピールの場として非常に力を入れており、ワークスやセミワークス車にスターリング・モス(メルセデスベンツ)やフィル・ヒル(フェラーリ)、ハンス・ヘルマン(ポルシェ)などのトップドライバーを乗せた。特にフェラーリやポルシェは、毎年カレラ・パナメリカーナ・メヒコのために特別に開発したマシンを持ち込むなどの力の入れようであった。

なお、ポルシェの主要モデルとして知られるポルシェ・911「カレラ」のネーミングは、カレラ・パナメリカーナ・メヒコ向け特別モデルから取られたものである。ポルシェは後に「パナメーラ」も販売している。メルセデスはアメリカのディーラーからの提案を受けて、1952年大会で優勝した300SLガルウィング・クーペ)を市販モデルとして発売した。

また、アメリカのバックヤード・ビルダーが部品をかき集め、独自に組み立てた「カバッロ・デ・ヒエロ」(鉄の馬)などのワンオフ車が多数出場しているのも特徴の一つであった。

独裁政権の広告塔[編集]

また、このレースは当時そのほとんどが軍事独裁政権であった中南米諸国の国威発揚の場としても利用され、アルゼンチンファン・ペロンは、1953年のレースに前年に亡くなったファーストレディエヴァ・ペロンの顔をボンネットに描いたポルシェを参戦させ、ドミニカ共和国の独裁者ラファエル・トルヒーヨは、自らのポケットマネーを投じて購入したスペインの名車ペガソを走らせるなど、レース参加車を自らの広告塔として利用した。

中止[編集]

1953年には、この年創設されたスポーツカー世界選手権のカレンダーに入り、1953年・1954年ともシリーズ最終戦として開催された。

しかし、この様に年々激しさと華やかさが増していったものの、毎年ドライバーの死亡事故がおきるなど危険なレースとも知られ、ついに1954年を最後としてメキシコ政府はレースの開催を中止した。大会が打ち切られた原因はレースそのものの危険性のほかに、翌年1955年のル・マン24時間レースで発生した82人が死亡する大惨事による影響も一因となっている。

復刻版[編集]

他の著名な公道レース同様、当時の出走車を中心とした「復刻版」が度々行われている。

主な参加車[編集]

各年の勝者[編集]

ドライバー ナビゲーター マシン 時間
1 1950年 アメリカ合衆国の旗 Hershel McGriff アメリカ合衆国の旗 Ray Elliott アメリカ合衆国の旗 オールズモビル・88 27h34m25s
2 1951年 イタリアの旗 ピエロ・タルッフィ アメリカ合衆国の旗 ルイジ・キネッティ イタリアの旗 フェラーリ・212インテルヴィニャーレ 21h57m52s
3 1952年 ドイツの旗 カール・クリンク ドイツの旗 ハンス・クレンク ドイツの旗 メルセデスベンツ・300SL 18h51m19s
4 1953年 アルゼンチンの旗 ファン・マヌエル・ファンジオ イタリアの旗 Gino Bronzoni イタリアの旗 ランチア・D24 18h11m00s
5 1954年 イタリアの旗 ウンベルト・マリオーリ アメリカ合衆国の旗 Erwin Goldschmidt イタリアの旗 フェラーリ375プラスピニンファリーナ 17h40m26s

脚注[編集]

  1. ^ "今月のタグ・ホイヤー タグ・ホイヤー カレラの新作は、上品で落ち着いた雰囲気が持ち味". ENGINE Online. 2013年2月22日閲覧。

関連事項[編集]