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カラタネオガタマ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カラタネオガタマ
1. カラタネオガタマの花
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: モクレン目 Magnoliales
: モクレン科 Magnoliaceae
: モクレン属 Magnolia
: オガタマノキ節 Magnolia sect. Michelia[2]
: カラタネオガタマ M. figo
学名
Magnolia figo (Lour.) DC. (1817)[3]
シノニム
和名
カラタネオガタマ(唐種招霊[4])、トウオガタマ(唐招霊)[5]、バナナノキ[6]
英名
banana shrub[7], banana magnolia[1][7], chenille copperleaf[7]

カラタネオガタマ(唐種招霊、学名: Magnolia figo)は、モクレン科モクレン属に属する常緑樹の1種である。別名トウオガタマ(唐招霊)。オガタマノキ属に分類されることが多かったが(Michelia figo[4][8]、2022年現在ではふつうモクレン属に分類される。花にはバナナに似た強い香りがある(図1)。中国東南部原産であるが、日本などでも庭や神社に植栽されている。

特徴

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常緑小高木から低木であり、高さ2–5メートル (m) になる[4][8](下図2a)。樹皮は灰褐色[8](下図2b)。葉柄などに褐色から黒褐色の立毛が多い[4][8]

2a. 樹形
2b. 樹皮
2c. 葉

は互生し、葉柄は長さ2–4ミリメートル (mm)[4][8]葉身は倒卵状披針形から楕円形、4–10 × 1.8–4.5 センチメートル (cm)、光沢があり、全縁、基部はくさび形から広くさび形、先端は尖る[4][8](上図2c)。

3a. 花
3b. 花
3c. 花(栽培品種 ‘Purple Queen‘)

花期は日本では5–6月(原産地では3–5月)[4][8]。直径 2 - 2.5 cm で黄白色のが葉腋に1個ずつつく[4][8][9](上図3)。花の寿命は短く、1–2日[9]花被片は 1.2–2 × 0.6–1.1 cm、ふつう6枚、萼片花弁の分化はなく全て花弁状、ふつう黄白色で縁など一部が紫紅色を帯びる[4][8](紫色やワインレッドの栽培品種もある[10])(上図3)。雄しべは多数、長さ7–8 mm、紫色を帯び、葯隔は突出し尖る[8][9](上図3)。雌しべ離生心皮、多数、長さ 6 mm[8]。雄しべ群と雌しべ群の間に長さ 7 mm ほどの柄がある[4][8](上図3b)。花はバナナに似た強い甘い香りがし[4][8][9]、その匂いの主成分は酢酸イソブチルである[11]

果期は日本では10–11月(原産地では7–8月)、個々の雌しべは球状の袋果となり、それが集まった長さ 2–3.5 cm ほどの集合果を形成し、裂開して種子を露出する[8][6]染色体数は 2n = 38[8]

分布・生態

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原産地は中国東南部[3][6]。世界中の熱帯から暖温帯域で植栽されることがある[8][7]。日本へは江戸時代に渡来したといわれる[6][4]

人間との関わり

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花が完全には開かず、半開きの状態のままであることが含み笑いをしているように見えることから、原産地である中国では「含笑花」とよばれる[6][8][5]。日本では別名として「トウオガタマ」ともよばれ[6][4]、また、花にバナナのような匂いがあるため、「バナナノキ」とよばれることもある[6]

世界各地で観賞用に植栽されており、栽培品種も作出されている[8](上図3c)。日本では、オガタマノキと同様に、神社に植えられていることも多い[6]。耐寒性がやや弱く、霜が降るような場所では生育不良となる[9][12]。乾いた寒風を嫌い、日なたから明るい半日陰、やや湿り気のある水はけのよい肥よくな土壌を好む[9][12][13]。目立つ病虫害は知られていない[13]

中国では、花を風乾または低温で加熱乾燥したものは消化不良や腹部膨満、鼻炎などに対する生薬とされ、「含笑」とよばれる[8][5]。また、花から抽出された芳香油は、香料とされる[5]。花被片は、茶外茶とされることがある[5]。台湾では、花を髪飾りとすることがある[5]

カラタネオガタマの花言葉は「甘い誘惑」である[10][12]

分類

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カラタネオガタマはオガタマノキ属Michelia)に分類されることが多かったが(Michelia figo[4][8]、2022年現在ではふつうモクレン属に分類される(Magnolia figo[7][3]。モクレン属の中では、オガタマノキ節(Magnolia section Michelia)に分類される[2]

カラタネオガタマの中には、以下の変種が提唱されている。

表1. カラタネオガタマの種内分類群[7][3][14][15][16]

4. Magnolia figo var. crassipes

脚注

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出典

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  1. ^ a b Khela, S. (2014年). “Banana Magnolia”. The IUCN Red List of Threatened Species 2014. IUCN. 2024年3月8日閲覧。
  2. ^ a b Wang, Y. B., Liu, B. B., Nie, Z. L., Chen, H. F., Chen, F. J., Figlar, R. B. & Wen, J. (2020). “Major clades and a revised classification of Magnolia and Magnoliaceae based on whole plastid genome sequences via genome skimming”. Journal of Systematics and Evolution 58 (5): 673-695. doi:10.1111/jse.12588. 
  3. ^ a b c d e f Magnolia figo”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年2月10日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 勝山輝男 (2000). “カラタネオガタマ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 385. ISBN 4-635-07003-4 
  5. ^ a b c d e f トウオガタマ (カラタネオガタマ)”. 山科植物園 (1999年5月1日). 2025年3月10日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 1997, p. 15.
  7. ^ a b c d e f GBIF Secretariat (2022年). “Magnolia figo (Lour.) DC.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2022年2月11日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Flora of China Editorial Committee. “Michelia figo”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2022年2月10日閲覧。
  9. ^ a b c d e f カラタネオガタマ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2022年2月11日閲覧。
  10. ^ a b カラタネオガタマの花言葉”. LOVEGREEN. 2022年2月5日閲覧。
  11. ^ 東浩司 (2004). “モクレン科の花の匂いと系統進化”. 分類 4 (1): 49-61. doi:10.18942/bunrui.KJ00004649594. 
  12. ^ a b c カラタネオガタマとは?人気な庭木の特徴や育て方、花言葉などを解説!!”. 暮らしーの (2020年8月28日). 2022年2月11日閲覧。
  13. ^ a b カラタネオガタマの育て方”. 植物図鑑. LOVEGREEN. 2022年2月11日閲覧。
  14. ^ Magnolia figo var. crassipes”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月8日閲覧。
  15. ^ Magnolia figo var. figo”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月8日閲覧。
  16. ^ Magnolia figo var. skinneriana”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年4月8日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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