カミンズ

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カミンズ・インコーポレイテッド
Cummins Inc.
ロゴ
種類 株式会社
市場情報
NYSE CMI
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
インディアナ州コロンバス
設立 1919年
業種 製造業
事業内容 自動車・産業機器用ディーゼルエンジンの製造
代表者 Theodore “Tim” Solso (CEO)
資本金 1億8600万USドル(2005年度)
売上高 100億USドル(2005年度)
主要子会社 Jacobs Vehicle System
関係する人物 Clessie Cummins(創業者兼技術者)
William Irwin(創業時の投資家)
外部リンク www.cummins.com
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カミンズCummins Inc.)はアメリカ合衆国ディーゼルエンジンメーカー。1919年創業。

本社はインディアナ州コロンバスにある。自動車用・産業用エンジン、発電機、ディーゼルエンジン用各種コンポーネントの生産・販売・アフターサービスを行っている。

概要[編集]

高速ディーゼルエンジン分野の先駆的メーカーとして国際市場での大きなシェアを持ち、160以上の国と地域に500以上の販売会社・代理店、5000店以上のディーラー、2006年現在で全世界に約3万人の従業員を擁する。2005年度の営業成績は売上高が約100億USドル(1USドル=115円と仮定して約1兆1500億円)、純利益は5億5000万USドル(同・約632億円)。このうちの51%以上はアメリカ国外での営業収入である。

拠点[編集]

海外拠点・現地法人[編集]

主要生産拠点[編集]

※は合弁会社による生産。

略歴[編集]

1919年に創業者のクレシー・ライル・カミンズ ( Clessie Lyle Cummins 1888-1968) が、カミンズ・エンジン社を設立したことに始まる。

カミンズは1908年からしばらくの間、コロンバスの銀行家投資家でもあったウィリアム・グラントン・アーウィン(William Glanton Irwin 1866-1943)の自家用車運転手を勤めていたことがあったが、次世代の内燃機関であったディーゼルエンジン開発に強い関心を抱いており、アーウィンに懇請したことでその後援を得て、エンジン開発事業に乗り出したのである。

当初はオランダのHvid社のライセンス供与を受けた6馬力の農業用エンジンを生産した。この小型エンジンは流通大手シアーズ・ローバックでも扱われた。

高速エンジンの大型化を図ったカミンズ社であったが、1924年には船舶用エンジン開発に失敗して倒産の危機に瀕する。それでも辛うじて事業の継続を得、この過程で、技術者のヌードセン (H.L. Knudsen) の協力をも得て効率に優れる直噴式高速ディーゼルエンジンの開発を進展させた。

1929年には、パッカードの中古リムジンに、自社製のディーゼルエンジンを搭載した試作車をウィリアム・アーウィンが運転し、ニューヨーク自動車ショーに直接乗り付けて出展した。特製パッカードはディーゼルエンジンならではの経済性を発揮し、「1ドル39セント(当時)の燃料費でインディアナ州からニューヨーク市へ行けた」とアピールされた。これによって市場の評価を得たことで、カミンズ社は自動車用エンジンメーカーとしても販路を広げることになり、経営はようやく軌道に乗った。小型船舶やトラック用のエンジン開発などの実績を積み、第二次世界大戦中はアメリカを筆頭とする連合国軍に各種の軍用エンジンとして採用された。

1950年代はアメリカにおける州間高速道路網の拡充を受けて、大いに業績を伸ばした。出力・経済性のみならず、耐久性・信頼性にも優れていることが評価されて、多くの大型トラック・メーカーから標準エンジンとして採用され[1]、当時で売上高は1億USドルにも達している。またこの時期にインディ500にも参戦、1952年にはターボ・ディーゼルエンジンを搭載する「カミンズ・ディーゼル・スペシャル」(レース史上初のターボカー)でポールポジションを獲得した。

さらに1950年代以降はアメリカ国外にも大々的に進出し、自社工場および合弁会社の生産拠点を世界各地に設置したことで、98か国2,500箇所にサービス拠点を擁するまでになった。

エンジンラインアップ[編集]

汎用タイプ[編集]

ISB6.7エンジン(Euro 5仕様)

カミンズのディーゼルエンジンは、自動車向けのオンロードエンジンとそれ以外の用途のノンロードエンジン英語版に大別される。前者が“Interact System”シリーズでエンジン型式が“IS*”、後者が“Quantum System”シリーズでエンジン型式は“QS*”となる(N14系などの旧世代エンジンはこれに該当しない)。IS* / QS*の次位の数字はおおよその排気量をリットルで示したものである。ただし、2017年以後の新たな排出ガス規制適合エンジンにはオンロード/オフロードの区別がなくなり双方X15(ISX / QSX15からの変更)などと表記する。なお、設計が1970年代以前のエンジン(NT855系など)は排気量を立方インチで表していた。

近年設計されたエンジンは、ブロック全体が赤く塗装されているのが特徴である(後述のピックアップトラック用は除く)。

以下、主要なノンロードエンジンを挙げる。すべて4ストロークの直噴式インタークーラーターボ付きである。燃料噴射装置はCummins Fuel Systems社、過給器はCummins Turbo Technologies社、排気ガス後処理装置はCummins Emission Solutions社が製造している。

ノンロードディーゼルエンジンラインアップ(2017年現在)
cumminsengines.com/Customer-Inspired Solutions. Cummins Tier 4 Final.を基に作成
型式名 シリンダ配列 ボア×ストローク
[mm]
総排気量
[cc]
定格出力(最大値)
[kW(HP)]
燃料噴射方式 過給器 排気ガス低減方法 適合排出ガス規制
米国/欧州
備考
QSF2.8 直列4気筒 94 x 100 2,775 55(74) HPCR[2] WGT[3] EGR,DOC[4] Tier 4 Final/Stage IV
QSF3.8 102 x 115 3,758 98(132) EGR,DOC,SCR
QSB4.5 107 x 124 4,460 129(173) VGT
QSB6.7 直列6気筒 6,690 231(310)
QSL9 114 x 145 8,880 298(400) XPI[5]
QSG12 132 x 144 11,823 382(512) WGT DPF,SCR
QSX15 137 x 169 14,947 503(675) VGT EGR,DPF,SCR
QSK19 159 x 159 18,942 597(800) MCRS[6] WGT SCR Tier 4 Final/Stage IIIB 横型はQSK19-R
QSK23 170 x 170 23,151 809(1,085)
QST30 V型12気筒 140 x 165 30,479 1,119(1,500) Tier 4 Final/Stage IV
QSK38 159 x 159 37,884 1,193(1,600)
QSK50 V型16気筒 50,512 1,864(2,500)
QSK60 159 x 190 60,361 2,237(3,000)
QSK78 V型18気筒 170 x 190 77,627 2,610(3,500)
QSK95 V型16気筒 191 x 210 96,271 3,281(4,400) Tier 4 Interim/Stage IIIB

このほか、排出ガス規制適用除外分野や途上国向けに旧式エンジンも継続生産されている。

ピックアップトラック用[編集]

ラム3500(2014年モデル)。フロントフェンダー横にカミンズのエンブレムが付く。

2017年現在、ピックアップトラック用としてラム・トラックス北米日産にエンジンを供給している。ラムには1989年より、タイタンには2015年よりカミンズ製ディーゼルエンジンを搭載したモデルが設定されている。

ピックアップトラック用エンジンは、汎用タイプと異なりブロックが黒く塗装されている[7]。仕様は以下の通り。

ピックアップトラック用ディーゼルエンジンラインアップ(2017年現在)
型式名 動弁機構 シリンダ配列 ボア×ストローク
[mm]
総排気量
[cc]
圧縮比 最高回転数
[rpm]
最高出力
[kW(HP)/rpm]
最大トルク
[N・m(lb-ft)/rpm]
燃料噴射方式 過給器 排気ガス低減方法 搭載車種
Cummins 6.7L Turbo Diesel OHV 24バルブ 直列6気筒 107 x 124 6,690 16.2 3,200 261(350)/2,800 -
287(385)/2,800
895(660)/1,400 -
1,261(930)/1,700
HPCR VGT EGR,DOC,DPF,SCR ラム
2500/3500/4500/5500
Cummins 5.0L V8 Turbo Diesel DOHC 32バルブ V型8気筒 94 x 90 4,996 16.3 4,200 231(310)/3,200 752(555)/1,600 2ステージターボ タイタン XD

日本のカミンズエンジン[編集]

日本法人(カミンズジャパン)は東京都大田区東糀谷六丁目にある。1961年11月に建設機械大手の小松製作所(コマツ)とディーゼルエンジン部門で技術提携し、以来両社は深い関係にある。1993年11月には合弁会社コマツカミンズエンジン(出資比率50:50)を設立し1995年11月よりコマツ小山工場でカミンズB・Cシリーズ(排気量3.3-8.3L)の生産を開始[8]、また1998年1月にはディーゼルエンジンの共同研究および開発を行う合弁会社IPA (Industrial Power Alliance、出資比率50:50) が設立された。

自動車[編集]

日本ではカミンズ製ディーゼルエンジンを搭載する自動車はほとんどなく、アメリカ製大型車両の輸入も皆無に近いことから、自動車業界の専門家や、アメリカ車好きの一部の好事家以外には一般に知名度の低い存在である。日本の自動車メーカーの多くはボディメーカーとエンジンメーカーを兼ねて一貫生産を行うか、または自社の系列企業での連携生産を行っている。このような日本固有の事情から、一部のバスやアメリカ製トラックのように社外エンジンを自由に選べる車種が皆無に近いのが、市場知名度の低さの原因である。

日本国内の公道を走る車両としては、中国亜星客車中国語版製の中型観光バスYBL76805H(日本国内では「オノエンスター」の名で輸入販売)がカミンズ製ISB4.5エンジン(出力210HP、排出ガス規制はEuro 6適合)を搭載している[9]

構内走行車や輸出車としては、宇部興産専用道路を走行するケンワースのトラクタT609がカミンズISX15エンジンを搭載している。過去の事例では1950年代にチリへ輸出した富士重工業製バスにはカミンズ製エンジンが搭載されていた。また、1980年に小松製作所とモリタが共同開発した空港用超大型化学消防車「KFM-125」にもカミンズ製エンジンが搭載されていた。

特殊自動車[編集]

建設機械などの特殊自動車にはカミンズ製ディーゼルエンジンの採用が多く見られる。通称“オフロード法”2014年排出ガス基準(米国Tier 4 Final に相当)適合のカミンズ製エンジン(QSB6.7およびQSL9)を採用したメーカーに日立建機日立住友重機械建機クレーンコベルコ建機タダノKATO HICOM諸岡古河ロックドリルなどが挙げられる[10]

船舶[編集]

小型高速エンジンを得意とすることから、日本市場では漁船のエンジンとしての採用例が早くから見られた。後述の大井川鐵道DD20形のカミンズ・エンジン採用には、静岡県内の漁船でカミンズ製エンジンのシェアが高かったことも動機になっている。

鉄道車両[編集]

大井川鐵道DD20形ディーゼル機関車
JR東海キハ85系気動車

1950年代から東急車輛製造などの国外輸出用車両(台鉄DR2500系DR2700系など)には搭載実績があったが、最大ユーザーの日本国有鉄道が国産設計エンジンに偏重し、輸入エンジン採用を忌避したことから、日本国内向けとしての導入は非常に遅くなった。

採用は専用線や私鉄が先行し、1976年に三井鉱山田川工場No.4、私鉄では1982年大井川鐵道井川線DD20形ディーゼル機関車に搭載されたのが最初となっている。大井川での導入当初は、コマツがライセンス生産したNシリーズの垂直シリンダ型・NTA-855系が採用されていた。

国鉄分割民営化後の1989年東海旅客鉄道(JR東海)の特急ひだ」「南紀」で使われていたキハ80系気動車を置き換えるべく開発されたキハ85系気動車に水平シリンダ型・NTA-855-R-1(JRグループの型式:DMF14HZ系)が搭載された。キハ80系等の旧式なDMH17H[11]自然吸気エンジンで、17.0Lの排気量に比し出力180馬力と非力だったが、DMF14HZでは基本設計こそ1960年代のものながら直接噴射式エンジンにインタークーラーターボチャージャーを装着して350馬力(または330馬力)とDMH17Hの1.5基~2基分に匹敵する出力を発揮し、段数を増やした新型変速機との組み合わせで電車特急と遜色ない性能を確保した。この実績からJR東海では標準エンジンとして本格採用、日本のほとんどの鉄道事業者鉄道ファンから認識されていなかったカミンズは一躍メジャーな存在となった。

以後、東日本旅客鉄道(JR東日本)キハ100系・110系気動車[12]名古屋鉄道キハ8500系気動車(後に会津鉄道へ譲渡)[13]にも搭載、JR東海とJR東日本では一部在来車のエンジンもDMF14HZ (NTA-855-R-1) に載せ替えられている。

なお、日本向けNTA-855-R系エンジンは、スコットランドノース・ラナークシャーにあるカミンズUK社ショッツ工場(1998年3月閉鎖)で生産されていた。このため、日本の鉄道業界への本格導入当初、カミンズを英国企業と誤解する事例もあった。その後導入のN14系はブラジルやインドで生産されている(カミンズ(スペイン語版)参照)。

脚注[編集]

  1. ^ アメリカの大型トラック・トレーラ専門メーカーは、一般にシャーシのみを開発し、エンジンは専業メーカー製品を購入して搭載することが多い。
  2. ^ High Pressure Common Rail:コモンレール
  3. ^ Wastegate Turbocharger:ウェイストゲート型ターボ
  4. ^ Diesel Oxidation Catalyst:ディーゼル酸化触媒
  5. ^ Xtra-High Pressure Injection:コモンレール(スカニアとの共同開発品)
  6. ^ Modular Common Rail Fuel System:コモンレール
  7. ^ Cummins Engines for Pickups”. 2017年11月4日閲覧。
  8. ^ KOMATSU-CUMMINS PARTNERSHIP PRODUCES 500,000TH ENGINE AT OYAMA 04 February 2010”. 2017年10月25日閲覧。
  9. ^ バスラマ・インターナショナル No.159 P16-17
  10. ^ 型式届出特定特殊自動車一覧 (2014年基準適合車) (PDF)”. 環境省. 2017年11月11日閲覧。
  11. ^ 日本国有鉄道系気動車の1960年代以前の標準エンジン。1942年に渦流室式の原設計が完成、1953年予燃焼室式に一歩後退した後、1960年に水平シリンダー方式への設計変更を受けたが、燃焼室が大きめで熱効率が悪く、極めて旧弊な設計であった。
  12. ^ キハ110系ではチューニングが異なるNTA-855-R-4を搭載し、定格420馬力。
  13. ^ キハ85系が走る高山本線に乗り入れ、併結も想定されたことから走行性能を合わせる目的があった。

関連項目[編集]

  • 圧縮開放ブレーキ - 創業者Clessieが考案、傍系のJacobs Vehicle Systemが商品化。
  • スカニア - 共同でCummins-Scania XPI Manufacturing社を設立、コモンレールシステム「XPI」を製造。

外部リンク[編集]