コンテンツにスキップ

カベバシリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カベバシリ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: カベバシリ科 Tichodromidae
: カベバシリ属 Tichodroma
: カベバシリ T. muraria
学名
Tichodroma muraria
(Linnaeus1766)
シノニム
  • Certhia muraria Linnaeus, 1766[2]
和名
カベバシリ[3]
英名
Wallcreeper
     通年分布域      非繁殖域

カベバシリ(壁走[4]、学名:Tichodroma muraria)は、スズメ目に分類される鳥類の一種。南ヨーロッパから中国中部にかけての旧北区に分布し、高山地帯に生息する。小型の種で、現生種では本種のみでカベバシリ科およびカベバシリ属を構成する。

分類と系統

[編集]

リンネによって Certhia muraria として初めて記載され、キバシリ科に分類された[5][6]。1811年にヨハン・イリガーによって独自の属に分類されたが、依然としてツツドリ科に含まれていた。Karel Voousは『List of Recent Holarctic Bird Species』の中で本種を独自の科に分類したが[7]Charles Vaurieらはゴジュウカラ科の亜科とした[8]。2016年の系統学的研究によれば、本種はゴジュウカラ科の姉妹群である[9]ハンガリーの後期中新世の地層から、Tichodroma capeki という化石種が知られている[10]

属名は古代ギリシア語の「teikhos (壁)」と「dromos (走るもの)」に由来する。種小名は中世ラテン語で「壁」を意味し、ラテン語の「murus (壁)」に由来する[11]。red-winged wall creeperという英名もある[12]

亜種

[編集]

以下の2亜種が認められている[13]

形態

[編集]

体長15.5-17cm、体重17-19gである。羽毛は主に青灰色で、風切羽と尾羽はより暗い。夏羽では雄の喉が黒く、雌は喉が白いか、暗色の小斑点が入る。冬羽では雌雄ともに喉が白くなる。特徴的な深紅色の翼を持ち、白い斑点が入る。雨覆羽の大部分および、初列風切と次列風切の基部から半分が赤くなっており、赤い部分は翼をたたむとほとんど見えなくなる。尾は短く、黒色で白く縁取られる。幼鳥の羽毛は冬羽とよく似ている。亜種 T. m. nepalensis は基亜種よりも色が暗い。

分布と生息地

[編集]

高山に生息し、ヨーロッパでは標高1,000-3,000mで繁殖する[14]天山山脈では標高2,800-4,000m、ヒマラヤ山脈では標高3,600-5,100mで繁殖する[15]。冬になると低地に移動し、建物や採石場でも見られるようになる。フランスブルターニュ地方ノルマンディー地方では、大聖堂高架橋で越冬することが知られている[16]。冬にはイギリスオランダまで渡りを行う個体もおり、1989-1991年にかけて、アムステルダム自由大学で越冬した例がある。ヒマラヤ山脈の大部分、インドネパールブータンチベットの一部に分布し、冬場にはバングラデシュにも移動する[17][18]

生態と行動

[編集]

一般的に大人しいが、山の斜面では見つけるのが難しい。特に迷鳥は大人しいが、観察に気づくと隠れたり、巣に戻ることをためらうことがある。また、遠回りして巣に戻ることもある。縄張り意識が強く、夏場にはつがいで縄張りを守る。冬場には単独で行動し、雄も雌もそれぞれ自身の採餌用の縄張りを守る。縄張りは一つの大きな採石場または岩壁、もしくは複数の小さな採石場や岩壁である。ねぐらから縄張りまで、多少距離が存在する場合もある。冬場には毎年同じ場所で採餌することが知られている[15]

繁殖と成長

[編集]

雌はコケを材料として、岩の割れ目や洞穴にカップ型の巣を作る[19]。巣は羽毛や羊毛など、柔らかい素材で覆われ[6]、通常は入り口が2つある。産卵数は通常4-5個だが、3個の例もある。卵の長さは21mmで、白色の地に黒または赤褐色の斑点が少数入る。すべての卵を産み終えると、雌は19-20日間抱卵し、その間は雄が雌に餌を与える[6]。雛は成熟が遅く、孵化してしばらくは目も見えず、羽毛も無い。雛は28-30日間両親から餌を与えられ、その後に巣立つ。つがいは年に一回子育てを行う。

摂餌と食性

[編集]

食虫動物であり、岩壁の昆虫クモを捕食する[19]。岩壁から飛び立ち、飛んでいる虫を食べることもある。翼を半分ほど広げ、崖を跳ぶように移動することもある。

発声

[編集]

雄も雌も鳴くことは少ないが、雌は冬に餌場を守るため鳴く[19]。鳴き声は高い口笛のような音で、音程が上下する[14]。繁殖期になると、雄は木に登って鳴く。

画像

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ BirdLife International (2019). Tichodroma muraria. IUCN Red List of Threatened Species. 2019 e.T22711234A155489183. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T22711234A155489183.en. 2025年11月28日閲覧.
  2. ^ Tichodroma muraria (Linnaeus, 1766)” (英語). www.gbif.org. 2025年12月7日閲覧。
  3. ^ 小学館の図鑑NEO[新版]鳥. “カベバシリとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2025年12月7日閲覧。
  4. ^ 普及版, 動植物名よみかた辞典. “壁走(カベバシリ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2025年12月7日閲覧。
  5. ^ Linnaeus, Carolus (1766). “ed. 12”. Systemae Naturae 1 (1): 184–185. https://www.biodiversitylibrary.org/page/42946380. 
  6. ^ a b c Campbell, Bruce; Elizabeth Lack (1985). A Dictionary of Birds. Calton: T & A D Poyser. pp. 638–39. ISBN 0-85661-039-9 
  7. ^ Voous, Karel (1977). “List of Recent Holarctic Bird Species”. Ibis 119: 379. 
  8. ^ Vaurie, Charles (1957). “Systematic notes on palearctic birds. No 29.”. American Museum Novitates 1854: 2–6. 
  9. ^ Zhao, Min; Alström, Per; Olsson, Urban; Qu, Yanhua; Lei, Fumin (2016). “Phylogenetic position of the Wallcreeper Tichodroma muraria”. Journal of Ornithology 157 (3): 913. doi:10.1007/s10336-016-1340-8. 
  10. ^ Kessler, E. 2013. Neogene songbirds (Aves, Passeriformes) from Hungary. – Hantkeniana, Budapest, 2013, 8: 37-149.
  11. ^ Jobling, James A (2010). The Helm Dictionary of Scientific Bird Names. London: Christopher Helm. pp. 262, 385. ISBN 978-1-4081-2501-4 
  12. ^ Tichodroma muraria (Wallcreeper) - Avibase”. avibase.bsc-eoc.org. 2025年11月28日閲覧。
  13. ^ Nuthatches, Wallcreeper, treecreepers, spotted creepers, mockingbirds, starlings, oxpeckers – IOC World Bird List”. www.worldbirdnames.org. 2025年11月28日閲覧。
  14. ^ a b Svensson, Lars; Peter J. Grant (1999). Collins Bird Guide. London: HarperCollins. pp. 324–5 
  15. ^ a b Harrap, Simon (2008), “Family Tichodromidae (Wallcreeper)”, in del Hoyo, Josep; Elliott, Andrew; Christie, David, Handbook of the Birds of the World. Volume 13, Penduline-tits to Shrikes, Barcelona: Lynx Edicions, pp. 146–165, ISBN 978-84-96553-45-3 
  16. ^ David (2024年2月15日). “Le Tichodrome échelette, un "amateur" du patrimoine culturel français” (フランス語). Ornithomedia.com. 2025年11月28日閲覧。
  17. ^ Wallcreeper (Tichodroma muraria) - BirdLife species factsheet”. 2025年11月28日閲覧。
  18. ^ Kirwan, Guy M.; Löhrl, Hans; Wilson, Mike (4 March 2020). Billerman, Shawn M; Keeney, Brooke K; Rodewald, Paul G et al.. eds. “Wallcreeper (Tichodroma muraria)”. Birds of the World. doi:10.2173/bow.wallcr1.01. http://www.hbw.com/species/wallcreeper-tichodroma-muraria. 
  19. ^ a b c Ehrlich, Paul R.; Dobkin, David S.; Wheye, Darryl; Pimm, Stuart L. (1994). The Birdwatcher's Handbook. Oxford University Press. pp. 440. ISBN 978-0-19-858407-0. https://archive.org/details/birdwatchershand00ehrl/page/440 

関連項目

[編集]