カトラリー
カトラリー(英語: Cutlery)
ここでは、食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなどの総称としての意味について解説する。
概要[編集]
現代フランス語では、カトラリーを「クヴェール couverts 」と言い、それを何人分かセットにして箱に入れたものを「メナジェール ménagère 」と言う[2]。
フランスでは19世紀半ばに、結婚の「お祝い」の贈り物としてメナジェール(つまりカトラリー・セット)を贈ることが習慣のようになった[3]。現在もその習慣が続いている。
- カトラリーの素材の歴史
高級なカトラリーには銀合金製のものがあるが、銀が用いられるようになった理由として、中世ヨーロッパにおいて王位継承者に対する毒殺が横行しており、とりわけ無味無色無臭で水溶性のヒ素が多用されていたことが挙げられる[4]。

当時は料理を盛り付けた際に銀食器が黒変することでヒ素の混入を検知していた。これは毒に使われたヒ素が銀や鉛の精錬時の副産物として得られたもので[4]、さらにヒ素の精製技術も未熟だったために混入した硫黄が銀と反応して黒色の硫化銀を生じるためである[5]。しかし、ヒ素と銀は直接反応しないため、純度の高いヒ素が用いられた場合には検出できない[5]。[6]
このように、銀食器は元来は毒殺避けであったが、王侯貴族の食卓で永らく重用されていたことから「高級食器の代表」として扱われるに至り、現在でも高級感を求める迎賓館、貴族の邸宅、高級レストランなどで広く用いられる。中世ヨーロッパでは銀食器に次ぐ高級食器としてはスズ合金製(たとえばピューター、日本語で「しろめ」など)製の食器が用いられ、一般には(普通の人々のあいだでは)鉄製のカトラリーが用いられていた。19世紀以降は、銀などの代用品としてニッケルシルバー(洋白)が大量に用いられるようになり、現代では流通するカトラリーの大部分はステンレス鋼製である。
産地[編集]
各国における、伝統的で代表的な地域は以下のとおり。
- スペインのアルバセテとトレド
- ポルトガルのen:Caldas das Taipas
- イタリアのプレマーナ
- フランスのティエール(Thiers)とラギオール(Laguiole)
- ドイツのゾーリンゲン
- オーストリアのシュタイアーマルク州
- イギリスのシェフィールド
- アイルランドのゴールウェイ
- パキスタンのワズィーラーバード
- インドのハイデラバード
- 日本の新潟県燕市(20世紀前半から生産されるようになり、現在も同市が日本の主たる産地)[7]
- アメリカ合衆国のコネチカット州メリデンおよびニューヨーク州オナイダ
- ブラジルのカルロスバルボサ
脚注[編集]
- ^ デジタル大辞泉「カトラリー」
- ^ [1]
- ^ Louise Thomas, « Les ménagères de plus de 150 ans », Le Monde Argent, 6 février 2010, p. 8
- ^ a b 『図解入門業界研究最新調剤薬局の動向とカラクリがよーくわかる本』秀和システム、2012、p.136
- ^ a b 『図解入門最新金属の基本がわかる事典』秀和システム、2015、p.199
- ^ なお、一度に大量のヒ素を盛ったのでは直ちに毒殺であることが露見してしまうので、毎日の食事に少しずつ混ぜることでヒ素中毒に至らしめ、病死のようにみせかける使い方がされていた。
- ^ “カトラリー産地について”. 日本金属洋食器工業組合. 2022年8月24日閲覧。
関連項目[編集]
- en:silver spoon (生まれが富裕層や特権階級であることを示す表現[2]で、「銀の匙」や「銀のスプーン」と訳すのが一般的)