カタックダンス

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カタック英語: Kathakヒンディー語: कथकウルドゥー語: کتھک‎)は、カタックダンス、カタック舞踊と呼ばれる、インドの古典舞踊のひとつです。

インド古典音楽に合わせて、華麗なステップや目をみはる速さの回転、優美なムーブメントで構成された振付に心揺さぶられる素晴らしい舞台芸術です。

歴史[編集]

カタカと呼ばれる、ストーリーテイラーとして知られるインド北部の巡礼者に起源すると言われています。物語を意味するサンスクリット語Kathaと、語り部を意味するKathakerから派生してカタックという名前になった様です。壮大な抒情詩や神話を踊りました。

紀元前400年まで遡ることができ、最も古い文献にナーッティヤ・シャーストラ(Nathya Shastra)があります。

バクティ運動の影響から、ヒンドゥー教のクリシュナ神、恋人ラーダ、牛飼いの娘たちゴーピーをテーマとした作品が多く踊られます。

ムガル帝国時代には、宮廷舞踊として貴族の前で踊られました。カタック舞踊のテクニカルなパートはこの時期に洗練されていった様です。

スーフィーの様な回転、ペルシャ語のポエム、中世のハーレムダンサーの様な透き通ったベールなどがアイテムに加わっていきます。

英国統治時代に入る頃にはナッチガール、タワフと呼ばれました。19世紀、他のインド古典舞踊同様に酷く衰退しました。1892年アンチダンス運動もあり、キリスト教宣教師による抑圧であったり、エロティックな表現に偏った部分を否定したからでした。でもその影で口承の伝統は続いたのですね。独立を経たインドでは、文化の再生の努力がされました。

ヒンドゥー教とイスラム教の両方の文化が混ざり合った稀でユニークなスタイルが確立されていき、大学などでもカタックが教えられる様になりました。

現代では舞台芸術として発展し、世界中で親しまれています。


流派[編集]

主に3つの流派(Gharana) があり、発展した地域の名前がついています。ラクナウ流派、ジャイプール流派、ヴァラナシ流派。

それぞれの主なファミリーによって踊り継がれてきました。ラクナウ流派は流線的なムーブメント、ジャイプール流派は力強いフットワークや回転、ヴァラナシ流派は神々のポエムなどが魅力的です。

文献によれば、おそらくヴァナラナシで発生し、ラクナウ、ジャイプールへ東から西へ広まっていったと思われます。

スタイル[編集]

インド舞踊の多くが膝や腰を落として踊られるのに対し、カタック舞踊の基本姿勢は直立の姿勢で立ち、踊ります。

足首に片足100個ずつ程のグングル(Ghoongroos)と呼ばれる、真鍮の鈴を身につけ踊られます。

男性ダンサーも女性ダンサーも居り、その表現は大きくは変わりません。ソロ、デュエット、グループで踊られます。

ヌリッタとヌリッティヤ[編集]

ヌリッタ(Nritta)と言われる純粋舞踊、テクニック的なダンスと、

ヌリッティヤ(Nrittya)と言われる感情表現のパートがあります。

し感情=ラサ (Rasa)を表現し、その気持ち=バオ(Bhavo)、を表現します。神話や抒情詩に乗せて踊られます。

これは他のインド古典舞踊に共通して見られますが、カタック舞踊はクリシュナの作品が多く上演されます。

カタック舞踊の演目[編集]

最初に祈りを捧げる舞にはじまります。ヒンドゥー系の舞台ではヴァンダナ(Vandana)が踊られ、ヒンドゥーの神々に捧げる舞が上演されます。ムスリム系の舞台ではサラミ(Salami)が上演されます。

次にヌリッタが上演されることが多いでしょう。様々な拍子に合わせて踊られますが、基本は16拍子ティンタール(TeenTaal)です。

フットワーク、ムーブメント、回転などを組み合わせ、ボールというダンスのリズム言葉に乗せて振付を表現します。

インド古典音楽の生演奏ライヴパフォーマンスは、カタックダンサーが観客とのエネルギーの交換が魅力的です。途中、マイクの前に立ち、ボール(Bol)と言われるダンスのリズム言葉などが語られることも多くあります。

アビナヤ(Abhinaya)と言われる表情や手のムッドラという表現を多用して、ヒンドゥー教の詩

全体的にゆっくりとしたテンポではじまり、次第にテンポアップしていきます。

また表情豊かにクリシュナ神と恋人ラーダの物語を踊りあげるなど叙情的な作品もあります。

現在ではカタックダンスとコンテンポラリーダンスの融合も盛んで、こうした古典的なスタイルにとどまらず様々な表現がなされています。

カタック舞踊の音楽[編集]

インド古典音楽で伴奏されます。インド音楽は、旋律=ラーガ(Raga)とリズム=ターラ(Tara)の組合せで演奏されます。

旋律には主にサーランギー(Sarangi)、シタール(Sitar)、ハルモニウム(Harmonium)が使用され、重要な点は、拍子=タール(Taal)を刻む伴奏です。ラハラ(rehela)という、そのループの中にリズムが表現されていきます。

リズムには主にタブラ(Tabla)を使用し、古いものにはパカーワジ(Pakkawaj)を使用します。

特別にパカーワジのボールをパラン(Palan)と呼びます。

カタック舞踊の衣装と装飾[編集]

女性の衣装にはヒンドゥーとムスリムのスタイルが見られます。

チャニヤ&チョリという足首くらいの長さの長いスカートと、お腹が見えるくらい短いブラウス、そして胸元を多く様にかけるベール、足首までのレギンスからなる衣装はヒンドゥースタイル。カラフルなシルクまたはコットンが多く見られます。

身体全てを覆う様に、同じく長い丈のワンピース、長袖、頭をおおうベール、レギンスからなるムガルスタイルの衣装も多用されています。

男性はクルタ&パジャマが基本で、腰にドパタを巻きつける場合もあります。ドーティーだけを着ているダンサーもいますね。

クンダンジュエリーと呼ばれる白っぽい石を使った古典的なデザインの装飾品がカタックにはよく似合います。ネックレス、イヤリング、ティッカ、リング、ジャラジャラと何本ものバングル、ノーズピアスまでキラキラと全身に装飾を施して踊ります。

カタックダンスの習得[編集]

現代のインドでは、ダンスの家系の子に限らず、9歳くらいから習い事としてクラスへ通い、8年ほどレッスンを受けます。ダンサーになるのはほんの一部ですが、勉学が忙しくなる前まで習う子供が多い様です。日本のバレエスクールの様に女子が多く、男子は少な目かもしれません。

古典的なスタイルは先生の元へ通い学ぶグルクル徒弟スタイルでの習得ですが、ダンススクールも沢山あります。一人の師匠に弟子入りしますと、余程の事がない限りその先生に最後まで学びます。ひとつひとつのボールやダンスのイロハを先生から直接学んでいきます。基本的にテキストはなく、口承で学ばれています。

日本では、東京と関西でごく数名のインドで勉強したダンサーたちが教えています。インド人学校でもクラスが展開されている様です。

レッスンの内容[編集]

ナマスカールというインドのご挨拶からレッスンが始まり、終わります。これはお師匠様によって少しずつアレンジされていたりします。

タトゥカール(Tatkar)というフットワークの稽古が基本にあります。その場で、16拍子に合わせ、右左右左 左右左右 の順に足踏みをします。またカカトを使ったヴァージョンなどに変化していきます。このほかにテハイやラリーと呼ばれるフットワークのセンテンスがあります。

ハスタ(Hasta)という上半身のムーブメントも練習します。基本的に手首から手が出て、手首から基本のポジションに戻りますが、動きにはいくつもパターンがあり、四方八方へ身体を伸ばしていきます。この間も大概足はステップを踏み続けています。

初心者が苦戦するひとつに回転があります。チャッカール(Chakar)と呼ばれる回転もステップをしながらゆっくりから早くまで色々なスピードで回ります。基本的には左回りです。(ジャイプール流派は左右両方に回ります。)

これらの基本的な動きを使って、ダンス言葉ボールを学び、それに合わせて振付を踊ります。

トゥクラー(Tukra)とか、パラン(Paran)などと大まかな名前が付いています。

これらのアイテムを組合せて、タラナ(Tarana)などのコンポジションが振付られます。

参考文献[編集]

  • GUPTA, Bharti (2004). Kathak Sagar. Radha Publications. ISBN 8174873430. 

外部リンク[編集]