カイス・サイード

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カイス・サイード
قيس سعيّد
President Kais Saïed cropped.jpg
2019年
第5代 チュニジアの旗チュニジア共和国大統領
就任
2019年10月23日
首相ユーセフ・シャヘド
ヒシェーム・マシーシー英語版
ナジラ・ブダン英語版
前任者ベジ・カイドセブシ
モハメド・エンナセル(代行)
個人情報
生誕 (1958-02-22) 1958年2月22日(63歳)
チュニジアの旗 チュニジアチュニス[1]
国籍チュニジアの旗 チュニジア
政党無所属
配偶者イシュラーフ・シェビール
子供3人
出身校チュニス大学
国際人道法研究所
専業法学者、大学教授

カイス・サイードアラビア語: قيس سعيد‎, Kais Saied、1958年2月22日 - )は、チュニジアの政治家、法学者。現大統領。

経歴[編集]

ボン岬半島にある町、ベニ・ヒヤール出身のモンセフ・サイードとララ・ザキアのあいだに生まれる。父方のおじのヒシャーム・サイードはチュニジアにおける小児外科の第一人者で、1970年代にシャム双生児の分離手術を行ったことで知られる[2]

2013年

2018年に退職するまで、チュニス大学に教授として勤務していた[3]。1990年から1995年までチュニジア憲法学会事務局長、1995年からは同副会長を務めた。そのほか、スース大学法学部長やアラブ連盟法律顧問等を歴任した。2014年にチュニジアの新憲法草案への助言を行う専門家委員会が設けられた際には、その一員となった[4]

2019年の大統領選挙に、サイードは早くから立候補する意思を表明していた[5] 。無所属の社会保守主義者として、サイードは若者の有権者にアピールしようと考えた[6]。「道徳的または経済的」、いずれの腐敗とも戦うためのプランを明らかにし[6]、イスラーム主義者と左派の双方から支持を得た[7]

2019年6月の Acharaâ Al Magharibi 紙のインタビューでは、死刑を支持する姿勢を示した。また、同性愛者が外国から資金提供や支援を受けているとして、「かなりの数の住宅が外国の勢力に貸し出されていると聞かされた」とも述べた[8]。こうしたサイードの保守的な立場は女性の問題についてもみられ、イスラーム法の解釈に従い、相続における男女平等に反対すると言明した[9]

外交政策ではイスラエルとの関係正常化に反対し、イスラエルはイスラーム世界と戦争状態にあるのであって、シオニストとの関係を正常化しようとするムスリムの国家指導者は、だれであれ反逆罪で裁かれるべきだと述べた。その一方で、国内にユダヤ人問題は存在しない、父も第二次世界大戦中はユダヤ人をかくまったなどとも語った[10][11]

選挙戦でサイードはイスラーム主義政党「ナフダ」の支持を受けて、社会保守主義の立場を示していたが、自らをイスラーム主義者と称することはなく、顧問にもさまざまな政治信条の人物を登用した[12]。個人的な信条に過ぎないと断りつつも、憲法に宗教的な要素を加えることには反対した。

チュニジア方言ではなくフスハー(正則アラビア語)を用いる硬派な語り口、法と秩序を重んじる姿勢などから、メディアからは「ロボコップ」とあだ名された[6][9][13]。しかし、本人は選挙戦で「庶民の男」を自称し、ポピュリスト政治家である対抗馬のナビール・カルーイと似たようなアピールを行った。

大統領選の第一回投票で、サイードは全候補者中最多の62万711票を得票し、2位のカルーイとの決選投票に進んだ。そして、10月14日の決選投票で72.71%を得票し、大統領に当選[7]、10月23日に就任した[14][15]。サイードは、1956年のチュニジア独立後に生まれた最初の大統領である。

折からの経済不況や財政危機、また新型コロナウイルス感染症対策をめぐってヒシェーム・マシーシー英語版首相と対立するようになり、2021年7月25日にマシーシーを首相(兼内相)を解任し、新たに任命する首相とともに自らが行政権を引き継ぐと宣言。また議会機能を30日間停止した[16]。しかしその後は新首相や正常化に向けた道筋を示すことができず、8月23日に議会機能の停止を無期限に延長した[17]。9月29日にナジラ・ブダン英語版を新首相に指名し[18]、10月11日に宣誓し就任した[19]

人物[編集]

当時スースで法律を学んでいた、裁判官のイシュラーフ・シェビールと結婚した。3人の子どもがいる[20]

脚注[編集]

  1. ^ قيس سعيد من هو.. ولماذا اختارته تونس؟” (アラビア語). سكاي نيوز عربية. 2019年10月16日閲覧。
  2. ^ Qui est Kais Saied, l’infatigable marcheur, qui a emporté le premier tour de la présidentielle en Tunisie (Album photos)” (フランス語). Leaders. 2019年9月17日閲覧。
  3. ^ Présidentielle en Tunisie : qui est Kais Saied, le nouveau président élu” (フランス語). tv5monde.com (2019年10月14日). 2019年10月14日閲覧。
  4. ^ Kaïs Saïed” (アラビア語). arabesque.tn (2013年11月29日). 2017年5月9日閲覧。
  5. ^ Kais Saïd, candidat à la présidentielle de 2019” (フランス語). webmanagercenter.com (2018年12月3日). 2019年6月24日閲覧。
  6. ^ a b c Delmas, Benoit. “Tunisie : Kaïs Saïed, un Robespierre en campagne”. Le Point. https://www.lepoint.fr/afrique/tunisie-kais-saied-un-robespierre-en-campagne-11-09-2019-2335234_3826.php 2019年9月17日閲覧。 
  7. ^ a b Hailing 'new revolution', political outsider Saied elected Tunisia's president”. Reuters (2019年10月14日). 2019年10月20日閲覧。
  8. ^ Kaïs Saïed : j'éliminerai les élections législatives et je suis pour la peine de mort” (フランス語). businessnews.com.tn (2019年6月11日). 2019年6月12日閲覧。
  9. ^ a b Lussato, Céline. “Présidentielle tunisienne : " Robocop ", ultraconservateur… 10 choses à savoir sur Kaïs Saïed”. Le Nouvel Observateur. https://www.nouvelobs.com/monde/20190917.OBS18538/robocop-ultra-conservateur-10-choses-a-savoir-sur-kais-saied.html 2019年9月17日閲覧。 
  10. ^ Tunisia's president-elect: Normalization with Israel is treason” (英語). Israel National News. 2019年10月16日閲覧。
  11. ^ staff, T. O. I.. “Tunisia’s new president regards any ties with Israel as ‘high treason’” (英語). www.timesofisrael.com. 2019年10月16日閲覧。
  12. ^ Outsider ‘Robocop’ wins landslide victory in Tunisia poll”. Financial Times (2019年10月13日). 2019年10月16日閲覧。
  13. ^ Tunisia elections: ‘Robocop’ and ‘Berlusconi’ head to second round” (英語). Middle East Eye. 2019年9月17日閲覧。
  14. ^ Tunisia’s new president sworn in, vows to fight corruption”. Associated Press (2019年10月23日). 2019年10月23日閲覧。
  15. ^ Political outsider Saied sworn in as Tunisia's president”. Reuters (2019年10月23日). 2019年10月23日閲覧。
  16. ^ “チュニジア大統領が首相を解任、新首相と行政権行使へ”. ロイター. (2021年7月26日). https://jp.reuters.com/article/tunisia-politics-idJPKBN2EV0TN 2021年7月26日閲覧。 
  17. ^ “Tunisia’s President Kais Saied extends suspension of parliament”. アルジャジーラ. (2021年8月24日). https://www.aljazeera.com/news/2021/8/24/tunisias-president-kais-saied-extends-suspension-of-parliament 2021年8月25日閲覧。 
  18. ^ “チュニジア新首相に初の女性指名 大統領解任で空席”. 時事ドットコム. 時事通信社. (2021年9月29日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092901271&g=int 2021年10月12日閲覧。 
  19. ^ “Tunisie: le nouveau gouvernement de Najla Bouden-Romdhane a prêté serment”. ラジオ・フランス・アンテルナショナル. (2021年10月11日). https://www.rfi.fr/fr/en-bref/20211011-tunisie-le-nouveau-gouvernement-de-najla-bouden-romdhane-a-pr%C3%AAt%C3%A9-serment 2021年10月12日閲覧。 
  20. ^ Présidentielle 2019 : Biographie de Kais Saied, vainqueur du premier tour” (フランス語). Webdo (2019年9月16日). 2019年9月17日閲覧。